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レポート

2009/8/25

米国でアドボカシー・トレーニングを体験(最終回)

まとめ:愛する人に同じ思いをさせないために

 日本イーライリリーの患者支援プロジェクトとして、5月2日から4日の4日間、ワシントンDCで開かれた米国乳がん連合基金(NBCCF)の「アドボカシー・トレーニング・カンファレンス」を取材した。4日間の取材を通じて、一人のサバイバー(がん経験者)として感じたことを、総括したい。


あらためて・・・アドボカシーって何だろう?
議員会館の前には様々なアドボケートが列をつくる
議員会館の前には様々なアドボケートが列をつくる

 インターネットでアドボカシーの定義を調べると――。アドボカシーとは、本来「擁護」や「支持」「唱道」などの意味を持つ言葉で、日本では近年、「政策提言」や「権利擁護」の意味で用いられるようになっている。またアドボカシーを、「社会問題に対処するために政府や自治体及びそれに準ずる機関に影響をもたらし、公共政策の形成及び変容を促すことを目的とした活動である」と定義する専門家もいる。 ロビイング活動そのものや、そこにいたる代弁・弁護活動までも含めたものをアドボカシーとする考え方もある(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から抜粋)。

熱心にメモをとる参加者たち
熱心にメモをとる参加者たち

 こう書くと、とっても難しそうに見える。でも私は、今回の取材を通じて、もっとシンプルに考えることにした。アドボカシーは「体験者の声を社会に届け、みんなで未来を描く行動」。

 「トレーニングを受けた患者が政策提言の場に立つことができる」というNBCCFの考え方は十分に理解できる。だけど、誰もがみんな患者会に入っているわけではない。公民権運動に対する日米の土壌の違いも大きい。そもそも「アドボカシー」という言葉の響き自体が身近ではない。

 ただ、少なくとも政策決定の場に参画していく患者は、表2のような視点を持ってのぞむことが大切だ。これは4日間のカンファレンスの取材を通じて私が感じたこと。

もう同じ思いを、させたくない
 今回の取材を通じて、大きく反省をしたことが一つある。それは、私には「これからがんになる人たち」への視点が欠けていたということだ。がん罹患と就労の問題やドラッグ・ラグ、ワクチン・ラグの問題にしても、私は「先に逝った仲間への想い」や「今、がんとともに生きている人」あるいは「将来の自分」のために議論をしていた。

チーム・テキサスの仲間と
チーム・テキサスの仲間と

 でも、NBCCFは「自分たちと同じ思いを、後に続く人たちにさせたくない」この未来のためだけに、サバイバー15年生や20年生、遺族、支援者、みんなが一つになって動いていた。私も、乳がんになるまでは医療に対して無関心だった。実際に自分が体験をして、初めて様々な問題があることに気付かされた。それでも、まだまだ勉強が足りない部分がたくさんある。医療や福祉への関心は、自分や身近な人が当事者になって初めて気付くのではないだろうか?

 患者には義務と権利がある。そして、当事者の体験にはとても大きな価値がある。私たち体験者には、先立った仲間の命のバトンを継承し、様々な立場の人とともに未来を描く義務がある。NBCCFのカンファレンスを取材して、私はそう強く感じた。

 「愛する人に同じ思いをさせないために」これは未来へつなげる命のバトンだ。

飛行場で買ったスペアミント
飛行場で買ったスペアミント

 テキサス州サンアントニオでは、年末に乳がんシンポジウムを開催している。今年は難しいかもしれないけれど、来年、体調が良ければランス・アームストロング財団のボランティア・トレーニングとセットで参加しようと企んでいる。このことは、一緒にロビー活動を行ったサンディにも伝えた。

 「今年は難しいかもしれない。でも、来年はきっと行くよ!」「私たちはいつでもナオミを待っているわ!」。テキサスと別れ、私は帰国の途へついた。たくさんの人と巡り合えて、渡米前に抱いていた不安はすっかりと消え、心には温かいものが残った。

 過去は変えられなくても未来は私たちの手で創ることができる。だから忘れてはならない、夢を描くことを。信じることの大切さを。そう、いつだって、Yes We Can!

表1:NBCCSから学んだこと

 貴重なカンファレンスを取材する機会をくださった日本イーライリリー様。本当にありがとうございます。取材を通じて多くの気付きを得ました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

〜追想:清志郎の死に想う がんは生き方の選択である〜

 滞在中、ウェブのニュースで忌野清志郎さんの死を知った。涙が止まらなかった。2008年2月に開かれた完全復活祭。ステージ背後の大型スクリーンには、抗がん剤で脱毛し、照れくさそうに笑う姿、段々と毛が伸びていく様子、自転車へまたがる姿が次々と映し出された。治療中の自分の姿と重なり、幕が開く前から涙が止まらなかった。

表2:私の気づき「患者会の役割」

 「あ〜、よく寝た!」の画面と同時にキング(清志郎)が登場。全身でシャウトする清志郎の姿に心の底から感動した。

 私は、がんは生き方を考える病だと思っている。

 彼の病期や病理がどういうものだったかは知らない。彼がどこまで自分の病気を理解していたのかも知らない。でも彼は、自分の生き方を選んだ。あっぱれだと思う。

 キングのブルースは今も私の心の中に流れている。そして、私のブルースも流れている。腰への転移が判明した後、ウェブサイトで彼からメッセージが送られた。「もう一度言おう、夢を忘れないで」。ありがとう、清志郎。私も未来を描こう。

●著者プロフィール
桜井 なおみ
NPO法人HOPEプロジェクト理事長。2004年夏、30代でがんの診断を受け、手術、化学療法。2007年再手術。2006年子育て世代の小児がん・若年性がん患者支援の会(ボタニカルキッズクラブ)を始動。設立1年を契機に法人化、現在に至る。人間力大賞2008会頭特別賞受賞など。

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