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レポート

2009/9/29

全国がんサロン交流会開催(上)

広がる「がんサロン」の効用と課題は

 がん患者や家族が療養体験や気持ちを分かち合い、勉強会などを行う「がんサロン」が全国に広がりつつある。9月21日、がんサロンを運営する人たちや、これから開設しようとする人たちが情報交換を行う「第1回全国がんサロン交流会in島根 がんサロンの誕生“パワーと秘訣”〜出雲から繋ごう、結ぼう、いのちの縁〜」が、島根県出雲市で開かれた。全国からがん患者、家族、医療関係者ら合計約650人が参集した。



「がんサロン」とは?

「ちょっと寄って見ません家」で開かれたがんサロン見学会

「ちょっと寄って見ません家」で開かれたがんサロン見学会。全国各地から訪れたがんサロン関係者や医療関係者が、運営、資金面について熱心に質問する姿が見られた

 「心配をかけたくないと思って、家族にもつらい気持ちをなかなか話せませんでした。新聞でがんサロンのことを知り、思い切って行ってみたら、がんになってつらいのは自分だけじゃないのだと思えて、気持ちが落ち着きました」。出雲市内の住宅街の一角にあるがんサロン「がん情報サロン ちょっと寄って見ません家」に通う、がん体験者の女性(58歳)は、初めてここに来た日のことを、そう話す。

 全国がんサロン交流会では、まず、「ちょっと寄って見ません家」でがんサロン見学会が開かれた。このがんサロンは、今回の大会会長の佐藤愛子さんが、大腸がんで亡くなった夫の遺志を継いで、佐藤さん自身が所有するテナントビルの一角に2006年4月に立ち上げた。佐藤さんの自宅のリビングに招かれたようなアットホームな雰囲気に、気持ちも和む。月曜日から土曜日まで開いているこのがんサロンには、毎日10人前後のがん患者や家族が集まるという。街中にあるので、誰でも買い物のついでなどに立ち寄れる。

全国がんサロン交流会in島根の大会会長を務めた佐藤愛子さん

全国がんサロン交流会in島根の大会会長を務めた佐藤愛子さん

 夫の均さんは、未承認薬の早期承認、化学療法の専門医の育成などを国に求める活動を展開し、がん対策基本法が制定されるきっかけを作った患者リーダーの一人だった。「がんサロンでがん患者さんや家族と話すことで、私自身も、主人を失ったさみしい気持ちが癒やされます」と愛子さんは話す。

 「がんサロン」とは、がん患者や家族が、お茶を飲みながら療養上の悩みを話し、情報交換する場だ。行政などへの要望の提出なども行う「患者会」に比べて、がんサロンは敷居が低く、気軽に立ち寄れるがん患者と家族の“たまり場”のようなもの。島根県内には、2009年9月末現在、「ちょっと寄って見ません家」のような地域の中のがんサロンが10カ所、病院内の一室を利用したがんサロンが12カ所、計22カ所ある。

 運営は、がん患者や家族が中心となって行っている。2005年12月に、益田市総合福祉センター内で全国初のがんサロン「益田がんケアサロン」を始めた納賀良一さんも、膀胱がん患者だ。「『がんサロンをやります』とまずはメディアの人に発表したら、新聞報道を見て、大勢のがん患者や家族が集まってきました。がん患者や家族は、がんサロンのような場所を求めていたのだと、改めて思いました」と納賀さん。

会費、入会の必要なし。誰でも出入り自由

益田がんケアサロン代表の納賀良一さん。島根県がん対策推進協議会の委員も務める

益田がんケアサロン代表の納賀良一さん。島根県がん対策推進協議会の委員も務める

 2006年3月には、松江赤十字病院内に二つ目のがんサロンである「くつろぎサロン」ができ、その後も患者や家族が、県内各地に次々とがんサロンを立ち上げていった。地域のがんサロンは、どこの病院にかかっているかに関わらず誰でも気軽に立ち寄りやすいのがメリット。一方、病院内のがんサロンは、患者・家族の要請を受けて立ち上げられ、運営も患者や家族が中心になって行っている場合が多い。外来を受診するついでに立ち寄れるし、医師や看護師、薬剤師などが顔を出すところもあるなど、医療関係者との交流を深めやすいというメリットがある。

 活動日は月1〜3回のところもあれば、週1〜2回、月曜日から土曜日まで毎日・・・などさまざま。会費は無料で入会手続きなどの必要もなく、誰でも出入り自由だ。なかには、二つのがんサロンを掛け持ちで参加しているという人もいる。益田がんケアサロンでは、最初の1年間は会費を徴収していたそうだ。しかし、「ただでさえ、多額の治療費がかかっている患者さんから会費を取れない」(納賀さん)と、その後は会費などの徴収は行わないことにした。

 では、場所代やお茶代などの運営費はどうしているのだろうか。がんサロン見学会でも、その点に質問が集中した。「病院以外で行っているがんサロンは、保健センター、公民館、市民センター、代表者が所有するテナントなど、費用のかからないところで活動しています。病院内のがんサロンは、基本的に場所代などの費用はかかりません。お茶やお菓子は、参加する人が持ち寄ってくる場合も多いですし、院長先生がお茶などを提供してくれているところもあります」。島根大学医学部付属病院内の「ほっとサロン」の運営に携わる今岡登志子さんはそう説明する。

全国でがんサロンが続々・・・課題は?
 こうした島根県のがんサロンをモデルに、全国各地に多数のがんサロンが誕生した。島根県では、何人かのがん患者や家族が中心になって、がんサロンを立ち上げていったわけだが、他県では、患者会やその連合体、あるいは行政、医療機関主導で、がんサロンを始めるケースが目立つ。

 たとえば、五つの患者会の連合体である秋田県がん患者団体連絡協議会は、秋田市の中心部で今年の2月から「コミュニティサロン クローバー」を始めた。開催日は月1回土曜日で、平日の昼間は育児サークルとして使われているクリニックの1階のスペースを借りているという。参加費は無料、場所の利用料は県からの補助で賄う。

 今回のがんサロン見学会に参加した秋田市のクローバーの中心メンバーで、乳がん体験者の永澤スナ子さんは、がんサロンの課題を次のように話した。「まだ試行錯誤で進めている感じです。がんという病気は、少し具合が悪かったら再発じゃないかと心配ですし、がん患者は何年たっても不安なものです。月1回では少ないので、毎日のように開いているがんサロンが秋田にもあったらと思いますが、そのための場所や人を確保するのはなかなか難しいですね」。

 愛媛大学医学部附属病院内でも、愛媛県がん患者・家族会「NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会」が中心になって、今年4月「がん患者・家族サロンあいほっと」をスタートさせた。ボランティアとして活動する野村和男さんは、「がんサロンに来る人が固定化してしまい、なかなか新しい人が来てくれないのが悩みの種」という。

 今回の全国がんサロン交流会を機に、全国のどこにがんサロンがあるかについて、島根県と島根県立大学短期大学部看護学科教授の平野文子さんらが共同で調査を行っている。結果がまとまり次第、『がんナビ』のニュース欄でも紹介する予定だ。

 全国に先駆けて、22もの「がんサロン」開設を可能にした島根県。そのがん対策は、がん患者・家族、病院、企業、メディア、行政、議会、看護教育が一体となり、がんになって悲しむ人を減らそうとする「七位一体」の取り組みの一環として実現した。全国がんサロン交流会では、見学会の後、パネルディスカッションを行い、がんサロンを運営する患者・家族らが中心となり、行政、議会、企業などをどう動かしたのかを紹介した。詳細は、次回レポートする。


(福島 安紀=医療ライター)


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