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2010/9/21

治療時間は約15分で患者への負担少なく

消化管閉塞の新しい治療法が登場

 胃がんや膵がんなどが進行すると、胃や十二指腸の閉塞を生じやすく、患者の生活の質(QOL)を著しく低下させる。この消化管閉塞の新しい治療法として、ステント留置術がある。ようやく今年4月からステント留置術が保険診療で受けられるようになり、患者への負担が少ない治療法として今後、普及しそうだ。



 がんの緩和医療の中でも、痛みに対する治療の必要性は社会的に認知されてきているが、がんの進行や転移による消化管閉塞に対する治療の選択肢は、これまで限られていた。

 胃や十二指腸が閉塞すると、胃で消化されたものが先に流れにくくなって胃に貯まってしまう。そのため嘔吐を繰り返すことになり、患者に大きな苦痛をもたらすことになる。そこで従来は、チューブを鼻から胃に差し込み、このチューブから消化液を排出する(経鼻胃管)方法や、胃に穴を開けて作った胃瘻(いろう)から消化液を排出する方法、もしくは、狭窄部をバイパスするように胃と空腸をつなぐ胃空腸吻合術(バイパス術)により、治療を行っていた。

 経鼻胃管は、鼻にチューブを留置するため、患者の苦痛が大きい。胃瘻は経鼻胃管のような苦痛はないが、腹水が増えた患者には適用できない。また、これらの治療は狭窄を治療するわけではないので、食事摂取はできないままだ。

 バイパス術は、術後には食事摂取が可能になるものの、侵襲性が高いので、がんの積極的な治療を中止した患者に対して、QOL改善のために手術を行うことへの抵抗感が患者・家族の中にはあるだろう。

胃十二指腸閉塞用のステント

 これらの欠点を克服した新しい治療法として、内視鏡を用いて、筒型のステント(写真)を閉塞が生じた部分に留置するステント留置術が登場した。これは直径3cm弱のメッシュ状の金属の筒だが、直径3mmほどの細さになるため、内視鏡の中に収納することができる。治療時には、ステントを挿入した内視鏡を消化管に入れ、消化管内で、内視鏡からステントを取り出し、展開させて留置する。治療時間は15分程度で、治療そのものの患者への負担は少なく、治療が終われば通常の食事を摂取できる。

 「欧米では、消化管閉塞を生じた患者さんに対して、10年ほど前からステント留置術が行われており、この治療の恩恵を受けた患者は多い」と語るのは、東邦大学消化器内科教授の前谷容氏。「ようやく日本でも、ステント留置術が保険診療として行えるようになった」という。

 胃がんや胆・膵がん患者を対象に、ステント留置術とバイパス術を比較した前谷氏らの研究の結果、ステント留置術の患者では、経口摂取が可能になるまでの時間が短く、かつ、在院日数も短かったという。バイパス手術後に経口摂取可能になるのは8〜9日後だが、ステント留置術であれば術後1〜2日で可能だった。在院日数も、ステント留置術では15〜19日で、バイパス術の28〜30日に比べて短くなっていた。

 一方、ステント留置術の弱点としては、再閉塞やステントの逸脱など、再治療が必要になる確率がバイパス術に比べて若干高いこと。この点に関して前谷氏は、「再狭窄した場合には、再度、狭窄した部位にステントを留置することが可能であり、治療可能」と説明する。

 今年4月に保険適用になったばかりで、ステント留置術を施行できる医療施設はそれほど多くないが、今後、患者への苦痛が少ない治療法として全国に普及していきそうだ。患者や家族も、消化管閉塞に対する治療法にステント留置術という選択肢があることを知ってほしい。
(小板橋律子)

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