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2010/11/22

「医療用ウィッグ」の失敗しない選び方

 外見に大きな変化をもたらす脱毛は、女性のがん患者の悩みの中で常に上位を占める。脱毛対策として多くの患者が利用しているのがウィッグ(かつら)や帽子、バンダナなどだ。なかでも医療用ウィッグは精神面での効果も高いといわれるが、高価なものだけに利用を迷う人も少なくない。そこで、医療用ウィッグの種類や特徴、購入する際の留意点を中心に、失敗しないウィッグの選び方を紹介する。



 抗がん剤治療は様々な副作用を伴い、抗がん剤の種類によっては脱毛を高頻度に起こす。毛髪の抜け方には個人差があるが、多くの場合、抗がん剤を最初に投与してから10〜20日後に脱毛が始まり、約1カ月半で90%ほどが抜け、約3カ月後には残りの髪の毛も抜けてしまう。また、脱毛に伴い、頭皮ケアにも注意しないと、感染などのトラブルが起こってくる(図1)。

脱毛の可能性が高い場合は、治療前にウィッグの準備を

後藤かよさん(株式会社スヴェンソンレディス事業部医療事業グループ毛髪技能士)
1995年スヴェンソン入社。99年ごろより医療用ウィッグの相談に対応している。近年は、認定看護師をはじめ医療従事者向け勉強会の講師なども務める。
 抗がん剤の投与が終了すれば髪が生えてくることが分かっていても、患者――特に女性患者にとって、脱毛は精神的なダメージが大きく、治療を拒否したくなるほどつらいものだともいわれる。このような脱毛への対策として多くの患者に利用されているのがウィッグだ。

 医療用ウィッグの開発や製作を手掛ける株式会社スヴェンソンで、毛髪技能士として1000人以上のがん患者の脱毛相談に乗ってきた後藤かよさんは、「ウィッグは頭皮の保護にも役立ちますが、精神的な苦痛や不安を和らげる上での効果が大きいといえます」と話す。

 そのため、後藤さんは「脱毛の可能性が高い」と医師から告げられたら、治療前にウィッグの準備を始めることを勧める。「脱毛前に準備をすることで安心感が生まれ、治療に専念することができます。また、QOL(生活の質)の観点からも、ウィッグは、患者さんができるだけ普段通りの生活に早く戻れるようサポートしてくれるものだと思います」

既製品、セミオーダー、フルオーダーで使用感も価格も違う
 一般的に「医療用ウィッグは価格が高い」という印象があるが、材質や種類によって価格が違ってくる。材質は、(1)人毛(人毛に特殊加工を施したもの)、(2)人工毛(合成繊維)、(3)ミックス毛(人毛+人工毛)の3タイプがある(表1)。

写真1 スヴェンソンの人毛100%のウィッグの例。人工皮膚がついている製品を選べば、自然な分け目も再現できる。

 人毛(写真1)は価格が高めだが、耐久性に優れており、カットやパーマ、ドライヤーやカーラーでのアレンジができる。ただし、洗うとスタイルが保持できないので、セットに手間がかかる。人工毛は価格が安く、スタイルも崩れにくいが、耐久性にやや欠ける。また、熱や摩擦に弱く、毛先が縮れるため、人毛のようにロングヘアには向かない。ミックス毛の価格は人毛と人工毛の中間で、後藤さんによれば、手入れが楽なのは、洗ってもスタイルがキープできるミックス毛だそうだ。ロングヘアには向かないが、人毛のようにカットアレンジができる利点もある。「ミックス毛といっても製品によって人毛と人工毛の割合がさまざまです。人毛が3〜4割入っているウィッグの方が自然な風合いになります」

 ウィッグを買い求める際には、(1)既製品、(2)セミオーダー、(3)フルオーダーの3タイプから選ぶことになる。既製品は価格が1万〜10万円と比較的安く、カタログで選べるので手軽だ。ただし、出来上がったスタイルの中から選ぶので、毛量や長さの調節ができなかったり、サイズの調整ができなかったりする。

 その点、セミオーダーの場合は、8割がた出来上がっている製品の中から気に入ったデザイン、サイズ、色のウィッグを選び、希望のスタイルにカットしてもらえるほか、自分の頭の形に合わせてサイズの調整をしてもらえる。同社の場合、納期は通常は2〜3日だが、早ければ即日、遅くても1週間以内には手に入る。セミオーダーのウィッグを作るには専門的な知識と技術が必要になるため、専門店での対応に限られる。また、価格も5万〜30万円と既製品に比べて高くなる。

 フルオーダーのウィッグは、毛質、スタイル、特殊な色など、好みに応じて自由に注文できるが、30万〜80万円と高価な上に、仕上がりまでに30〜40日ほどかかる。

購入する際には脱毛した状態を想定し試着することが大事
 ウィッグを使う期間は、抗がん剤治療開始から、脱毛を経て、自髪が回復するまでの約1年半〜2年くらいが目安。使用期間は意外に長い。さらに、後藤さんによれば、脱毛が始まるとウィッグは緩くなり、発毛が始まるときつくなるという。

 「このような点を考えると、デザインや色、価格だけでなく、使用感(着け心地)が良いものや、サイズ調整が可能なものを選ぶことが大事です」(後藤さん)。つまり、ウィッグを購入する際には、販売店あるいは専門店で試着した上で、アフターサービスの充実した店を選ぶことが長持ちの秘訣といえる。

 試着する際に何よりも大事なポイントは、脱毛後にかぶった状態を想定してみることだ。ネットを使って髪をまとめた上で試着し、着け心地に加え、頭頂部や生え際、もみあげの部分などが自然に見えるかどうかもチェックしたい。このような外見については、家族や友人に同行してもらい、印象を聞いたり、意見をもらったりすると安心だ。

 また、ウィッグがずれることを心配する患者も多いが、「サイズをしっかり調整すれば自転車などにももちろん乗れます」と後藤さんは話す。だが、販売店によっては細かいサイズ調整に対応できないところがあるため、脱毛あるいは発毛の進行に合わせたサイズ調整が可能かどうかを購入前に確認しておこう。「いろいろな要望を出して自分に似合うウィッグを用意するには時間がかかりますので、販売店や専門店には時間的な余裕があるときに出掛けましょう」と後藤さんはアドバイスする(表2)。

アフターサービスが充実する店ではトータルケアが受けられる
 専門店のアフターサービスは、脱毛や発毛に伴うウィッグのサイズ調整が主だが、中には、綿の帽子やニットキャップなどを販売したり、治療期間中の頭皮ケアなど脱毛対策全般のアドバイスをしたり、併設した美容室で患者のプライバシーを守りながら生え始めの髪の手入れを行ったりするなど、さまざまなサービスを提供するところもある。

 医療用ウィッグの情報は、医師や看護師から入手しにくい情報の一つだ。しかし、がん診療連携拠点病院の中には、がん相談支援センターや患者サロンでウィッグの情報を提供したり、医療用ウィッグを院内展示したりする施設も増えてきた。これから抗がん剤治療を始める人や、現在、脱毛の副作用に悩んでいる人は、最寄りのがん相談支援センターに問い合わせてみるのも解決につながる一つの方法だ。

(渡辺千鶴=医療ライター)

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