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2012/7/25

卵巣組織凍結も可能な時代へ

乳がん患者の妊孕性温存治療はどこまで可能か

福島安紀=医療ライター

臨床試験として卵巣組織凍結を実施
 では、乳がん治療後の出産に備えて、治療前の妊孕性温存治療はどういったときにどの程度可能なのだろうか。

 聖マリアンナ医科大学病院産婦人科で乳がんの患者に対して実際に行っている妊孕性温存療法は、卵子あるいは胚の凍結、そして、卵巣を組織凍結する方法だ。

 2010年1月〜2012年6月に同院でがん治療に伴う妊孕性温存療法を受けた人は37人で、そのうち乳がん患者は17人とがん種別で最も多い。凍結方法別では、卵子凍結7人、胚凍結11人(卵子と胚は卵巣組織と重複あり)、卵巣組織凍結12人、精子凍結15人。卵子凍結を実施したのは全員未婚者で、既婚者については夫婦の卵子と精子を採取して体外受精を行って胚を凍結している。

 卵子と胚、精子の凍結については、国内約50施設で実施されている。未婚の人でも卵子の凍結保存が可能になりつつあるが、卵子凍結で出産までたどり着く生産率は3.6%。凍結時の年齢にもよるが、胚凍結では生産率28.0%なので、既婚者は体外受精後凍結したほうが成功率は高いわけだ。

 注目されるのが、同院が臨床試験「若年女性がんおよび免疫疾患患者のQOL向上を志向した卵巣組織凍結ならびに自家移植」として2010年から始めた、卵巣組織凍結である。同院では、女性については卵巣組織凍結が基本で、卵子や胚の凍結は時間的な理由などで卵巣組織凍結ができなかったときに行うという。

 この方法では、化学療法の前に片側の卵巣の一部を腹腔鏡下手術で切除して凍結し、がんの寛解後、その卵巣組織を元の場所か卵子が採取しやすい卵管あるいは腹腔内に移植する。卵巣内にある発達途上の小さい卵子も保存されるため、理論上は、卵子や胚の凍結よりも妊娠できる可能性が高い。卵巣組織凍結は、ヨーロッパを中心に実施されており、報告されているだけでもすでに約20人の子供が誕生しているという。

 同院で乳がんと全身エリテマトーデス(SLE)の人など、卵巣組織凍結を受けた患者は2012年6月までに40例。がんの患者ではないが、凍結した卵巣組織を体に戻し、すでに妊娠に成功した例があるという。ただ、ヨーロッパと日本では、卵巣組織凍結の方法が異なるため、この方法の成功率と安全性は未知数だ。

 「乳がんの場合、術前化学療法を実施するケースも多く、化学療法開始までの期間が短い。卵巣組織凍結・自家移植で出産までたどりつけるか、その成功率はまだ分かりませんし、過排卵刺激によるエストラジオール値(E2、女性ホルモン)の上昇、採卵によって悪性腫瘍が広がるリスクがあるといった問題点もあります」と鈴木氏は指摘する。同院では乳がんの患者に対しては、患者に十分な説明を行いエストラジオール値の上昇を抑えるような卵巣の過排卵刺激を行っているが、その方法で卵子の質が維持されるのかもまだ不明だ。さらに、一部のタイプの乳がんの場合、BRCA1/2遺伝子に変異があると卵巣がんになるリスクが16〜60%あり、解決すべき問題点は山積している。

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