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レポート

2009/8/4

乳癌学会 2009で発表

がん転移検出の精度を上げる「PET-CT」とは

 全身がくまなく検索できる診断機器「PET」は、転移が疑われるもののどこに転移巣があるのかわからないケースにおいて、遠隔転移や再発、重複がんの診断に力を発揮する。近年は、このPETにCTを組み合わせた「PET-CT」という装置が急速に普及し、診断の精度が上がっているという。

写真1:PETとCTを融合すると病巣がわかりやすくなる(画像提供:京都大学の中本裕士氏)

 PET-CTは、病巣の部位や広がりを調べるPET(ポジトロン放射断層撮影装置)と、病巣の場所を示すCT(コンピューター断層撮影装置)の融合画像を表示できる装置。この5年ほどで急速に設置が進んでいる。2009年は、PET全体の設置台数約400台のうち7割程度をPET-CTが占める見込みだ。

 PETによるがんの検査では、放射線を出すフッ素を結合させたブドウ糖、フルオロデオキシグルコース(以下FDG)を注射し、このFDGを大量に取り込む細胞を画像上で検索する。一般にがん細胞は、正常細胞よりも代謝が活発になっているため、糖の取り込みが多いという生物学的な特性を生かした検査法で、FDGの集積の様子を見れば腫瘍の場所が検索できる。

 これに、臓器やリンパ節の位置を画像化するCTを組み合わせたPET-CTによって、PETのみ、あるいはCTのみでは判別しにくかった病巣の有無や位置、大きさなどの検出精度が上がるというわけだ(写真1)。

腋窩以外のリンパ節転移の発見に有効
 7月3日から4日に東京で開催された第17回日本乳癌学会学術総会のランチョンセミナーでは、国際医療福祉大学三田病院乳腺センター長の吉本賢隆氏と、京都大学医学部附属病院放射線診断科助教の中本裕士氏が、PET-CTの乳がん治療における臨床的有用性について報告した。

写真2:PET-CTで対側がんを検出(画像提供:京都大学の中本裕士氏)

 吉本氏は2006年10月からの原発性乳がん患者73人と再発乳がん患者165人に対して実施したPET-CTの臨床データを検討。その結果、これまで診断が難しかった胸骨傍リンパ節や鎖骨上リンパ節など、腋窩以外のリンパ節への転移や、骨や肺などへの遠隔転移、甲状腺がんや対側がんといった潜在がんの検出に有効だったという(写真2)。

 吉本氏は「腋窩以外のリンパ節への転移を17例検出。特にこれまでは検出が難しかった胸骨傍リンパ節転移を9例確認できた。また、骨や肺などへの遠隔転移は14例、潜在がんを8例確認した。これらは、一度に全身をスキャンできるPET-CTの特性によるといえるだろう」と話した。

病巣発見後の治療選択にも有用
 また吉本氏は、PET-CTによる画像が、病巣発見後の治療法の選択につながる利点を次のように語った。「胸壁再発の場合、病巣が局限性と診断できて胸壁合併切除の外科治療を行った症例では、10年後の生存率が45%と多数の長期治癒例が見られる。PET-CTの活用で胸壁再発を正しく診断できることは、外科治療の適応の正しい診断につながる。PET-CTは再発治療の選択決定にも有効だ」。

 一方、「まだエビデンスが確立しているわけではないものの、今後は治療効果判定や予後予測などにもPET-CTが活用できるだろうという報告が増えている」と中本氏。ただし、骨髄移植時の治療薬であるG-CSFの投与や化学療法などの治療を行っている場合には、それにより画像が修飾を受けるので、治療効果判定のためには治療後最低3週間は空けた上で検査する必要があるとした。また、「糖尿病患者でインスリンを投与している場合も、薬の影響で骨格筋や心筋での糖の取り込みが高まるので、検査の際にはインスリン値を把握することが必要」(中本氏)とした。

 このほか両氏は、PET-CT診断の留意点として次のことを挙げた。一つは、PETの空間分解能では、微小ガンや微小転移の診断能に限界があるということだ。また、甲状腺炎や結核種などの炎症や、良性腫瘍、褐色脂肪細胞に対しては、取り込みが増して偽陽性を示すので、注意が必要だとした。逆に、1cm以下の小腫瘤や高分化がん、小葉がんなどは偽陰性になりやすいという。

 中本氏は、こうした非特異的な取り込みによる偽陽性を避けるためにも、今後は、よりがんに特異的な薬剤の開発や、高分解能で高感度のPET装置「PETマンモグラフィー」の開発が望まれると話した。その上で、特異的な薬剤の一例として、細胞分裂の際に代謝が活発になる「核酸」の代謝亢進を画像化するためのFLT(フルオロチミジン)の利用などを挙げた。(武田 京子=医療ライター)

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