図3 今後、がん患者の子どもに介入する際に参考にしたい事柄や知っておきたい情報(「がんを持つ親の子どもの介入に関する実態調査」より、複数回答、単位は人)
がん治療中の親を持つ小学生を対象にしたプログラムとは
このような状況の中、子どもたちが「親ががんであることを受け入れる」ことや、「がんの親を看取る」ことを支えるための活動が少しずつ始まっている。
その1例が、Hope Treeのメンバーが、2010年から東京共済病院(東京都目黒区)を会場として開催している「がんの親を持つ子どものためのサポートグループ」(実施責任者:放送大学大学院 臨床心理学プログラム・准教授の小林真理子氏)。
これは、がん治療中の親を持つ小学生の子ども数人(10人まで)を対象にしたクローズドのグループ活動で、「親の病気に関連するストレスに対処していくための能力を高めることを目的にしている」と話すのは、医療ソーシャルワーカーで同病院がん支援センターに勤務する大沢かおり氏。米国コロラド州のThe Chirdren’s Treehouse Foundationが開発したCLIMB(クライム)というプログラムを用いた活動で、軽食や歓談をしながら毎週約2時間、全6回行うものだ。大沢氏や小林氏など、このプログラムのための特別なトレーニングを受けた人が進行役となって子どもだけを会議室に集めて行う。その間、親には別室で自由な話し合いの場を提供している(参加は自由)。
内容は、自分の感情を整理し、それを表現する能力を引き出し、不安を開放し、メンタルヘルスの増進を目的としたプログラムになっている。たとえば、がんという病気の知識を得たり、悲しみの感情の表現の仕方を学んだり、怒りの感情に適切に対処する方法を考えたりする。
具体例を挙げると――。「悲しい」をテーマにする回では、どんなときに悲しいと感じるかについてみんなで話し合い、悲しいと感じる体験は人ぞれぞれであることを伝える。そして、「悲しみのお面」を作ることで、親のがんにまつわる悲しい気持ちを表現し、さらにそのお面を自宅に持ち帰って、親と悲しい気持ちについて話をするように促している。
写真1 怒りの感情を適切に表現する方法を考える目的で作る「怒りバイバイサイコロ」
「怒り」をテーマにする回には、怒りの感情を適切に表現する方法を考える目的で、「怒りバイバイサイコロ」を作っている。子どもたちは、自分が怒りを感じたときにどうすればその感情を楽にすることができるかを考えて、サイコロの6面に書き込む。「スポーツをする」「好きな歌を歌う」「大空に向かって叫ぶ」(写真1)など、思い思いの行動が並ぶ。そして、生活の中で怒りを感じたときに、このサイコロを振ってみるよう提案する。子どもたちは、自分の感情を上手に発散する手助けになる方法があることを学ぶのだ。