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2012/2/23

乳がん検診、3つの“お得”

小山千穂=チャンゴ・ジャパン

 自治体で行う乳がん検診は「40歳以上の女性を対象に2年に1回のマンモグラフィ検査」が基本だ。マンモグラフィ検査だけで大丈夫?なぜ40歳以上?なぜ2年に1回? こうした疑問に対し、日本の乳がん検診のエビデンス集積をけん引する医師らの話を聞いた。


東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野教授の大内憲明氏

 乳がん検診にマンモグラフィ検査(以下、マンモ)を導入するきっかけを作ったのは、東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野教授の大内憲明氏らのグループが中心となり、1989年から行われた「宮城マンモグラフィ・トライアル」だ。大内氏らは、このトライアルにおいて、日本人女性の乳がんによる死亡率が、マンモを用いた集団検診で抑えられることを初めて明らかにした。

 しかし課題も残った。日本人をはじめとするアジア圏の女性の乳房は、概して乳腺密度が高い。特に40歳代までの若年層の乳房では、マンモで白く写る乳腺の陰に、同じく白く写るがんが隠れてしまうケースが多くなる。「40歳代では検査の感度が70%しかない。簡単に言うと3割くらい見逃してしまう」と大内氏。

超音波は有効? 結論が出るのは2015年

 こうしたマンモの欠点を補う方法として期待されるのが超音波検査(エコー検査)だ。マンモのようにX線撮影ではなく、超音波を用いてさまざまな確度から乳腺を調べるもの。しかし、現時点では「自治体検診のような集団検診には超音波検査を導入すべきではない」とされている。検診の目的は、それを行うことで死亡率を低下させる、ということ。しかし、現時点では乳がん発見のための超音波検査は、検査をすることにより死亡率が低下するというエビデンス(知見)がないからだ。

 しかも、検診自体には、がんを早期発見して死亡率を低下させるという「利益」と同時に、結果的にはがんではない人が検診でグレーとみなされて精密検査の対象になり、「がんかもしれない」という精神的苦痛や精密検査を行う際の肉体的苦痛を負う「不利益」が伴う。そのため「利益が不利益を上回らないような方法で検診を行うべきではない」(大内氏)。つまり十分に利益があることが示されている方法で行う必要がある。

 そこで大内氏が研究リーダーとなり、厚生労働省の国家プロジェクトである「がん対策のための戦略研究:J-START」として、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証する比較試験が2006年に始動した。マンモグラフィだけで検診を行ったグループとマンモグラフィに加えて超音波検査も行ったグループを比較して、検診の精度に違いがあるかどうかを評価する試験だ。これは、「宮城県だけでも1万8381人、全国23の都道府県で合計7万6196人の40代女性がエントリーしている世界にも類を見ない大規模な試験。乳がん検診に超音波検査を追加すべきかどうかは2015年ごろ明らかになる予定」と大内氏は語った。

東北大学病院乳腺内分泌外科講師の鈴木昭彦氏

死亡率増加の背景にある、低い検診受診率

 米国や英国では、乳がんの罹患率も死亡率も日本の数倍高いとはいえ、死亡率は年々低下傾向にある。一方、日本は、依然として死亡率が増加し続けている。それはなぜか。

 東北大学病院乳腺内分泌外科講師の鈴木昭彦氏は「治療のレベルは日本と欧米でほとんど変わらないはず。最大の違いは検診の受診率にある。欧米は70〜80%の人が乳がん検診を受けているのに対し、日本はせいぜい20%程度。受診率が低ければ、十分な社会的効果は得られない。また、欧米では30年以上前からマンモ中心の検診を行っているのに対し、日本ではやっと10年たったところという違いもある」と分析する。

 なぜ検診に行かないのか。アンケート調査などで聞いてみると、「時間がない、費用が高い、マンモは痛いからいやだ、他人に胸を見せたくない」といった声とともに「何も気になるところはないから」という声もあるという。「気になるところがあればすぐ病院へ行くべきで、また何も気になるところがない乳房に乳がんがないかを調べるのが検診。もはや15人から16人に1人が乳がんになる時代。人ごとと思わずに、是非検診を受けてほしい」と鈴木氏は強調する。

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