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レポート

2009/7/14

米国でアドボカシー・トレーニングを体験(No.2)

NBCCFカンファレンス初日:ハードスケジュールにびっくり!

 日本イーライリリーの患者支援プロジェクトとして、5月2日から4日の4日間、ワシントンDCで開かれた米国乳がん連合基金(NBCCF)の「アドボカシー・トレーニング・カンファレンス」を、サバイバー(がん経験者)歴4年の私、桜井なおみが取材した。 NBCCFは、全米の草の根的な乳がん患者会が集まった連合体。「医療政策に最も影響がある組織ベスト25ランキング」で20位に入る組織だ。小さな組織が一つにまとまることで勝ちとってきた彼女たちの成果は? 


 さて今日はカンファレンスの初日。カンファレンスの会場で名刺交換をすると、本当に全て違う患者会!「よくぞ、これだけのグループをまとめあげたな〜」と感心してしまった。

過去最高の約800人が参加
 今年のカンファレンスは講師やスタッフも含め、総勢約800人が参加した。米国内の43州から、海外からも12カ国が参加という、NBCCF史上最大規模のカンファレンスになった。

スケジュールびっちりに、おもわずため息

スケジュールびっちりに、おもわずため息

 受付を済ませると、今年の共通講義やワークショップのスケジュール、講演内容、会議の部屋などが書かれた資料が渡される。覚悟はしていたけど、恐る恐る中をみると、「休憩時間がない!ない!ない! どこにもな〜〜〜い!!」

 朝の8時から夕方は5時過ぎまで、定例会議やワークショップが連日ぎっちり。会議嫌いの私には、考えられない超ハードスケジュールだ。しかも、夜は夜で、ボーリング大会やら映画やら、イベントは続く、続くよ、どこまでも♪

 「タフだわこの人たち・・・一体何者なの?」。

アドボカシーって何?

 夜のスケジュールはさておき、このハードなトレーニングは「政策提言の場には、きちんとした患者教育を受けた者が参加すべし」というNBCCFの考えに基づいている。

 まだまだ日本では馴染みがないアドボカシーという言葉には、今一つピンときていない人も多いと思う。私は「アドボカシー」という言葉を「患者の声を社会に届ける活動」とシンプルに考えたい。これは、私たち体験者ができることだし、体験者の役目だとも思う。

 NBCCFでは、トレーニングを受けた患者が主体となり、組織的にこうした活動を行っている。「乳がんの撲滅」という一つのミッションの下、乳がん医療の発展に関してNBCCFが果たした役割はとても大きい。まさに患者の声で医療政策が動いている(表2)。

3人に1人は初参加

 「初めてロビー活動に参加する人は手を挙げて!」大歓声とともにたくさんの手が挙がる。総勢約800人のうち278人、つまり3人に1人は初参加組だ。これは意外な驚きだった。というのも、ロビー活動をしたり4日間のトレーニングに参加するような人たちなのだから、ここに集う人は“常連さん”かつ、患者会、患者の“エリート集団”、そんなイメージを私は持っていた。「参加者の意識が高い」とも聞いていたし。でも、実態は全く違った。みんな「意識が高い」のではなく、4日間のトレーニングで「高める」、「高まる」のだ。

 参加者の職種も様々だ。もちろん大部分が乳がん体験者だが、私が出会っただけでも、看護師、ソーシャルワーカー、医療ライター、薬剤師、臨床心理士、遺族や家族。この多様さや、常に新しい何かを吸収しようという思いが、モチベーションの維持や新しい気付きを生み出し、次の活動の原動力になっているようだ。

 NBCCFからはこんなメッセージが届けられる。「トレーニングに参加した後は、自分の街で何ができるかを考えて。そして学んだことを生かして!」。草の根運動の原点をみた気がした。

病気になったことには意味がある

初めての参加者は手を上げて〜!「は〜い!」

初めての参加者は手を上げて〜!「は〜い!」

 NBCCFの代表を務めるフラン・ビスコさん。彼女は、今から21年前、1歳2カ月の息子さんを抱え、法律事務所で働いていたときに乳がんの診断を受けたサバイバーだ。

 乳がんについてはほとんど何も知らなかった一人の女性が、地元の乳がん患者団体に参加し、仲間との対話を通じ1991年に6人のメンバーで、NBCCFの姉妹組織であるNBCC(米国乳がん連合)を設立し、わずか18年で全米をまとめ上げた。

 「一体、どんな人なんだろう?」わくわくしながら、初めて彼女の演説を聴いた感想は「さっすが弁護士!話がうまいわ!」。そう、彼女の演説は論理的で、なおかつ私が理解できるほどわかりやすい英語なのだ。

 特にその表現テクニックのすごさ! 情感をたっぷりこめながら「プリーズ、プリーズ」、「ベェリー、ベェリー」。オバマ大統領も顔負けの演説だ。でも、彼女の演説を聞くうちに、私はあることに気づいた。「違う、話のテクニックだけじゃない」。

フラン・ビスコさん

フラン・ビスコさん

 彼女の演説は、まず周囲への敬意と感謝を表すことから始まる。自分の話は一切なし。そして、彼女の言葉は実体験から生まれた信念だ。借りてきた言葉はない。「だから人に彼女の心や情熱が伝わるんだ」。

もし彼女が乳がんにならなかったら、NBCCもNBCCFも存在しなかったかもしれない。彼女が病気になったことには意味がある。そして、彼女も体験者としての役目を果たしている。そう思わずにはいられなかった。

●著者プロフィール
桜井 なおみ
NPO法人HOPEプロジェクト理事長。2004年夏、30代でがんの診断を受け、手術、化学療法。2007年再手術。2006年子育て世代の小児がん・若年性がん患者支援の会(ボタニカルキッズクラブ)を始動。設立1年を契機に法人化、現在に至る。人間力大賞2008会頭特別賞受賞など。

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