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2009/7/14

10月開催の日本癌治療学会に注目

がん患者や支援者に開かれた学会を実現へ

 学会に参加したいがん患者や支援者の参加費を免除、交通費、宿泊費の助成。患者会のブース設営、患者とのコラボでシンポジウム開催――。10月22日から24日に横浜で開催される第47回日本癌治療学会学術集会は、いつもの学術集会とはちょっと様子が違うようだ。

学会長を務める岩手医科大学医学部産婦人科教授の杉山徹氏

 医学・医療分野の学会が開催する学術集会といえば、参加者のほとんどは医師で、看護師をはじめとするコメディカル向けのセッションがちらほらあるくらい、といったところだろう。そんな現況の中、がん関連では国内最大級の学会である日本癌治療学会は、今年の学術集会を「がん患者や支援者に開かれたもの」とするため、着々と準備を進めている。

 取り組みの目玉は、がん患者や支援者を学術集会に招待する「スカラーシッププログラム」だ。がん患者や支援者の参加費を免除し、交通費や宿泊費を助成する。日本の医学系の学会では初の試みとなる。

 応募資格は、がん患者団体や支援団体に所属する人や、国や都道府県のがん対策推進協議会の参加者など。選考を経た50人のがん患者や支援者を招待する。

 対象の50人は、学術集会で実施されるセッションの聴講が可能だ。専用のラウンジも用意される。ラウンジの半分は軽食や飲料を備えた休憩用のスペースで、残りの半分は講演会用のシアターになる見込み。シアターでは、がん治療の専門家が患者向けのセミナーなどを行う。

 ラウンジには、LAN環境を整えたパソコンが数台設置されるので、得られた情報をその場で発信することも可能だ。さらには、患者会などの取り組みを医療者に知ってもらうための展示ブースも出展できる。

医師+患者+行政でシンポジウム開催
 同学会の新たな取り組みは、スカラーシッププログラムだけに留まらない。三つある特別企画シンポジウムの一つを「がん患者中心の医療」と題し、患者会の代表者らとともに準備を進めている(下写真)。がん治療のあるべき姿とがん対策について、医療者(学会)と患者、家族、患者会はどのような点で協業できるのかを議論するという。

左から杉山氏、グループ・ネクサス理事長の天野慎介氏、がんと共に生きる会副会長の海辺陽子氏、埴岡氏。シンポジウムやアンケートの内容を検討中。

 具体的には、(1)がんおよびがん対策の現況と診療の可視化、(2)現場スタッフの確保の問題、(3)医療連携(がん難民の解消)、(4)医療費不足問題について――という四つのテーマについて話し合う。

 シンポジウムへの登壇は、患者や支援者から3人、医療者3人、行政から1人を予定する。「立場は違うものの、がん医療を良くしたいという思いは同じはず。お互い意見を出し合って、質の高い医療を実現するための体制の充実と環境整備のために、お互いできるところからとりくんでいこう、という共同宣言を出したい」と、シンポジウムの座長を務める日本医療政策機構がん政策情報センターのセンター長を務める埴岡健一氏は話す。

 シンポジウムを前に、学会会員の医師らには事前にアンケート調査を行い、診療現場の問題点を洗い出す。「がん対策基本法の施行によって現場では何か変わったか」「診療報酬の改定に向けて資源投入してほしいことは」「この数年でどのくらい忙しくなったか」−−。現場の実態を浮き彫りにするところから、議論を始める考えだ。

患者との協業は医療者への啓発でもある
 さて、こうした学会の取り組みについて、現場の医師らはどう思っているのだろうか。今回会長を務める岩手医科大学医学部産婦人科教授の杉山徹氏は「2割はおもしろい、支援したいと思っていて、2割は『治療するのは自分たちなのに、なんだそれは』などと良く思っていない。残りの6割はよく分からない、という感じでしょうか。あくまでも私の印象ですが」と話す。

 遺伝子タイプ別の治療、分子標的薬の登場――。がん治療は複雑化、個別化し、様々な選択肢が考えられるようになってきた。医療費の問題も大きい。「患者や家族の理解と協力が得られなければ、がん治療は立ち行かなくなっている。医師が、“あなたにはこの治療です”と提示するような一方通行では、信頼関係をもって治療ができない時代。今回の試みは、医療者への啓発でもある」と杉山氏は強調する。

来年以降の継続は?
 がん患者やその家族を巻き込んでのこうした一連の取り組みは、ASCO(米国臨床腫瘍学会)やECCO(欧州癌治療学会)が手本になった。スカラーシッププログラムや患者会による展示ブース、患者や支援者と医療者の交流の場となるラウンジの設営など、すでに1980年代には始まっていたという。

 海外の学術集会に参加する患者の姿を幾度となく目にしてきた杉山氏は「最初に見たとき、あの人たちは一体何だろう?

 と不思議だったが、いつかは日本でも実現したいという思いに変わってきた」という。「今年がベストなタイミングなのかもしれない」と話すのは埴岡氏。例えば10年前だったら、患者と医療者は「がんを告知する・しない」という大きなテーマを抱えていて、「一緒にがんの医療を変えていこう」という機運は高まらなかったはず、という。もちろん10年後では遅すぎる。

 次なる課題は、来年以降も継続できるのか?ということにある。スカラーシップの費用だけでも500万円程度かかる見込みで、ラウンジやブースの運営費も別途必要だ。企業からの協賛も呼びかけてはいるが、今回の費用はすべて学会の予算から捻出する予定という。「なんとか今年成功させて、来年以降も続けられるようにしたい」と杉山氏は語る。

 スカラーシップの応募締め切りは7月31日。募集要項ほか学術集会について詳しくは第47回日本癌治療学会学術集会参照。(小山 千穂)

注:文中のシンポジウムの内容やアンケート項目などは企画段階の内容のため、一部変更になる場合があります。

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