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レポート

2012/3/16

患者会の活用法

小山千穂=チャンゴ・ジャパン

 セミナーでは、患者会の話題のほか、三人の医師がそれぞれ下記のテーマで講演を行った。

講演「乳がん治療の全体像と外科治療―乳房温存術とセンチネルリンパ節生検」
センチネルリンパ節転移陽性でも郭清省略?


佐久総合病院乳腺外科部長の石毛広雪氏

 佐久総合病院乳腺外科部長の石毛広雪氏は講演の中で、乳房の原発巣からこぼれ落ちたがん細胞が最初にたどり着くセンチネルリンパ節に転移があった場合、腋の下のリンパ節を郭清してもしなくても全生存率が変わらなかったとする比較試験(ACOSOG Z0011)の結果を取り上げた。世界の乳がん診療に大きな影響を与える「ザンクトガレン国際会議」(2011年3月開催)では、世界中から集まった乳がん診療のエキスパートの76.7%が「微小転移(0.2〜2mm径)であれば郭清しない」という方針を示したが、日本乳癌学会のガイドラインでは、「微小転移の場合も郭清がすすめられるが、郭清省略の可能性も検討されるべき」というトーン。専門医の間でも判断に温度差がある中、石毛氏は私見として「ACOSOG Z0011は登録症例数が少ないなどの問題点もある。この一つの試験結果だけで郭清省略というわけにはいかない」とコメントした。

佐久総合病院乳腺外科の橋本梨佳子氏

講演「乳房再建術について」
人工物再建の保険適用が望まれる


 乳房再建の方法は、自分の体の組織を使う自家組織再建と、インプラントを用いての人工物再建の二つに大きく分けられる。佐久総合病院乳腺外科の橋本梨佳子氏はそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説。左右差をなくすために健側(乳がんになっていない方の乳房)に豊胸術を施した事例、腹部の脂肪を用いての再建事例なども紹介した。乳房再建は、見た目を整えるだけではなく、乳房の大きさのアンバランスによって生じる首や肩の凝りを軽減するなど患者のQOL向上に役立つが、費用負担がハードルに。「自家組織再建の場合は150万円から160万円かかるが、健康保険の適用となるので自己負担は50〜60万円程度。一方、人工物再建では100万円から150万円の全額が自己負担になる。人工物再建にも健康保険の適用を求める声は大きい」と橋本氏。続いて講演したがん研有明病院乳腺センター化学療法科乳腺担当部長の伊藤良則氏もこの点に触れ、「日本乳癌学会としても4年以上前から保険適用を求める要望を出している」と話した。

がん研有明病院乳腺センター化学療法科乳腺担当部長の伊藤良則氏

講演「乳がん薬物療法の標準治療とは」
ペルツズマブはハーセプチン並みのインパクトあり


 講演の中で伊藤氏は、近い将来臨床の現場に登場する新薬の開発動向に触れた。乳がん細胞の増殖に関るHERたんぱくには、1、2、3、4の4種類があり、「中でもHER2とHER3の二つが結合したものから出てくるシグナルが強い。ハーセプチン(トラスツズマブ)はHER 2を抑えるが、それだけでは不十分。HER3も抑える薬として出てきた新薬がペルツズマブ」と紹介。がんが悪くならずに生存出来た期間(無増悪生存期間)と全生存期間が有意に延長するという臨床試験の結果が2011年12月7日、権威ある医学雑誌「New England Journal of Medicine」に掲載されたことを取り上げ、「ハーセプチンと同等のインパクトがある結果だと私は思っている。このような薬が使えるようになり、乳がんの薬物治療はますます良くなっていく」とまとめた。



※この記事は、2011年12月17日、日経ヘルス プルミエ主催で長野県佐久市にて開催された市民セミナー「乳がん 共にたたかい、共に生きる 2011」での発言をまとめたものです。

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