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レポート

2011/6/7

あのとき、がん医療の在宅現場で何が起こっていたか ― 3.11を振り返る

医療法人社団爽秋会(宮城県名取市)理事長 岡部健氏に聞く

渡辺千鶴=医療ライター

宗教家と協力して被災者の心のケアに取り組む
 震災から2カ月以上が過ぎた今、残された課題は生活再建と心のケアだと岡部氏は語る。中でも、心のケアは深刻だ。「私たちの法人は年間400人の患者を看取っているが、震災後1カ月で50人の患者さんが亡くなられた」(岡部氏)。これは平常より10人ほど多い数だ。

 この中には、震災直後のトリアージから外れ、医師や看護師の訪問が遅くなった患者も含まれている。「もう少し早く来てくれれば、あのとき死なずに済んだのに」と、怒りをぶつけてくる家族もいる。震災の混乱で葬儀を執り行うこともできず、患者が亡くなったことを受け止め切れずに怒りの矛先を医療者に向けてきたのだ。

 このようなスピリチュアルペイン(心の痛み)を抱える患者の遺族、さらには震災によって家族や友人、知人を亡くした被災者に対してグリーフケア(悲嘆ケア)が必要だが、「かけがえのない家族を理不尽な形で失い、やり場のない気持ちを抱えている人々が求めているのは祈りの心だ。そのことに対して、医療者は科学だけでは対処しきれない」と岡部氏は訴える。これは、がん患者の看取りの場で以前から感じていたことだが、今回、宮城県だけでも1万4000人を超える死者・行方不明者を出した未曾有の大震災を経験し、その思いがより一層強くなった。

 そこで、岡部氏は臨床死生学の専門家や宗教関係者と協力し、4月下旬に犠牲者の弔いと遺族支援のための「心の相談室」を設立。宗派教派を超えた宗教家が被災者の心の悩みを傾聴し、具体的な支援が必要だと判断した場合は、後方に控える医療・メンタルヘルス・生活問題の専門家らにつなぐ。「『心の相談室』を支える会」会長には東北大学名誉教授で仙台ターミナル・ケアを考える会会長の吉永馨氏、「心の相談室」室長には岡部氏が就任した。

 5月初めより無料電話相談(0120-828-645)を開始し、1カ月で11件の相談を受けた。県外で暮らす被災者の親族からの相談が多いが、一緒に逃げた人が津波で亡くなり自責の念にかられる人、行方不明の家族への向き合い方が分からない人からの相談もあった。「心の相談室」を支える会では、相談室の存在を1人でも多くの被災者に知ってもらうために、食事の出前を兼ねて避難所を回って電話相談のちらしを配布したり、講演会や合同慰霊祭などを開きPRすることも計画している。

 「実は震災前の2月に、がんの緩和ケアや看取りの場でこのような仕組みを構築するべく、東京で動き始めたところだった。今回の宮城県の取り組みがうまく行けば、がん医療の現場にも還元していきたい」と岡部氏。今、復興に向けた支援の中から、がん医療にも活用できる新たな仕組みが生み出されようとしている。

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