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レポート

2010/12/7

全国のがん患者・家族の強い味方!

国がんが電話相談「患者必携サポートセンター」を開設

 様々な悩みを抱えながら、誰に相談したらよいか分からず右往左往するがん患者や家族は少なくない。国立がん研究センターは、そうした患者・家族からの問い合せを電話で受け付ける「患者必携サポートセンター」を今年9月中旬にスタートした。全国のがん患者からの相談を受け付ける“がんの駆け込み寺”的な存在になるのか。その利用法と課題を探った。

「抗がん剤の副作用で手のしびれがひどいのですが、どうしたらよいでしょうか」

「家族が乳がんで手術が必要と言われたのですが、このまま治療を受けて大丈夫なのか不安で…」

「抗がん剤治療をいつまで続けるべきか迷っています」

 9月中旬に開設された、がんの電話相談窓口「国立がん研究センター患者必携サポートセンター」(以下、サポートセンター)には、連日、さまざまな相談が寄せられている。「電話相談の良いところは、1対1でその方に合った情報を提供できることです。また、顔が見えず匿名性が高いので、性生活の話など、対面では話しにくい相談をしやすい面もあるかもしれません」。相談員の一人、樋口由起子氏はそう話す。

電話で応対する患者必携サポートセンターの相談員(手前が樋口由起子氏)。データベースやがん種別のガイドラインなどを使って受け答えをしている。

電話をかけて気持ちを整理
 一つひとつの電話に熱心に耳を傾け、交代で相談に応じるのは、樋口氏を含め、がんの患者・家族の相談経験が豊富な、国立がん研究センター中央病院相談支援センターのソーシャルワーカーだ。受付時間は土日・祝日を除く平日の10時〜15時で、相談料は無料だが、通話料は電話をかけた本人の負担となる。

 がんの情報は、インターネット上、新聞、書籍などにあふれている。しかし、たくさんの情報がある中で、どれが正確で、自分の病状に合った情報なのかが分からない場合も多い。そんなとき、自分に合った正確な情報を伝えてくれるガイド役の専門家と電話で直接話せれば安心だ。また、がんの患者や家族は、つらい気持ちを誰にも話せず、人知れず悩む場合も多い。「ただ話を聞いてもらいたい」と、気持ちを整理するために複数回電話をかけてくるリピーターもいるという。

 「抗がん剤の副作用に苦しむのが自分だけではないと知っただけで安心する人もいます。相談することで、医師に思い切って質問できるようになったり、近くのがん診療連携拠点病院(「都道府県がん診療連携拠点病院」と「地域がん診療連携拠点病院」、以下、拠点病院)の相談支援センターに行ってみたりと、電話をかけた患者さんや家族の方の行動が少しでも変わればうれしい」と樋口氏は話す。

がんに関する相談なら何でもOK
 そもそもこの相談窓口は、国立がん研究センターがん対策情報センターが作成した『患者必携』(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/qa_links/hikkei/index.html)の利用をサポートする目的で開設された。『患者必携』とは、がん患者の情報格差を解消し、がん難民をなくすために、「がん対策推進基本計画」に基づいて作成された冊子である。すべてのがん患者に必要な情報を盛り込み、患者・家族らの声を反映して改訂を重ねて完成した。既に、同センターのWebサイト「がん情報サービス」で完成版PDFが公開されているほか、冊子は2010年度内に本格的に有償での配布が始まる予定だ。

サポートセンターを後方支援するがん対策情報センターの渡邊清高氏(左)と高山智子氏。まずは、患者団体などの力も借りて、サポートセンターや拠点病院の相談支援センターの情報も広げたいという。

 「『患者必携』は、がんの患者さんに起こり得る問題を広くカバーしています。サポートセンターへの電話相談については、『患者必携』の内容に関すること、入手方法のほか、がんに関することならどんなことでも相談していただいてかまいません。がんの疑いの段階の方から、すでに長年がんと付き合っている患者さんや家族の方まで、どなたでも受け付けています。すぐに答えが得られなくても、電話で話すことで自分の抱えている問題が整理されたり、どこに相談したらよいのか分かったり、解決の糸口が見付かるはずです」。同がん対策情報センターがん医療情報サービス室長の渡邊清高氏は、そう強調する。

