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レポート

2010/8/24

吐き気・嘔吐でがん治療を中断させない!

制吐薬の適正使用ガイドラインまとまる

 抗がん剤の副作用として生じる吐き気や嘔吐を抑えるために使われる新しい制吐薬が、相次いで登場している。これらの制吐薬は、どんなメカニズムで効くのだろうか。そして、どのような治療を受けている患者が使用すべきなのだろうか。日本癌治療学会が今年5月に発行した「制吐薬適正使用ガイドライン」に沿って、確認してみよう。



 がんの治療の過程で、最もつらい副作用の一つが吐き気や嘔吐。多くは化学療法や放射線療法の後に起こるが、過去に吐き気や嘔吐を体験した患者は、新たに化学療法を開始する前に吐き気や嘔吐を生じることもある(表1)。

 吐き気や嘔吐によって、治療の継続が困難になったり、生活の質(QOL)が著しく低下してしまうため、症状を予防・制御することが大切だ。「吐き気や嘔吐は、生じた後に治療することは予防することよりも難しい。だからこそ、予防が肝心だ」と札幌医大第一外科の沖田憲司氏は予防の重要性を強調する。

 吐き気と嘔吐に対する最も一般的な対処法は制吐薬の使用だが、わが国では、欧米で標準的に使用される制吐薬の承認が遅れていたこともあり、吐き気や嘔吐への対応が十分ではなかった。ところが昨年から今年にかけて複数の制吐薬が相次いで発売され、使用できる制吐薬の種類が増えてきた。

 わが国で現在、がん治療に使用できる制吐薬は、その作用機序により3種類に分類することができる。副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)、5-HT3受容体拮抗薬、ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬だ。

 デキサメタゾンは約25年前に吐き気・嘔吐の予防効果が証明されており、制吐薬として最も古い歴史を持つ薬剤だ。その後、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬が登場した。

 急性および遅発性の吐き気・嘔吐は、抗がん剤による消化管(小腸)の刺激が、サブスタンスPとセロトニンという2種類の物質に仲介され、脳内にある吐き気・嘔吐の中枢を刺激することにより生じていることが分かってきた。そこでセロトニンの作用を阻害する5HT3受容体拮抗薬、サブスタンスPの作用を阻害するNK1受容体拮抗薬が制吐薬として開発された。

 初のNK1受容体拮抗薬となるアプレピタント(商品名:イメンド)は昨年12月に発売された新薬だ。アプレピタントは、急性だけでなく遅発性の吐き気・嘔吐の予防効果もあることが確認されている。一方、5HT3受容体拮抗薬は、基本的に急性の吐き気・嘔吐の予防効果が確認されているが、2010年4月に発売されたパロノセトロン(商品名:アロキシ)は、長時間効果が持続することから、遅発性の吐き気・嘔吐の予防効果も期待されている。

3種類の制吐薬をリスクに合わせて併用
 このように3種類の制吐薬は、それぞれ異なる作用機序を持つため、組み合わせて使用することで、相乗効果も期待されている。では、いかに制吐薬を使いこなすべきなのだろうか。

 今年5月、日本癌治療学会が、どの抗がん剤を使ったときに、どのぐらい吐き気・嘔吐の症状が予測され、どの制吐薬を使うべきなのかを取りまとめ、「制吐薬適正使用ガイドライン」として公表した。

 ガイドラインが推奨する制吐療法は、極めてシンプルだ。吐き気や嘔吐の生じやすさ(催吐リスク、表2参照)によって、抗がん剤を4段階に分類し、それぞれの催吐リスクに応じた制吐薬の使用を明記している(図1、表3、表4)。複数の抗がん剤を使用する場合には、最もリスクが高い抗がん剤の催吐リスクに沿った制吐薬の使用が必要としている。

