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レポート

2011/8/2

卵巣がんや乳がんにPARP阻害薬〜開発進む新機序の分子標的薬

小板橋律子=日経メディカル

図3 乳がんを対象としたイニパリブの第2相臨床試験の結果
トリプルネガティブ再発乳がんに対するゲムシタビン・カルボプラチン療法にイニパリブを併用した群(61人)と、非併用群(62人)を比較。併用群で、有意に無増悪生存期間延長された。また全生存率も有意に延長された。(出典:N Engl J Med 2011;364:205-14.)

 今年1月にNew England Journal of Medicine誌に発表された転移性の患者を対象とした第2相臨床試験では、イニパリブの追加で無増悪生存期間が有意に延長され(図3)、かつ全生存率もハザード比(HR)0.57(95%信頼区間[CI] 0.36-0.90)と有意な改善が示された。トリプルネガティブ乳がんに対する初の分子標的薬となると期待を集めた。

 ところが今年のASCOで発表された第3相臨床試験では、無増悪生存率にわずかな改善効果が示されたものの(イニパリブ群5.1カ月、対照群4.1カ月、HR 0.79、95%CI 0.65-0.98)、全生存率では有意な改善効果が示されなかった(イニパリブ群11.8カ月、対照群11.1カ月、HR 0.88、95%CI 0.69-1.12)。同試験結果に注目していた専門家を落胆させるものだった。

 ただし、昭和大乳腺外科教授の中村清吾氏は、「トリプルネガティブ乳がんのうち、BRCA1遺伝子変異は2〜3割にすぎない。今回の試験対象には、BRCAの機能不全がない患者が含まれていたため、有意差が出なかった可能性がある」と分析する。さらに、京大乳腺外科教授の戸井雅和氏は、「阻害活性や投与量が十分でなかった可能性もある」という。
 
 ただし両氏とも、PARP阻害薬が一部の乳がん患者に効くことは確かで、今回の結果のみでイニパリブが乳がんに効かないと判断すべきではないとの共通した考えを持つ。今後、患者の選択法などを再検討した上で、PARP阻害薬の開発の継続・進展が期待されている。

BRCA1/2検査の保険適用を乳癌学会が要望へ
「学会として遺伝子検査の保険適用を要望していく」と語る昭和大乳腺外科の中村清吾氏。
 国内の年間新規乳がん発症数は約4万人。そのため遺伝性の頻度が5%と仮定すれば1年間に約2000人の遺伝性乳がん患者が、新たにがんの診断を受けていることになる。しかし、遺伝性乳がんの原因遺伝子として、最も研究が進んでおり、欧米では既に治療法選択に利用されているBRCA1/2遺伝子検査は、国内では保険適用となっておらず、普及もしていない。
 この現状を打破すべく日本乳癌学会は、厚生労働省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」に対して、BRCA1/2遺伝子検査の早期の保険適用を求める要望書を、今年8月末に提出する予定だ。昭和大乳腺外科教授の中村清吾氏がこのほど明らかにした。
 一方、癌研究会有明病院(東京都江東区)は、先進医療の枠組みの中で、BRCA1/2遺伝子検査の実施を広めたい考え。今年2月に、厚労省の先進医療専門家会議に対して、遺伝性が疑われる乳がんまたは卵巣がん患者を対象としたBRCA1/2遺伝子検査診断を申請した。6月に開催された同会議では書類不備で返戻となったが、「近々、内容を検討して再度申請する予定」(同病院遺伝子診療センターの新井正美氏)だ。院内で遺伝子検査を実施する体制も整えた。
 同病院乳腺科の西村誠一郎氏は「生命保険の先進医療特約が使える患者もいる。遺伝子検査が先進医療として認められれば、そのような患者において、検査にかかる経済的負担を軽減でき、検査希望者が増えると思われる。遺伝子検査の結果が、より適切な医学的管理につながるだろう」と期待する。

※この記事は「日経メディカル Special」2011 Summer 特集「次代の医療ニーズを探る」を転載したものです。

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