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レポート

2009/6/23

海外の追跡調査で判明

アスピリンの定期服用で大腸がんの死亡リスクが減る?!

 大腸がんと診断された後にアスピリンを定期的に服用していると、そうではない場合に比べて、大腸がんによる死亡率が約3割低くなる――。海外の追跡試験で、このようなアスピリンの効果が明らかになった。アスピリンは、おなじみの解熱鎮痛薬の一つ。ただし、3カ月以上の服用によって上部消化管出血のリスクが約5倍も高まるとの報告もあり、むやみな服用は当然勧められない。

 アスピリンは、発がんへの関与が指摘されているシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の活性を阻害することで、解熱・鎮痛効果を発揮する。このため、アスピリンを服用するとがんを予防できるのではないかと期待され、これまでに複数の臨床試験が行われた。だが、がん予防に関するアスピリンの役割について、いまだ結論は出ていない。

 2009年5月30日から6月4日まで米国・シカゴで開催された第40回米国消化器学会(米国消化器病週間DDW2009)のプレナリーセッションでは、米国・マサチューセッツ総合病院のAndrew T.Chan氏が、大腸がんとアスピリンとの関連について、新たなデータを発表した。

 Chan氏らは、米国の女性看護師を対象にしたNurses' Health Studyの1976〜2002年の登録者12万1700人分と、米国の男性医療従事者を対象にしたHealth Professionals Follow-up Studyの1986〜2002年の登録者5万1539人分の疫学研究データを基にした。登録者のデータを調べ、ステージIからIIIの大腸がん患者1279人(平均年齢65歳)を登録、2008年まで平均11.8年間追跡した。

大腸がん診断後のアスピリン定期服用で死亡率が約3割低下
 追跡期間中に480人が死亡し、このうち222人が大腸がんによる死亡だった。死亡とアスピリン服用との関連を調べたところ、大腸がんと診断された後でアスピリンを定期的に服用していた場合には、服用していない場合に比べ、大腸がんによる死亡率が29%低かった。すべての原因による死亡率についても、同程度低かった。

 一方、大腸がんと診断される前にアスピリンを定期的に服用していた場合には、大腸がんによる死亡率についても、すべての原因による死亡率についても、服用していない場合との間に目立った差はみられなかった。

 そこで、大腸がんと診断される前にはアスピリンを服用していなかった患者719人を調べたところ、診断後もアスピリンを服用しなかった536人に比べ、診断後にアスピリンを服用し始めた183人では、大腸がんによる死亡率が47%低下していた。

 Chan氏らはまた、体内のシクロオキシゲナーゼの活性状態が評価できた459人について、酵素の活性と大腸がんとの関連を調べた。その結果、酵素の活性が高い314人のうち、アスピリンを定期的に服用していた132人は、服用していなかった182人に比べ、大腸がんによる死亡率が61%低かった。

 これらの結果からChan氏は、「大腸がんと診断された後の定期的なアスピリン服用は、大腸がんによる死亡を低下させる。また、シクロオキシゲナーゼの活性が高い大腸がん患者では、アスピリン服用による死亡率低下効果がより高い可能性がある」と述べた。

アスピリンによる消化管潰瘍や消化管出血に注意
 期待が高まるアスピリンだが、見逃せないマイナス面がある。それが、服用すると高頻度に生じる消化管の潰瘍や出血だ。3カ月以上にわたりアスピリンの服用を続けると、胃や十二指腸から出血を来すリスクが5倍以上高まるとの日本での研究結果がある。

 また最近、小腸に潰瘍が生じる可能性も少なくないことが明らかになってきた。詳しい発生頻度はまだ不明だが、胃にかかる負担が少ないとして広く使用されるようになった腸溶錠というタイプでは、軽度のものも含めると、約半数に小腸粘膜傷害がみられたとの報告もある。

 大腸がんで死亡する危険性を減らすという目的でアスピリンを服用するのは、まだ時期尚早と言えるだろう。(小又 理恵子)

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