このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2009/7/21

国立がんセンターが試作版を公開

患者向けガイド「患者必携」は“必携”か

 国立がんセンターがん対策情報センター作の冊子群「患者必携」の試作版が完成した。その内容紹介と、全国の患者や家族、支援者からの意見を収集する第一歩として7月11日、同センター内にある国際研究交流会館で市民向け講演会「がんになったら手にとるガイド〜がん『患者必携』〜」が開催された。北海道から大分まで18カ所の会場とテレビ会議システムで中継を結び、全国から600人余りが参加。患者必携に対する反応は?

「患者必携」は「がんになったら手にとるガイド」、「わたしの療養手帳」、「地域の療養情報」の3種類の冊子で構成される

 「患者が得られる情報に差が生じないように」。2007年、国のがん対策推進基本計画を策定する中で、患者委員たちから出た要望を受け、患者必携の作成・配布が決まったのが約2年前。がんと診断されたすべての人々に患者必携を届けて、よりよい療養生活を送ってもらうことを目指し、がん患者が必要とする情報やアドバイスを取りまとめている。

 試作版は、(1)がんの診断や治療、ケア、費用、心の問題、療養生活などの情報をまとめた「がんになったら手にとるガイド」(A4判・254ページ)、(2)自分の情報を書き込める「わたしの療養手帳」(A5判・70ページ)、(3)地域の情報を集めた「地域の療養情報」(今回は、栃木、茨城、静岡、愛媛の各県版を作成)から構成される(写真)。読むだけではなく、調べたり、書き留めたり、整理したり――と、受身の情報収集のみならず、「行動を起こすこと」につながる工夫が随所に見られるのが特徴の一つといえるだろう。

 がん対策情報センターでは、がん医療に携わる専門家の協力のもと、患者や家族で構成する「患者・市民パネル」によるレビュー(原稿チェック)も受けながら、約1年がかりで試作版を完成させたという。

「医師がちゃんと説明しなくなる?」不安の声も
 講演会では、読売新聞東京本社社会保障部記者でがん対策推進協議会委員や患者・市民パネルを務める本田麻由美氏、栃木県立がんセンター病院長の清水秀昭氏、がん対策情報センターがん医療情報サービス室長の渡邊清高氏ら、作成にかかわった関係者が内容の解説や使い方のアドバイスを行った。その後、テレビ会議システムを用いて、各会場の参加者からの質問を受ける形で進められた(写真)。

講演会後半の全体討議・質疑応答では、全国18カ所の会場からさまざまな質問や意見、要望が寄せられた

 講演の中では、患者必携の活用法の一つとして“医師と患者の対話のツール”になることが強調された。しかし参加者からは「患者必携を読めばよいということになり、医師の説明が不足するのではないか」、「どのように医師と対話すればよいのかわからない」といった不安の声が挙がった。

 これらに対し本田氏は「乳がんなどの一般向け診療ガイドラインが作成されたときも同じ心配をする患者さんがいた。しかし、診療ガイドラインも患者必携も一般的なことを書いたものなので、医師との会話の中で『自分の場合はどうなのか』ということを確認する作業が必要になる。もしも医師から『患者必携を読んでおいて』と言われたら『私の場合はどうなのかが書かれていないのですが』と返し、会話を弾ませるツールとして使おう」とアドバイスした。

書き込む作業が病気の理解を深める一助に
 清水氏も医療者の立場から、患者必携は病状説明や告知に代わるものではなく、「医療者との対話があることが大前提」と強調したうえで、「冊子を読んだだけで内容を全て理解することは難しい。がん診療拠点病院である当院では相談支援センターのスタッフが説明のサポートを行う仕組みを考えている。そうした人的資源も利用してほしい」と述べた。

 また、「わたしの療養手帳」については「患者によっては、自分の情報を書き込むのが難しいのではないか」という意見も少なくなかった。渡邊氏は「すべての項目を埋める必要はなく、医師から聞いた情報を項目ごとに当てはめていくだけでもかまわない」と、自分なりに情報を整理し、病気の理解を深める手段に使ってほしいと強調した。そして「場合によっては白紙のほうが書きやすいという意見もあるだろう。実際に使っていただいて改善すべき点はご意見をください」と参加者に呼びかけた。

 さらに、各会場の参加者からは「再発・転移患者のための別冊や療養手帳もほしい」、「自分が住んでいる県は療養情報を作成する計画はないのか」、「5年生存率という意味がよくわからない。用語集を充実させてほしい」、「親や子どもに自分の病状をどのように伝えるのかという情報もあったほうがよい」、「患者必携の使い方を学べる場をつくることも必要だ」など、さまざまな意見や要望が相次いだ。

患者の声で患者必携を“育てよう”
 がん対策情報センターでは、このような患者や家族の率直な意見をもとに患者必携の内容を検討・改訂し、平成22年度以降に最終版を完成させる計画だ。地域を限定して、試験配布を行い、実際に使用した患者の評価を受ける。同時に同センターのホームページ「がん情報サービス」でも、患者必携の試作版を公開し、意見募集やアンケートを実施している。

 講演会の終盤、患者の一人として作成にかかわった本田氏は「患者必携の作成には、多くの患者・市民パネルが参加しているが、その意見や要望が十分に反映されているとは言い難い。より役立つものにするには“患者や家族の声で患者必携を育てる”体制が必要で、がん対策情報センターには、そのようなコーディネートも期待したい」と述べた。

 完成版の患者必携は、がん診療拠点病院を介して患者に配布されることが想定されるが、どのくらいの規模で、どこから配布されるのかなど、詳細は未定だ。今後、国のがん対策推進協議会での検討なども踏まえて決定される。

 「がんになったとき患者が困らないように」、「患者が得られる情報に差が生じないように」患者必携の目的がきちんと果たされるよう、普及の手段についても注目していきたい。「患者必携試作版へのご意見募集」についてはこちら。(渡辺 千鶴=医療ライター)

この記事を友達に伝える印刷用ページ