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レポート

2011/6/7

あのとき、がん医療の在宅現場で何が起こっていたか ― 3.11を振り返る

医療法人社団爽秋会(宮城県名取市)理事長 岡部健氏に聞く

渡辺千鶴=医療ライター

震災から約2カ月、甚大な津波被害に見舞われた名取市閑上地区には、今なお散乱したがれきが残る。この地区にも岡部医院がサポートしていた患者や家族が何人も暮らしていた。

 まず混乱した現場の状況を収めるために、被害の少なかった診療所に各診療所の代表を集め、それぞれの診療所の入口にカレンダーの裏紙を貼り、そこに各人が来た時間と実施した医療行為をペンで書き残して情報を共有するように指示した。これによってお互いの動きが見えるようになったスタッフは、落ち着きを取り戻した。

 岡部氏によると、リアルタイムで情報をやり取りするために携帯電話のメーリングリストによる情報共有に慣れていたスタッフは、誰も紙とペンによるシンプルな方法を思い付かなかったという。「非常時に備えて、ITに頼らない連絡網と情報共有の方法を考えておかなければならなかった」と岡部氏は反省する。

ガソリン不足で病院との連携がうまく回らず
 13日になると、いつものように携帯電話のメーリングリストが使用できるようになり、診療活動はさらにスムーズになった。15日夜には名取市で電気が復旧。パソコンが使えるようになり、電子カルテの閲覧や記入が可能になった。

 在宅医療でも、がん患者の痛みをコントロールするには麻薬が必要だ。震災の影響で薬剤の流通が止まったために、麻薬の在庫が心配されたが、薬卸会社に確認すると、岡部医院グループが使用する量は十分確保できることが分かった。「このような状況のときは、モルヒネやリン酸コデインなど従来からある麻薬の方が使い勝手がよい」と岡部氏は示唆する。

 最後まで残ったのはガソリン不足問題。「緊急車両証を取得しても、なかなかガソリンが手に入らなかった」(岡部氏)。それでもライフラインが復旧した2週間目(3月25日頃)には、平常通りの在宅緩和ケアを提供できるようになった。

 ところが、患者の受け入れを待っていても一向に病院から患者が送られてこない。仙台市内の病院は患者があふれ、治療半ばで自宅に帰される患者も出ているという情報は伝わってくるのに、だ。ガソリン不足のために岡部医院のソーシャルワーカーが動くことができず、病院と診療所の間で患者に関する情報を共有できなくなってしまったことが原因だった。

 「このようなことを防ぐためには、中核病院、在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、薬局など、関係者の間で情報を交換するためのメーリングリストを作っておくべきだった」と岡部氏は悔やむ。実は、2006年に宮城県が緩和ケア支援センターを設立したとき、緩和ケアや在宅医療関係者の間でメーリングリストを構築する計画が持ち上がったが、サーバーの設置主体やセキュリティーレベルなどの問題で合意が得られず、実現することができなかった。

 そして、今回の経験から「携帯電話でも(簡単に)アクセスできるようなメーリングリストの方が使いやすいし、汎用性が高い」と指摘する。

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