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2010/6/18

“新生”国立がん研究センター・嘉山孝正理事長に聞く

「難治・再発のがん患者を受け入れ、がん難民を出さない」

 「“がん難民”を生んだ張本人」との批判を受けていた国立がん研究センター(旧国立がんセンター)だが、多くのがん患者が希望を託す病院でもある。今年4月1日に独立行政法人化した同センターの初代理事長に就任した嘉山孝正氏は、「今後は難治や再発がん患者を受け入れ、がん難民を出さない」と6月10日に開催した記者会見の席上で明言。“新生”国立がん研究センターはどう変わろうとしているのだろうか。




 「新たなスタートに当たり、6月から『職員のすべての活動はがん患者の為に!』という新標語を掲げた」―記者会見の冒頭に嘉山氏は報告した。この標語は「国立がん研究センターはがん患者のために存在する」という理念を共有するために、嘉山氏自身のポケットマネーを懸賞に職員から募集したものだ。

 嘉山氏は「これまで国立がんセンターは、難治や再発などのがん患者の受け入れを断り、がん難民を生み出したと批判されてきた。これからは、難治や再発のがん患者、また、合併症を持つ難しいがん患者を積極的に受け入れていく」と強調。具体的には、合併症を持つ患者を受け入れるため、東京大学の協力の下で総合内科の新設を計画していることを明らかにした。

 「例えば人工透析中の患者受け入れは、昨年は10人のみだった。今後は、糖尿病や心臓疾患、脳梗塞などの合併症を有する患者をより多く受け入れていく」(嘉山氏)。その一方で、標準的な治療の対象となる患者は、他のがん拠点病院などに診療を依頼する考えだ。

 早期がん患者も含めて、これまで多くの患者が“国立がんセンター”というブランドに引きつけられ、同センターで治療を受けることを希望していた。しかし今後は、同センターでは再発や難治また合併症を持つがん患者が、早期がん患者よりも優先されることになる。新たな役割を患者側も認識する必要がありそうだ。

治療成績などの情報公開を徹底

嘉山孝正氏
 “新生”国立がん研究センターは、情報公開にも力を入れる。既に、同センターのウェブサイトを介して、中央病院、東病院の各診療所の治療成績をすべて公開した。「全国に82ある特定機能病院の中で、すべての治療成績を公開したのは当センターが初めて」と嘉山氏。

 また、治験への参加を希望している患者への情報提供として、中央病院で行っている治験や臨床研究を同センターのウェブサイト上で公開した(「国立がん研究センター中央病院で実施している治験等」)。ただし、現在公開されている治験情報は、対象疾患、治験薬名、治験の種類、治験責任医師、患者登録を受付中か否かに留まるものがほとんど(6月14日現在)。今後は、どのような内容の治験であるか、また、どのような患者が参加可能かという情報も可能な限り公開していく方針という。

ドラッグ・ラグ解決のため政策立案も
 同センターの理念には、「患者目線で政策立案を行う」ことも加わった。まずは日本で遅れているがん登録の問題に取り込む。がん登録を推進するため、患者や医師に対するインセンティブとして、「がん登録を行うとその患者の治療内容が標準的かどうかチェックできるシステムの導入」を考えているという。

 加えて、患者会などからの要望の大きいドラッグ・ラグの問題にも積極的に取り組んでいく考えだ。嘉山氏は「患者会などからの要望がある未承認薬42種を、国内の患者に投与した場合に薬剤費がどれほど必要になるかを推計した」と述べた。同センターの患者数からの推計として、全国で6万〜12万人の患者がドラッグ・ラグの問題を抱えており、その患者全員に未承認薬を投与した場合の薬剤費は460億〜1840億円となるという推計結果を得ているという。「この推計結果を基に、国に働き掛けていきたい」と嘉山氏は意気込む。

患者のための相談事業を充実
 患者や家族からの相談にも対応していく。新しい形のセカンドオピニオン外来「がん対話外来(仮称)」を開設予定であることも明らかにした。7月1日から予約受付を開始する計画だ。

 この新しいがん対話外来では、医師と看護師が相談に参加するという。「がんに対するコンシェルジェと考えてほしい」と嘉山氏。治療に対する相談だけでなく、精神的、経済的な問題にも対応していくという。加えて、がん専門相談員によるがん相談支援事業もより充実させる。「これまでは、相談者のほとんどが国立がんセンターの患者だったが、今後はセンターの患者以外にも対応していく」と嘉山氏は語る。

 “新生”国立がん研究センターが、その役割を明確化した意義は大きいだろう。ただし、今回の発表では全国のがん拠点病院との連携の在り方までは示されなかった。患者代表として厚生労働省がん対策推進委員会の委員を務める、グループ・ネクサス理事長の天野慎介氏は「改革に敬意を表したい」とした上で、「また今後は、国全体のがん診療のレベルアップのためのリーダーシップにも期待したい」と語っている。

(小板橋律子)

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