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レポート

2010/6/8

「チーム医療って何?」の疑問に答えます

体も心もケアしてくれる、多職種連携チーム医療を徹底解説

 5月から、厚生労働省で「チーム医療推進会議」が始まった。これは、同省の「チーム医療の推進に関する検討会」が今春取りまとめた提言の実現に向けて、具体的方策を話し合うための会議だ。近年、多くの病院では、患者中心の医療の実現のためチーム医療が導入されている。だが、当事者である患者や家族の多くは、自分のチームのメンバーすら、よく分かっていないのではないだろうか。そこで本記事では、チーム医療を積極的に活用し、療養生活の質を高めるために、患者と家族が知っておきたい基本的な事柄を紹介する。



「チーム医療」を活用するために、まずはメンバーを知ろう
 チーム医療とは、一人の患者に対して、複数の医療専門職が連携して治療やケアに当たること。病院では、診察室や病棟で患者と向き合う医師や看護師のほかにも、医療ソーシャルワーカーや管理栄養士、理学療法士などの医療専門職(「メディカルスタッフ」とも呼ばれる)が働き、それぞれの患者の療養生活を支えている。

 「患者になったら医療者にすべてをお任せする」という時代は終わった。今年度、全国のがん診療連携拠点病院などでの配布が検討されている「がん患者必携(国立がん研究センターが作成する、がん闘病に必要な様々な情報が書かれている冊子)にも、「がんに携わる“チーム医療”を知ろう」というページがあり、患者のチーム医療への参加を呼び掛けている。

 患者自身が、治療に参加し、チーム医療のメリットを享受するためには、まず、自分を取り巻くチームには、どんなメンバーがいて、どのようなスキルを持っていて、どんなときに、サポートをしてくれるかを知っておくとよいだろう。例えば、がん患者に対しては、主に表1のようなメンバーで複数のチームが作られることが多い。

 これらのチームに属する医療専門職は、連日、情報を共有して治療方針を決めるためのカンファレンスやキャンサーボードを開いている。

年々進化する医療専門職の業務内容
 これまで、医師と看護師以外の医療専門職の役割や仕事内容は、あまりよく知られてこなかった。実は、病院で働く人同士ですら、互いの職種の専門性や仕事内容をよく把握していないという声は多い。医療専門職は他職種との連携に欠けていて、それぞれの業務を黙々とこなしていたり、医師の陰に隠れて大きくクローズアップされることが少なかったりしたからだろう。

 もちろん、患者側も、「薬剤師は薬の調剤をする人」「管理栄養士は病院給食の献立を作る人」という漠然としたイメージは持っているだろう。だが、近年、病院薬剤師は、入院患者への服薬指導や外来化学療法のサポートなども行うようになり、この40年間でその業務範囲はかなり広がった。管理栄養士も、これまでの病院給食の献立作りや食材の発注、配膳だけでなく、最近は病棟を回診しながら患者の食欲不振や栄養状態を確認し、早期離床・早期退院を目指して心身面から患者の療養を支えている。

 こうした医療専門職の役割と業務内容を、表2にまとめた。

 医療専門職の中には、患者の仕事や生活、家族などに関する悩みに耳を傾け、解決のための方策を示してくれる職種が多い。医師と患者をつなぐ役割も果たしてくれる。ぜひ、困ったら、表2を参考にしながら積極的に医療専門職に声をかけるといいだろう。

全国の病院で「チーム医療」を実施するためには

写真1 チーム医療推進協議会の様子(昨年9月24日に日本放射線技師会にて開催された第1回会議)
 だが、残念ながら、現時点では、全国どの病院でもこのような多職種連携のチーム医療が導入されているわけではない。

 病院で働く14の職能団体が横断的に集まり、チーム医療の現状と課題について話し合っている「チーム医療推進協議会」(代表:日本放射線技師会会長・北村善明氏、参加団体:日本医療社会事業協会〔医療ソーシャルワーカー〕、日本医療リンパドレナージ協会、日本栄養士会、日本看護協会、日本言語聴覚士協会、日本細胞診断学推進協会細胞検査士会、日本作業療法士協会、日本診療情報管理士会、日本病院薬剤師会、日本放射線技師会、日本理学療法士協会、日本臨床心理士会、日本臨床工学技士会、患者会・山梨まんまくらぶ、日本病院会)は、現在のチーム医療が抱える問題点として、以下の3つを指摘している。

(1)1人職場と過剰労働
(2)チーム医療についての教育の不足
(3)チーム医療に対する客観的な評価の欠如

 一昨年、厚生労働省は医師の増員策を打ち出したが、医師以外の医療専門職の不足も深刻だ。現場の声を聞いていくと、「人手不足なので、チームが組めません」「日常の業務が忙しすぎて、チーム医療ができません」といった意見が相次ぐ。

 例えば、日常生活の質を向上させるためのリハビリを担当する作業療法士は、その6割が「1人職場」で働いている。リハビリは個別指導が効果を生むが、作業療法士が1人しかいない現場では、十分な個別指導ができない。臨床工学技士も、治療時や手術時に医療機器が確実に安全に作動するために不可欠な存在だが、全国500床以上の大学病院のうち、約6割にしか雇われていない。医療機器の管理者として認められている人は3割しかいないというデータもある。

 こうした問題は、各職種のスキルや専門性が十分に評価されていないことで引き起こされている。

 (2)についても、「連携すべき職種同士がお互いを理解できていない」「仕事に就く前の修業年限にばらつきがあるため、チームを組むための知識やスキルが統一されていないという点が指摘されている。教壇に立つ教育スタッフがチーム医療の現場をよく知らず、教育内容が現場と乖離していることも多いという。

 (3)の問題は、「チーム医療にはどんな利点があり、どんな結果が得られるのか」についてまだ客観的なデータがほとんど出ておらず、それが全国の病院でチーム医療に取り組もうとする動きの障壁になっている。チームで協働して患者個々のニーズに応えるためには、どうしても情報共有のためのカルテ作りやカンファレンスに時間を割かなければならない。だが、現状では、ほとんどのチーム医療に対して診療報酬(医療機関が行った医療行為に対して支払われる対価)が付いていない。このため現場では、チーム医療の導入をさらなる業務負担と感じる人もいて、敬遠する声さえ出ているという。

 「患者の満足度を高めるために」――。この合言葉の下、医療専門職の献身的な努力と尽力が、現在のチーム医療を支えている。だが、それだけでは限界がある。全国のがん患者がチーム医療のメリットを享受できるようにするためには、国を挙げて、上記のような問題を解決していくことが急務だ。

(医療ジャーナリスト・福原麻希)

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