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レポート

2009/11/10

認定開始から2年

がん治療認定医は、患者の求めるがん総合医になれたか?

 がん医療全般に詳しく、治療や療養に関する的確なアドバイスができる「がん総合医」の育成を目的として、2007年度にがん治療認定医制度が始まった。これまでに全国で5962人が誕生したがん治療認定医は、がん患者の求める「がん総合医」になれたのか?がん治療認定医の今を探った。




 10月22日から24日に横浜市で開催された第47回日本癌治療学会学術集会において、がん治療認定医を育成する日本がん治療認定医機構(以下、機構)の理事である西山正彦氏、大江裕一郎氏を司会に「特別企画がん治療認定医:2年目の検証」と題するワークショップを開催、がん治療認定医制度の現状と課題が話し合われた。

希少疾患や転移がんの知識も修得できる工夫が必要
 がん治療認定医は、各種がんの専門医制度の土台となるゼネラリスト(総合医)として位置付けられている。そのため、自分が得意とするがん種以外のがんについてはもちろん、放射線治療、緩和ケアなどの幅広い知識を修得することが求められる。

 機構は毎年1回、1日半の教育セミナーを開催し、総論と各論で合計26項目、各25分の講義を実施。このセミナーに参加し、受講後に行われる認定試験に合格することが資格申請要件の一つに設定されている。ところが、この教育セミナーや認定試験の内容に、改善を求める声も少なくない。

 広島大学病院脳神経外科で悪性脳腫瘍の治療に携わる杉山一彦氏は、2007年度実施の第1回目の認定医試験に合格。このとき試験を受けた印象として「消化器分野の内容が多過ぎる」と感じたそうだ。また、脳腫瘍や転移性肝・骨・脳・肺腫瘍の項目がないことにも違和感を持った。

 その後、認定試験に脳腫瘍の項目は追加されたものの「消化器分野で点数を稼げれば他の分野は勉強しなくてもよいと考える医師もいる。がんの総合医とうたうからには、希少な疾患の知識もまんべんなく修得できる工夫が必要」と杉山氏は指摘し、各論軽視の風潮に歯止めをかけるには、各論を4部門に分け、それぞれに足切り点を設けることを提案している。

 認定試験に転移性腫瘍の項目がなかったことに患者団体の関係者も驚いている。愛媛がんサポート「おれんじの会」(愛媛県松山市)理事長の松本陽子氏は「転移した患者さんは主治医から“私の診療範囲ではない”と治療を打ち切られ、途方に暮れることも多い。がん治療認定医には、そうした転移後の患者が治療や療養を継続する際の司令塔になってもらいたいとも考える。ぜひ、転移性腫瘍の知識も積極的に学んでほしい」と話した。

研修施設や教育プログラムの監査に患者参加を
 がん治療認定医の資格申請要件には、「認定研修施設においてがん治療教育プログラムを履修し、指導責任者によって証明がなされていること」と定められている。機構が認定する研修施設は全国に1084カ所(2009年9月現在)あり、暫定教育医は6120人(2009年8月現在)いる。

 患者支援団体のキャンサーネットジャパン理事・事務局長の柳澤昭浩氏は、がん治療認定医の質を担保するうえで、この認定研修施設や教育プログラムの監査体制の整備も必要だと指摘する。

 柳澤氏は「真の意味でのがん患者・市民のための制度にするには、中立・公正な機関による外部監査の実施が望まれる。その機関には、がん患者が外部評価者として参加することを検討してほしい。患者に評価ができるのかという問題もあるが、米国や英国では治験審査や診療ガイドライン作成の場に患者や市民が参加するための仕組みがある。そうした先進国の取り組みも参考にしてもらいたい」と呼びかける。

 この提案を受け、機構理事の西山氏は「評価することも手前味噌で終わってはいけないと考えている。患者と医療者がともに動く時代になった。お互いに学び合い、患者さんも監査体制に参画してほしい。まずは話し合うことから始め、体制を作り上げていきたい」と、機構側も前向きに検討する意欲があることを示した。

 発足当初、機構に協力していた患者団体は10団体だったが、今やその数は130団体ほどに増えている。こうした患者団体の意見や評価を、どのように仕組みづくりに反映させ、どの部分で協働していくのかということも、今後の大きな課題の一つだ。

認知を広めるには「がん治療認定医」を広告可能に
 過去3回、1700人から2800人前後の医師が認定試験を受けているが、その動機は「がん専門医の証として取得したい」というものが多く、がん医療の現場では、がん治療認定医の資格が“直接的”には生かされていないのが現状のようだ。

表:がん治療認定医申請資格の要件

 ただ、認定医を取得した医師からは「教育セミナーの講義は基礎や総論がよくまとまっていて大変勉強になった」「資格を取得した後、他科の医師との討論がスムーズになった」との感想も聞かれるという。現場の医師たちのがん医療全般に対する視野が広がることで、“間接的”には患者へのメリットが生み出されているといえそうだ。

 とはいえ、患者が本来望んでいる役割からいえば、地域の開業医にこそ取得してほしい資格ではないだろうか。「山梨まんまくらぶ」(山梨県甲府市)代表の若尾直子氏も「ホームドクターが総合的な知識を身につけ、がん治療認定医として道案内の役割をしてくれると、患者としては心強い。そういう道はあるのか」と疑問を投げかける。

 しかし、現状では、認定研修施設で研修を受けなくてはならないなど、資格申請要件のハードルは高く(表)、開業医の資格取得は極めて難しい。西山氏は「がん治療認定医を取得している医師の中心は40代です。この世代の中にはまもなく開業する医師もいるでしょうから、そこから地域に広がっていくことを期待したい」と説明した。

 がん治療認定医の存在を広く知ってもらうためには、標榜(広告)できるようにすることが必要との声も多い。確かにどこに認定医がいるのか分からなければ、患者も活用のしようがない。2007年度から機構のホームページで都道府県別に認定医取得者の名前と所属を公開し、患者や一般市民への情報提供に取り組んでいるが、さらに使いやすいものになるよう医師名や病院名で検索できる機能を検討中だ。

 いずれにせよ、ここまで駆け足で整備してきた制度だけに、改革の余地はまだまだある。機構側も「いろいろな意見をいただき、患者さんのためにさらに役立つ認定医制度になるよう努力したい」(今井浩三理事長)との思いが強い。患者も関心を持ち、どのような資質の医師ががん治療認定医として望ましいのか、ともに考えていきたいものである。

(渡辺 千鶴=医療ライター)

※がん治療認定医を探すには・・・日本がん治療認定医機構ホームページを参照。



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