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レポート

2009/9/15

副作用対策

口腔粘膜炎、便秘、倦怠感・・・を防ぐ 水分補給とレバミピド

 抗がん剤や放射線による治療中にみられる重度の口内炎(口腔粘膜炎)、胃炎、便秘、下痢、倦怠感といった副作用は、「乾燥」の影響が大きいということをご存知だろうか。市立堺病院(大阪府堺市)の薬剤・技術部部長の阿南節子氏は、「これらの副作用を予防するには、しっかりと口腔ケアを行うとともに、十分な水分摂取とレバミピドの投与が有効です」と話す。


 前回レポートしたように、抗がん剤の投与や放射線照射は、がん細胞だけではなく、増殖の速い正常な粘膜の細胞までたたいてしまい、口腔粘膜炎が生じる。そして実は、ダメージを受けているのは口の中だけではない。

市立堺病院薬剤・技術部部長の阿南節子氏

市立堺病院薬剤・技術部部長の阿南節子氏

 「普段、意識しない人が多いとは思いますが、人間の口から食道、胃、大腸を通って肛門までは、すべてつながっていて、どこも粘膜で覆われています」と阿南氏。常に湿った状態にあるべきこれらの部位の粘膜が、がんの治療中は乾燥しやすく、傷つきやすく、細菌が繁殖しやすい状態になる。胃炎、下痢、便秘が起こりやすくなるのもそのせいだ。下痢については「乾燥」との関連がイメージしづらいかもしれないが、粘膜全体が乾燥し、大腸の粘膜の機能が低下して水分量の調整がうまくできなくなると下痢しやすい。さらには、抗がん剤治療による倦怠感や、胃がんの再発予防のためなどに使われる抗がん剤TS-1(商品名)の副作用である鼻血も、やはり粘膜の乾燥の影響が考えられるという。

治療中は1日1.5〜2Lの水分を
 「粘膜の乾燥と、引き続いて起こる炎症を防ぐには、抗がん剤や放射線による治療を受けている間は、1日に1.5〜2L、水分を摂取することが非常に重要です」と阿南氏は強調する。

がん治療による粘膜の乾燥を予防するための3カ条

 摂取するのは普通の水でよい。スープや味噌汁で水分を補ってもいい。ただし、コーヒー、紅茶、緑茶といったカフェインを含む飲み物やビールなどのアルコール類は、脱水を促すため避けたほうがよい。なお、すでに脱水症状が出ている人には、身体に吸収されやすいイオン飲料がお勧めだ。

 治療中は、気持ちが悪くて食欲が落ちることも多く、ただでさえ水分不足になりがち。「抗がん剤や放射線治療によってがん細胞が破壊されているとき、体に害のあるさまざまな生理活性物質が増加することも分かってきています。それを早く体外へ出すためにも、水分摂取は大切」と阿南氏は話す。

 市立堺病院では、抗がん剤治療や放射線治療を受けるがん患者に、口腔ケアを行うとともに、こまめな水分摂取を促したところ、口腔粘膜炎、そして、胃炎、便秘、全身の倦怠感を訴える人が減ったという。「口腔ケアと大量の水分摂取を指導し始めてから、かなり強い抗がん剤で治療しても、多くの人が、投与スケジュールや投与量を変更することなく、最後まで治療を受けられるようになりました」(阿南氏)

レバミピドの予防投与が奏効
 口腔内を清潔に保つためのセルフケアや積極的な水分摂取は、今すぐ患者自身が始められる有効な副作用対策だが、「かなり一所懸命にこれらを行っても、口腔粘膜炎ができてしまって食事ができなくなる人、症状がつらくて化学療法を続けられなくなる患者さんがいるのも事実」と阿南氏。口腔粘膜炎の治療やケアが進む米国では、口腔粘膜炎を軽減する薬として、paliferminやamifostineが使われているが、いずれも日本では未承認である。

 そこで阿南氏らが着目したのが、胃炎・胃潰瘍の薬であるレバミピド(商品名:ムコスタ)だ。なぜ、胃炎・胃潰瘍の薬であるレバミピドが口腔粘膜炎に効くのか。「口内炎と胃炎は同じ粘膜の炎症ですから、レバミピドが胃にも口の中にも効くのはある意味当然と言えます」と阿南氏は説明する。

 レバミピドは、副作用がほとんどなく、安価であることも利点の一つという。また、レバミピドには、粘膜を保護することの他に、炎症を誘発する活性酸素、TNF-α、インターロイキン-1の増加を抑える作用がある。前回も触れたように、抗がん剤投与や放射線治療によって、これらの生理活性物質が発生するわけだが、薬でそういった物質の生成を抑えれば、口の中の粘膜の炎症も軽減できるわけだ。

レバミピドの服用で化学療法後の口腔粘膜炎が減った

悪性リンパ腫で化学療法を受けた73人(平均年齢68歳)のうち、レバミピド服用群(39人)で口内炎の発症率が低かった(データ提供:阿南氏)

 市立堺病院では、2003年から2008年までに、化学療法(抗がん剤)のCHOP(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)、またはR-CHOP(リツキシマブ+CHOP)を受けた悪性リンパ腫の患者73人を対象に、レバミピドの効果について調査を行った。抗がん剤の投与中にレバミピド100mgを1日3回内服した群では、口腔粘膜炎の発症率は15.4%であったのに対して非投与群では同41.2%と、レバミピド投与群のほうが、有意に発症率が低かった(グラフ)。

 また、乳がんで化学療法のFEC100(5-FU+エピルビシン+シクロホスファミド)を受けた患者でも、レバミピドの内服で、口腔粘膜炎の予防や症状の軽減が可能なことが確認できたという。

 口腔粘膜炎になった人の二人に一人が、抗がん剤の投与スケジュールや投与量を変更しているとの報告もある。抗がん剤や放射線による治療の恩恵を最大限に受けるためにも、口腔ケア、十分な水分摂取、そしてレバピミドの予防投与などで、すべての粘膜の炎症や感染症を事前に防ぐことが大切だ。

(福島 安紀=医療ライター)

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