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レポート

2009/11/24

副作用対策

セツキシマブの中止や減薬をゼロにする! 皮膚障害を軽減する投薬とスキンケア

 進行・再発大腸がんの治療に用いる分子標的薬の「セツキシマブ」は、ほとんどの人に皮膚障害を来す。この副作用が強いほうが薬の効果は高く、“皮膚障害の発現=薬が効いているという証”でもある。しかし、皮膚障害が強いためにセツキシマブを中止・減薬しなくてはならないのでは元も子もない。そこで、皮膚病薬の処方やスキンケアに力を入れる病院が増えてきた。そのノウハウを紹介しよう。皮膚障害が出る他のがん治療薬の投与を受けるときにも参考になりそうだ。




 虎の門病院(東京都港区)では、2008年11月から2009年9月までにセツキシマブの投与を受けた31人のうち、29人(94%)に皮膚障害がみられた。最も多かったのは、顔、胸、背中などにニキビのようなものができる「ざ瘡様皮疹」。発現時期は、例えば顔の場合の中央値は8日だった。また、初期投与から5〜60日(発現時期中央値23日)で、手足の亀裂、ひどい皮膚乾燥、10〜120日(発現時期中央値48日)で爪の周囲の炎症が起こった。手足の亀裂や爪の周囲の炎症は、いずれも中等度から重度の皮膚障害だったが、全例に腫瘍の縮小効果もみられた。重症化した人でも、一時休薬したところ皮膚症状は治まり、治療を再開できたという。

セツキシマブ投与開始と同時に皮膚障害対策を
 治療の中止や減薬に至らないようにするには、セツキシマブの投与と同時に皮膚障害対策をスタートし、皮膚障害とうまくつきあうことが大切だ。同院では、セツキシマブの投与を受ける患者全員に、保湿剤2種類と顔用、手足・体用、頭皮用の3種類のステロイド剤、抗ヒスタミン薬の軟膏を処方し、患者用マニュアルを配布して、スキンケアの指導を行っている。「セツキシマブの投与を受ける人は、まず皮膚の乾燥を防ぐことが重要です。そして皮膚障害が出たら、早めにステロイド剤を」と話すのは、がん治療における皮膚障害の軽減に力を入れる同院薬剤部の長谷部忍氏。

セツキシマブで皮膚障害が起きるのはなぜ?
 セツキシマブは、がんの細胞膜上にある上皮成長因子受容体(EGFR)に結合し、がん細胞の増殖などを抑える。EGFRは正常な皮膚にも多く存在するため、そこにセツキシマブが結びついて皮膚の細胞の増殖を抑え、角化異常、炎症といった皮膚症状を引き起こすと考えられている。セツキシマブのようなEGFRを標的とした分子標的薬に関しては、薬の効果と皮膚障害の度合いが相関しているので、皮膚症状の出現は薬が効いている証とされる

 これらの薬剤は、具体的にどのように使うのがいいのだろうか。「皮膚症状が出る前から保湿ケアを行うのがポイントです。セツキシマブの投与日から、朝晩、できれば朝昼晩、顔、手足、胸、背中、腕、太ももに保湿剤を塗りましょう。手足の亀裂や乾燥の症状がつらいと訴える患者さんが多いので、特に手足だけは1日3回重点的に保湿することをお勧めします。夜は、お風呂上がりに保湿剤を塗ると効果的です」と長谷部氏はアドバイスする。

 顔、胸、背中などにニキビのようなざ瘡様皮疹が出たときには、ステロイド剤を塗る。皮膚が薄くて薬を吸収しやすい顔には弱めのステロイド剤、頭皮にはローションタイプのステロイド剤、かゆみがあるときには抗ヒスタミン剤を使うとよい。保湿剤とステロイド剤を同時に塗る時には、保湿剤の上からステロイド剤を重ねるようにする。

 ところで、ざ瘡様皮疹は、一見ニキビのようだがアクネ菌などへの感染はなく、かゆみが出ることも多い。思春期のニキビとはまったくの別ものであり、市販のニキビ薬の使用は、かえって症状をひどくする恐れがあるので禁物だ。

セツキシマブ投与後の皮膚障害の発現時期

 一般に、セツキシマブの初期投与から3〜4週間後には手足の亀裂や皮膚の乾燥、4週間以降には爪の周りの炎症が起こる人もいる(図)。爪の周りの炎症なども早めにステロイド剤を塗れば軽減するが、薬を塗ってもよくならないときや痛みのあるとき、逆に悪化したときには皮膚科を受診したほうがいいようだ。

 なお、セツキシマブの投与時に処方する皮膚病薬は、病院によって多少異なる。たとえば、愛知県がんセンター中央病院では、セツキシマブの初期投与時から、保湿剤のほか、炎症を抑える作用があるテトラサイクリン系抗生物質を4週間投与し、重症化を予防している。海外の臨床試験では、テトラサイクリン系抗生物質の予防投与で皮膚障害の重症化が防げるという報告もあるが、先進的な病院でもその導入には温度差がある段階だ。

皮膚を清潔に、日焼けは禁物
 さらに、「皮膚障害の重症化を予防するには、皮膚の乾燥や刺激を防ぐと同時に、外出するときには日焼け止めを塗るなどの、スキンケアに心がけることも大切です」と愛知県がんセンター中央病院のがん化学療法看護認定看護師の小原真紀子氏。小原氏らは、同がんセンター、名古屋市立大学病院など愛知県下の7施設の有志で、多施設多職種横断のプロジェクトチーム「 Project Cetuximab」(リーダー:愛知県がんセンター中央病院薬剤療法部の室圭氏)を結成し、医師(外科医・腫瘍内科医・皮膚科医)、看護師、薬剤師、医療秘書が情報交換しながらセツキシマブの効果的な使用法の普及と副作用軽減に取り組む。

具体的なスキンケア法と生活上の注意点

 このプロジェクトチームに参加している7施設では、セツキシマブの投与の前に、日ごろのスキンケア法やひげ剃りのやり方などを聞き、一人ひとりの患者に合ったスキンケア法を指導しているという。「セツキシマブでの治療中は、普段よりも肌が敏感になっています。男女や年齢を問わず、朝晩に低刺激性の石けんで洗顔を行うことや、毎日の入浴で皮膚を清潔に保ち、軟膏や保湿剤を塗布するようにアドバイスしています。また、化粧品を使うときには、アルコールフリー(低刺激性)、オイルフリーで敏感肌用のものを選ぶとよいでしょう。男性の場合、カミソリの使用を控え、電気カミソリを使うと肌への負担が少なくてすみます」と小原氏(表参照)。

 外出時は、長袖の衣服、帽子、マフラーやスカーフなどでなるべく肌の露出を避け、顔や手、首などには日焼け止めを塗るようにする。投与中止後も、1〜2カ月はUVケアを行い、日焼けは避けたほうがよいそうだ。

 セツキシマブと同じく、進行・再発大腸がんの治療薬であるパニツムマブ(承認申請中)、肺がん治療薬であるエルロチニブ、乳がん治療薬のタイケルブ、腎臓がん治療薬のネクサバールなどでも皮膚障害が起きやすいことが知られている。こういった治療を受ける際には、看護師や薬剤師などに、保湿ケア、スキンケアの方法を事前に相談してアドバイスを受けておこう。

(福島 安紀=医療ライター)

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