 実際にかかってきている電話の相談も、がん検診のことから、治療内容の妥当性、セカンドオピニオン、治療の副作用、医師や家族とのコミュニケーションの取り方、抗がん剤治療を中止することに伴う不利益、代替療法や治療後の性生活の悩みまで、多岐にわたっている。

利便性には課題もあるが、1人で抱え込まないで
 こうしたがんの電話相談や対面相談の取り組みは、国立がん研究センターだけでなく、全国377カ所の拠点病院の相談支援センターでも行われている。渡邊氏は、「地域に密着した情報提供や相談支援は各地の相談支援センターが提供する形で、連携して対応していきたい」と話す。利用者としては、どちらでも利用しやすいほうに電話すればよいわけだ。

 ただ、拠点病院の相談支援センターの中には、まだ知名度が低く、サポートを必要としている人が気軽に利用できる存在になっていないケースもあるのが実情だ。そのため、かねて患者団体などが、全国のがん患者・家族の相談に24時間体制で対応する全国コールセンターの設置を要望していた。

 今回スタートしたサポートセンターは、24時間対応の大規模なコールセンターではないが、ワンストップでがん患者・家族が問い合わせられるミニコールセンターの誕生と受け止めてもよいだろう。

 サポートセンターの開設時間は平日の昼間なので、働いている人が電話をかけにくいなどの課題もある。これに対し、国立がん研究センターがん対策情報センター診療実態調査室長で、海外のコールセンターの事情にも詳しい高山智子氏は次のように話す。

 「2010年度中は現在の体制のままですが、今後、ニーズを見ながら、開設時間の延長やメールでの対応なども検討していきたいと考えています。また、患者さんや家族の方々から寄せられる相談の内容を、がん情報サービスの充実や拠点病院の相談支援センターの相談員の研修にも生かしていきたいですね」

 まだ不十分とはいえ、がん対策基本法ができる以前に比べると、『患者必携』やサポートセンター、拠点病院の相談支援センターなど、患者・家族を支援する仕組みが少しずつ整いつつある。今、つらい思いを抱えている人や闘病に関することで困っている人、疑問があるが誰に聞いたらよいか分からないというは、1人で思い悩まずに、まずはサポートセンターに電話をかけてみてはどうだろうか。こうしたサービスを上手に使って、情報の海に溺れないようにしたいものだ。

・国立がん研究センター患者必携サポートセンター 0570-02-3410(ナビダイヤル)

もう一つのがん難民削減策 「がん相談対話外来」



 国立がん研究センター中央病院は、がん難民解消策の一環として、今年7月に「がん相談対話外来」を開設した。この外来は、通常のセカンドオピニオンとは異なり、医師のほかに看護師、ソーシャルワーカー、精神腫瘍医が同席し、患者が現在置かれている状況の中で受けられる最良の医療について、患者や家族と対話しながら考えるのが目的という。他院に通院中の患者でも利用することができる。

 開設以来、7月12日から9月10日までの約2カ月間で、304件の受診があった。同センター企画戦略室が 8月の12日間に同外来を訪れた患者の64件の相談事例を分析したところ、92%が治療関連の相談だった。同外来に足を運んだ理由は、「主治医の説明に納得できなかった」(83%)が最も多く(図1)、受診により、42%の患者に対して治療法の新たな見解が提示されている(図2)。利用者の97%は受診後に主治医の元へ戻ったものの、満足度は非常に高い(図3)。また、89%の人が「看護師が同席した方がよい」と答えている。

 同センター理事長の嘉山孝正氏は、「“がん難民”とよく言われるが、定義がはっきりせず、数も分からない。がん相談対話外来の利用者の分析を行い、がん難民の定義、がん患者さんや家族がどういう問題が抱えているのかを、今後報告していきたい」と話している。

 なお、同院のがん相談対話外来は予約制で、一般的なセカンドオピニオンと同様、診療情報提供書(紹介状)、画像検査結果(CD・DVD・レントゲンフィルム)、可能な範囲で病理診断書あるいは病理レポートの持参も必要。料金は2万6250円で、病理診断を必要とする場合には3万1500円となる。

(福島安紀=医療ライター)

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