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2011/6/21

高齢者のがんの治療方針をどう決める?

富田文=日経メディカル別冊編集

 高齢のがん患者に対し、どれくらい積極的に治療を行うべきなのか。福岡大学腫瘍・血液・感染症内科教授の田村和夫氏は、がんの状態だけでなく、本人の意欲や平均余命、介護者の有無なども考慮して、患者ごとに適した治療方針を判断している。高齢者のがん治療の考え方や田村氏が考案した「高齢者のがん治療アルゴリズム」を紹介する。


福岡大学腫瘍・血液・感染症内科教授の田村和夫氏

 「高齢の患者さんに対しては、家族も医療者も、『もう十分長生きしたから』と、検査や治療を控える傾向がある。しかし、積極的な治療を受けたいと思う高齢者は実はとても多いし、たとえ非常に高齢であっても治療ができる条件にある人では治療効果は得られる」。こう話すのは、福岡大学腫瘍・血液・感染症内科教授の田村和夫氏だ。

 高齢者のがん治療では、腎機能や肝機能が低下している、糖尿病や心・脳血管障害などの複数の併存症を持つなどの加齢による心身の変化により、合併症の頻度や死亡率は高くなる。

 例えば、外科治療では、日常生活活動度(ADL)が低いほど術後の合併症発症率は上昇し、入院期間も長い。また、薬物治療では、生理的な臓器機能の低下により、若い人よりも骨髄抑制や粘膜障害が出やすい。さらに、放射線治療では、体重減少や急性反応からの回復が遅れたり、入院期間が延長する傾向がある。

 しかし、現在、抗がん剤による治療では、支持療法の進歩などにより、心身の機能が良く治療意欲があれば、若い患者と同じ用法・用量に耐えることができ、効果も得られる。また、放射線照射や外科手術においても、照射技術や麻酔・手術手技の進歩により90歳を超える患者でも合併症なく、治療を最後まで行うことができた例がある。

患者の寿命にがんがどの程度影響するか見極める
 では、治療方針はどのように決めればよいのだろうか。田村氏は、「まず私が最も重視しているのは、患者に治療に対して前向きな気持ちがあるかどうか。次に、その人が持っている平均余命」と話す。

 患者が非常に高齢の場合、家族や医療者は治療に消極的になりがちだ。しかし、実は高齢者は治療に積極的であることが少なくない。そのため、患者の気持ちを聞き、家族と話し合いながら、本人の意思を尊重した治療方針を立てる努力をすべきだという。

表1 日本人の主な年齢の平均余命(厚生労働省人口動態・保健統計課 2010年7月26日発表資料による)

 次に考慮するのは、その人の平均余命とがんによる症状が出てきて生活の質(QOL)が悪化し始めるまでの時間のバランスだ。

 例えば、85歳の男性に比較的早期の前立腺がんが見付かった場合。厚生労働省から発表された2009年度の平均余命によると、85歳の平均余命は6.27年だ(表1)。一方、前立腺がんは進行の速度が遅く、症状が出てQOLが悪化し始めるまでの時間が長い。そのため、治癒を目的とした手術や放射線照射を控え、ホルモン療法で経過を観察する方法がよく選択されている。

 さらに、患者が積極的な治療を希望しても、栄養状態や認知機能、介護者や社会的な支援の有無などによって、治療がうまく行えないと考えられる場合がある。

 田村氏は、「高齢のがん患者さんを治療する際に最も大きな問題は、がん治療をきっかけに高齢者が自立性を損なうこと」と話す。治療前の自立性(日常生活をする能力など)や、治療によってそれが失われる可能性があるか、またそうなった場合に介護する家族がいるのかなどを考慮する必要がある。

 高齢者は治療のために家族や友人と離れることで疎外感が生じやすく、うつ状態や強い不安状態に陥ることも少なくない。治療によって長く生きられるようになっても、QOLが大きく損なわれるようでは意味がない。

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