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2012/2/23

乳がん検診、3つの“お得”

小山千穂=チャンゴ・ジャパン

乳がん検診を受ける「3つのお得」

 また鈴木氏は、乳がん検診には「3つのお得」があるという。

1つ目は、早期発見によって小さな侵襲で大きな効果が得られる、楽な治療で十分な効果が得られる、という“お得”。

 2つ目は、税金を投入した行政サービスを受けられるという“お得”。マンモを用いた乳がん検診では1回約1万円程度の費用がかかるが、自治体で行う検診の場合、自己負担額は1回2000円程度のところが多い。「40歳から80歳までの40年間に、2年に1回ずつ合計20回の検診を受けても自己負担は合計4万円。これで40年間健康でいられると思えば高い“保険料”ではない」(鈴木氏)。

 3つめの“お得”は、治療費だ。進行してからでは入院費用や術後の治療費も高くなる。「こんなにお得な乳がん検診。それでもまだ受けようと思いませんか?」と鈴木氏は語っている。

米国では50歳代からなのに?

 日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」では、40代女性のマンモによる検診受診は推奨グレードB、「科学的根拠があり、実践するよう推奨する」となっている。一方、検診先進国である米国は2009年、米国予防サービス委員会が、40歳代の定期検診を「推奨せず」に変更した。

 これについて鈴木氏は「先ほど乳がん検診はお得、という話をしたが、いいことばかりではない。精密検査のために仕事を休んで病院へ行き、胸に針を刺して痛かった。結果、乳がんではないことが分かった――という人が95%を占める。こうした不利益を重く見た米国は、40歳代のマンモ検診は推奨できない、としている。しかし、この背景には、米国では60歳以上で乳がんになる人が多いということもある。一方、日本では乳がんになる人は40歳代から50歳代に多い。また、マンモ検診で死亡率が下げられるという有効性を重視し、40歳から、ということになっている」と解説する。

 では、検診間隔は2年に1回で十分なのだろうか。「日本よりもはるかに乳がん患者が多い欧米の先進国でも2年から3年に1回の検診を薦めている。宮城県で行った研究では、1年ごとに検診しても2年ごとの検診でも早期がんの頻度が変わらないことも確認している」と大内氏は言う。

若年、遺伝性が心配な人は個別にフォローを

 これまでの議論は、40歳以上の女性を対象とする検診の話だったが、40歳に満たない女性に乳がん検診は必要ないのだろうか。「30歳代の人に検診を行って死亡率が下げられるというデータはない。若くして乳がんを発症する人もいるが、検診は行政サービスである以上、特定の人に向けられるものではない。身内に乳がんになった人がいて、遺伝性の乳がんが心配な若い方は、個別に医療機関で検査を受けてほしい」と鈴木氏。

 エビデンスに基づく乳がん検診の推進という観点から、次なる注目はやはり「超音波検査による検診は有効か否か」ということ。大内氏はJ-STARTの試験方法に触れ「マンモと超音波を併用する群と、マンモのみの群にランダムに振り分けるという、科学的とはいえ、みなさんにとってある意味“冷たい”ともいえる試験にもかからず、仙台市民の7割もの方が協力すると言ってくれたことが私の背中を押した。結果が出るまで、あと数年お待ちいただきたい」とまとめた。

※この記事は、2011年12月3日、日経ヘルス プルミエ主催で宮城県・仙台市にて開催された市民セミナー「乳がん 共にたたかい、共に生きる 2011」での発言をまとめたものです。

 また、本セミナーで取り上げられたテーマの概要を紹介します。

宮城県立がんセンター医療部長・乳腺科長の角川陽一郎氏

講演「乳がん治療のいま」
治療に有効というエビデンスのある代替療法はない


 宮城県立がんセンター乳腺外科部長の角川陽一郎氏は「乳がん治療のいま」と題し、乳がん標準治療の全体像を解説。最後に、乳がん治療としての補完・代替医療について「現在までに、がんの縮小効果や再発抑制に効果を認めるものは見つかっていない。少しでもよさそうなものを試してみたい気持ちは分かるが、安易に飛びつかないで」と注意を促した。「抗がん薬治療や放射線治療中の抗酸化サプリメント摂取は患者さんに害を及ぼす可能性がある」と指摘。女性ホルモンと似た働きを持つ大豆イソフラボンや、それを含む大豆を過度に摂取するのも避けてほしいと加えた。

石巻赤十字病院乳腺外科部長の古田昭彦氏

講演「被災地の現場から」
抗がん薬療法は3週間、手術は3カ月ストップ


 石巻市、東松島市、女川町を医療圏とする石巻赤十字病院。東日本大震災により周辺医療機関が一時的、あるいは完全に機能を失う中、内陸に位置する同院が石巻地区の医療を支えていた。災害拠点病院であり、地域唯一のがん診療連携拠点病院でもある同院の乳がん診療に、東日本大震災が与えた影響について、乳腺外科部長の古田昭彦氏が語った。

 「抗がん薬療法を最優先で再開させたが、それでも震災から3週間後の4月4日からだった。病棟看護師らの疲労を考慮し、空床率が50%になるまで予定手術は禁止。近隣の病院を利用して乳がん手術が再開できたのが4月20日、当院で手術が再開できたのは6月20日だった」。緊急性の高い放射線治療などは東北大学病院など他院へ紹介、「何よりもありがたかったのは、東北大学病院が無条件で患者を受け入れてくれたこと」と古田氏は振り返った。


石巻赤十字病院第2外来・療養支援室の看護係長佐藤京子氏

講演「東日本大震災時の乳がん患者支援」
補正下着が津波で流され、リンパ浮腫は悪化・・・


 石巻赤十字病院療養支援室での相談業務が再開したのは3月28日。同院第2外来・療養支援室の看護係長である佐藤京子氏は「震災直後の私たちの役割は、患者さんに寄り添い、じっくりと話しを聞くことだった。病気の私が生きていていいのか、と涙する人もいた」と話した。平時にはない、実生活上の切実な相談も多数寄せられたという。「自宅が津波で流されて替えの補正下着がない、脱毛が始まっているのにかつらがない、片づけに追われ、手術した方の腕が腫れてきた――という人も。補正下着の変わりとなるカップ付きの下着の紹介、脱毛には、かつらの代用品としての帽子やバンダナの活用法などを説明した。リンパ浮腫を起こして腫れた腕に傷がないかを調べ、症状を軽減するための腹式呼吸法や肩回しの方法を指導した」と佐藤氏。

 4月下旬には各団体から帽子やウィッグなどの支援物質が届き始め、11月には冬用の帽子なども。継続的な支援に対し佐藤氏は「“人と人とのつながり”を一層強く感じるようになった」と語った。

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