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レポート

2011/6/28

地元での治療継続を望む被災地のがん患者にどう対応するか

――岩手・宮城・福島の被災地におけるがん医療の現状と課題

渡辺千鶴=医療ライター

 石岡氏(右)は、東北大学病院がんセンター准教授の森隆弘氏(左)とともに、原発事故の影響により入院を必要とする患者が集中している公立相馬総合病院院長の熊佳伸氏(中央)を訪れ、がん医療の現状を聞いた。

 ただし、石巻市の肝疾患診療を一手に引き受けていた石巻市立病院が津波で壊滅的な被害を受けてしまったため、同病院消化器部部長の赤羽武弘氏らの努力により、肝臓がん患者は東北大病院をはじめ仙台市内の病院に紹介するなどの対応を行ってきたという。

 しかし、他のがん患者同様、地元での治療継続を切望する肝臓がん患者は多い。「肝疾患の診療にはCTやMRIが必要なので、患者の希望に応えるためには石巻赤十字病院の設備を利用するしかない。そこで、赤羽医師が一時的に石巻赤十字病院で診療してはどうか」と、石岡氏は対策案を示したが、現在は仮設の診療所の機能を増強することで対応している。

 また、在宅緩和ケアに精力的に取り組んでいた診療所グループが被災したため、約1カ月にわたって在宅緩和ケアもストップ。4月中旬より一部で再開したが、現在も十分な体制に回復していない状況だ。各避難所に散らばっている患者を1カ所に集めることも検討されているが、場所の問題で難航しており、明確な解決策は示されていない。

 さらに、震災前にがんを疑われて受診していた患者の中には、診断のための検査を未だに受けられず、確定診断がなされていない人も多い。

 「石巻市のがん医療は2カ月ほど遅れている。この地域では、がん医療を立て直すための医療スタッフの確保が喫緊の課題となっている」と石岡氏は指摘する。

岩手県沿岸部では在宅緩和ケアの診療所が被災し活動力が低下
 一方、岩手県大船渡市では、がん診療連携拠点病院である県立大船渡病院が地震や津波による被害を免れ、ライフラインも早期に復旧したことから、3月下旬には診療を再開。4月21日時点のデータでは、新たに10人の患者が化学療法を開始している。手術件数は震災前に比べやや減っているが、実施できる態勢にある。

 「県立大船渡病院では、薬剤の供給があり、患者の外来通院が可能だったため、スムーズにがん医療を再開できた。また、全国から駆け付けた医療支援チームが救急医療への対応や避難所の巡回診療を引き受けてくれたおかげで、同病院の常勤医が通常のがん医療に従事できたことも大きいのではないか」と、石岡氏は分析する。

 大船渡市に隣接する釜石市にある県立釜石病院は、津波の被害はなかったものの、地震による甚大な損害を受け、272床のうち26床しか使用できなくなった。入院機能が失われたため、入院患者の多くは内陸部の県立中央病院や県立中部病院に移送された。手術は未だにストップしたままだが、外来化学療法は4月上旬より再開しているという。ただし、患者の多くが被災し避難所で生活しているため、再開に当たっては避難所で生活している患者でも可能な治療法への変更を検討したという。

 「入院患者の診療がなくなった分、医師や看護師を避難所の巡回診療に回すことができ、外来化学療法を受けている患者を直接サポートすることができたようだ。また、釜石市が無料バスを運行していることも、患者さんの外来受診の助けになっているようだ」と石岡氏。

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