このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2010/12/21

國土典宏教授の「肝がん治療の誤解を解く」(4)

がん病巣の構造上の違いにより最適な治療法は異なる

2つの肝がんの構造上の違いが、治療法にどのように影響するのでしょうか?

 肝がんの治療では、がん病巣の大きさや形、線維性被膜の有無、がん病巣に栄養を送る血管の数などにより最適な治療法が異なる。


 まず、がん病巣を切除する手術の際に、2つのがんの構造上の違い(連載第3回「肝細胞がんはオレンジ、転移性がんはジャガイモ」参照 がどのように影響するかを考えてみましょう。

 肝がんを切除する場合、通常はがん病巣だけをくり抜くよりは、がん病巣を取り囲むがんではない肝臓組織(非がん部肝実質)を少し付けて取ります。その方が、がん細胞を取り残したり、がん細胞が周囲にこぼれる心配が少なく、局所再発の可能性が低くなると考えられるからです。しかし、腫瘍が大きかったり、重要な血管に接している場合は、非がん部肝実質部分を確保することができず、がん病巣だけを取ることを余儀なくされることがあります。

 その際、オレンジ(肝細胞がん)の場合は、皮(線維性被膜)の部分にはがんがないことから、がん病巣と非がん部肝実質の境界近くで切除してもがん病巣を取り残す心配はほとんどありません。一方、皮のないジャガイモ(転移性がん)の場合は、がん細胞がむき出しになりやすく、再発の危険が高いと言えます。外科医はこの構造上の違いを意識して切除の仕方を工夫しているのです。

 次に、ラジオ波熱凝固療法(RFA)を行う場合は、2つのがんの構造上の違いはどのように影響するのでしょうか。

 ラジオ波熱凝固療法は、体表から体内に電極を刺して、がん病巣とその周囲を熱で凝固壊死させる治療法です。効果があるのは、電極の先端の直径2〜3cmの紡錘形の範囲ですので、この紡錘形を何個か組み合わせて肝がんとその周辺の非がん部肝実質を熱凝固させます。

ゴツゴツした不規則な形の転移性肝がんでは矢印のような部分に焼き残しができやすい。  しかし、この治療法は、ジャガイモ(転移性がん)ではうまくいきません。なぜならば、ゴツゴツした不規則な形のジャガイモでは紡錘形の組み合わせで治療しても焼き残しができやすく、そこからの再発が多いことが報告されているからです(図)。

 また、ラジオ波熱凝固療法は、3cm以上の大きいオレンジ(肝細胞がん)にも不向きです。焼き残しを防ぐためにすべての方向に1cmの「焼きしろ」を付けようとすると、直径3cmを超える腫瘍では直径5cm以上の球に近い空間を焼く必要があります。しかし、これを直径2〜3cmの紡錘形の組み合わせで賄うためには何回も治療する必要があり、効果が不確実になってしまいます。

 この他にも、例えば、がん病巣の中の血管の多さなどによっても、適切な治療法に違いが出てきます。血管の多い肝細胞がんでは、がん病巣に栄養を送る血管を塞いでがん病巣を死滅させる肝動脈塞栓術(TACE)が有効ですが、血管の少ない転移性がんにはほとんど効きません。

國土典宏(こくどのりひろ)

東京大学臓器病態外科学大講座、肝胆膵外科学・人工臓器移植外科学分野 教授

1981年東京大学医学部卒業。同大学第二外科助手を経て、89年米国ミシガン大学外科に留学。95年癌研究会附属病院外科、2001年東京大学肝胆膵外科、人工臓器・移植外科で肝胆膵のがんの外科治療とともに肝移植チームを指揮している。07年から現職。

この記事を友達に伝える印刷用ページ