 高度催吐性リスクに分類される抗がん剤に対しては、できる限りの予防策を講じることが重要だ。そのため、3種類の制吐薬をすべて併用することを推奨している。

 そして中等度催吐性リスクの抗がん剤は、一般的に、5HT3受容体拮抗薬と副腎皮質ステロイドの2種類の制吐薬を併用することを勧めている。

 なお、高度催吐性リスクと中等度催吐性リスクの抗がん剤には、遅発性の吐き気・嘔吐も少なからず存在するため、遅発性の吐き気・嘔吐を予防する目的で、2日以降も制吐薬を服用する必要がある。しかし、2日目以降に関しては、処方される制吐薬の用量が少なかったり、必要な日数分処方されていない場合も少なくないのが現状のようだ。「副腎皮質ステロイドのデキサメタゾンの使用が不十分な施設が多いようだ」と沖田氏は分析する。

 遅発性の吐き気・嘔吐は、治療後に自宅などで生じるため、医師も気付きにくい。また、患者本人も、治療に関連したものと認識しにくく、医師に副作用として報告しないことがあるかもしれない。抗がん剤投与後2日目以降にも、副作用として吐き気や嘔吐が生じ得ること、また、そのような遅延性の副作用も適切な制吐薬の使用により予防できることを知っておいてほしい。

 さらに沖田氏は、「ガイドラインは最低限必要なことを記載している。“やり過ぎではないか”と思えるほどの制吐療法を受けても問題はない」と語る。乗り物酔いしやすかったり、お酒に酔いやすい人などは、吐き気・嘔吐の副作用が生じやすいことが明らかになっている。特にそのような人は、ガイドラインに上乗せした制吐療法を医師と相談するとよいだろう。

表3 注射抗がん薬の催吐性リスク分類(編集部で一部改変)

日本癌治療学会分類薬剤・レジメン
高度(催吐性)リスクシスプラチン
シクロホスファミド(>1500 mg/㎡)
ダカルバジン
ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)
エピルビシン+シクロホスファミド(EC)
中等度(催吐性)リスクインターロイキン2(>12〜15 million units/㎡)
ブスルファン(>4mg/day)
カルボプラチン
シクロホスファミド(≦1500 mg/㎡)
シタラビン(>200 mg/㎡)
アクチノマイシンD
ダウノルビシン
ドキソルビシン
エピルビシン
イダルビシン
イホスファミド
インターフェロンα(≧10000 units/㎡)
イリノテカン
メルファラン(≧50 mg/㎡)
メトトレキサート(250〜1000 mg/㎡)
オキサリプラチン(≧75 mg/㎡)
ネダプラチン
エノシタビン
テラルビシン
アムルビシン
亜ヒ酸
テモゾロミド
軽度(催吐性)リスクインターロイキン2(≦12 million units/㎡)
シタラビン(100〜200 mg/㎡)
ドセタキセル
リポソーマルドキシルビシン
エトポシド
5-フルオロウラシル
ゲムシタビン
インターフェロンα(5000〜10000 million units/㎡)
メトトレキサート(50〜250 mg/㎡)
マイトマイシンC
ミトキサントロン
パクリタキセル
ペメトレキセド
トポテカン
ペントスタチン
ニムスチン
ラニムスチン
最小度(催吐性)リスクL-アスパラギナーゼ
ベバシズマブ
ブレオマイシン
ボルテゾミブ
セツキシマブ
クラドリビン
シタラビン(<100 mg/㎡)
フルダラビン
ゲムツズマブオゾガマイシン
メトトレキサート(≦50 mg/㎡)
リツキシマブ
トラスツズマブ
ネララビン
ビンブラスチン
ビンクリスチン
ビノレルビン
ビンデシン
ペプロマイシン

表4 経口抗がん薬の催吐性リスク分類(編集部で一部改変)

日本癌治療学会分類薬剤
高度(催吐性)リスクプロカルバジン
中等度(催吐性)リスクシクロホスファミド
エトポシド
テモゾロミド
イマチニブ
ビノレルビン
軽度(催吐性)リスクカペシタビン
ニロチニブ
テガフール・ウラシル(UFT)
ドキシフルリジン
S-1
メルカプトプリン(6MP)
ソブゾキサン
最小度(催吐性)リスクダサチニブ
エルロチニブ
フルダラビン
ゲフィチニブ
ヒドロキシウレア
ラパチニブ
メルファラン
メトトレキサート
ソラフェニブ
スニチニブ
サリドマイド
トレチノイン(ATRA)
タミバロテン
(小板橋 律子)

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