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レポート

2010/11/30

乳がんのリンパ浮腫の予防・進展抑制(後編)

 進行すると回復が難しいリンパ浮腫。発症リスクを知り、予防行動を行うことで発症・進展を最小限に抑えることができる。乳がん手術後のリンパ浮腫の発症や進展を防ぐためのポイントをまとめてみた。



 「患側の変化に気付いたが次の定期健診まで待った」「むくんできたので自分なりの方法でマッサージをしている」「予防のために弾性ストッキングを使用している」――そんな患者さんがいたら要注意だ。

 リンパ浮腫を発症していない人や、夕方になると少しむくむ程度という人は、リンパ浮腫の発症や進展を防ぐためのセルフケアの重要性を実感しにくかったり、自己流の対症行動を行いがちだ。しかし、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)乳がん看護認定看護師の高橋由美子氏は、「症状があるのにそのまま様子をみたり、マッサージや弾性着衣の着用を自己流で行うと、かえってリンパ浮腫を発症させたり、進行を早めたりする恐れもある。早い段階でリンパ浮腫に詳しい医師や看護師に相談してほしい」と話す。

蜂窩織炎がリンパ浮腫発症のきっかけに
 リンパ浮腫の発症や進展は、発症リスクを知り予防行動を行うことで、最小限に抑えることができる。「リンパ浮腫予防の基本は、『患肢を疲労させない』『傷を作らない』の2点」と高橋氏。患肢の疲労や傷は、リンパ浮腫の発症や悪化のきっかけになりやすいことが明らかになっているからだ。また、傷口が化膿して蜂窩織炎になり、それがリンパ浮腫を引き起こすこともある。

 蜂窩織炎は感染症の一種で、蚊に刺されたような腫れと、患側の腕の全体的な赤み・熱感・圧痛、38度以上の高熱などの症状が一度に出る場合が多い。乳がんのリンパ節切除後の患者の約20%が発症する。これは、リンパ節切除後の患者はリンパ液が鬱帯しやすく、十分に細菌の処理ができないためと考えられている。蜂窩織炎は一度発症すると繰り返すことが多いため、発症させないためのセルフケアが重要となる。

 例えば、畑仕事の際には手袋をして作業し、それが難しい場合は、仕事が終わった後にきちんと手洗いをする。また、傷を作ってしまったら、流水で洗い流し、消毒して化膿しないようにするなどの工夫ができる。傷ができたらすぐに消毒できるよう、市販の消毒液を持ち歩くのもよいだろう。

 急激な日焼けにも注意が必要だ。日常生活レベルでの日焼けは問題ないが、水ぶくれなど皮膚の損傷をきたすような日焼けは避けたい。カーディガンを羽織る、日傘をさす、日焼け止めを塗るなど工夫しよう。その他、脱毛をする際は、傷が付きやすいかみそりではなく、電気かみそりを使うのも予防策の一つだ。

 それでも、蜂窩織炎の症状が出てしまったときは、早めに医療機関を受診しよう。治療には抗菌薬が必要。症状を起こすのは自宅が多いが、そのまま放置すると、むくみは確実に悪化するので注意したい。

 受診するまで、マッサージや圧迫などのリンパ浮腫の治療は一旦中止し、水分を多めに取り安静にしよう。患部を冷却することは有効だが、蜂窩織炎を起こしている皮膚は脆弱になっているため、直接皮膚に氷やアイスノンをあてないようにする。高橋氏は、「お勧めは、ビニール袋に氷(10個ほど)と水を入れてしっかり密封し、それをタオルやガーゼでくるんで患部にあてる方法」とアドバイスする。

 また、入浴については、リンパ液は血液循環と同様に全身をめぐっているため、急激に血流を増やすことで患肢に流れるリンパ液が多くなり、浮腫が出現したり悪化したりする場合がある。そのため、熱めのお湯に入ったり長時間入浴した際にむくみを感じることがあれば、湯に入る時間を短くしたり、熱めの湯につかるのは控えるようにしたい。術後にいつも通り入浴しても患肢に異常を感じなければ、今まで通りに入浴してもよい。

弾性ストッキングは適切な時期に適切なサイズを
 リンパ浮腫の治療には、弾性ストッキングや弾性スリーブなどの弾性着衣を使った圧迫療法が行われているが、弾性着衣は適切な時期に適切なサイズを着用して初めて効果がある。

 弾性着衣は、リンパ浮腫の進行度が場J期以降の患者が対象。リンパ浮腫を発症していない患者(0期)では、弾性着衣は原則として使わないようにしたい。

 弾性着衣を選ぶ際の注意点として、高橋氏は、「大切なことは、自分で適当なサイズの弾性着衣を買わないこと。リンパ浮腫に詳しい医療者に必ず相談してほしい」と話す。

 弾性着衣は装着方法やサイズが適切でないと部分的な食い込みが生じて、浮腫を発症させたり悪化させる場合がある。また、弾性着衣が食い込みやすい部分は初期に浮腫を発症しやすい部位と重なり、浮腫を発症させる可能性があるという。

 術後、上肢のリンパ浮腫発症までの平均期間は3.9年。リンパ浮腫を生じた患者の8割が術後3年以内に発症しているとの報告があることからも、特に術後3年目くらいまではリンパ浮腫予防の強化期間と考え、しっかり予防対策を行うようにしたい。

(まとめ:富田 文)

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