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2009/5/26

大腸がん検診で注目度高まる---CTコロノグラフィ体験記

受検者の身体的負担は想像以上になし、検査時間は約10分

 米国で大腸がん検診として普及しつつある仮想内視鏡(バーチャル内視鏡)、もしくは「CTコロノグラフィ」。日本でも、大腸がんの術前検査だけでなく、がん検診として活用する医療機関が徐々に増えつつある。そこで、がんナビでは、仮想内視鏡による大腸がん検診を国内でいち早く開始している国立がんセンター中央病院に、大腸がん検診にふさわしい「妙齢」の中年男性記者(48歳)を送り込み、CTコロノグラフィの体験取材を行った。以下は、その体験記である。




仮想内視鏡とは
仮想内視鏡は、腹部をCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)でスキャンして得られた画像を三次元構築することにより、大腸内をさまざまな角度から画像化し、検査することを可能とした検査法。16列以上のマルチスライスCT(MDCT)ががん検診にも用いられるようになったことで、ここにきて急速に着目を集めるようになった。従来のCTに比べてマルチスライスCTはスキャン速度が速く、短い時間での検査が可能になり、加えて、微細な腸管表面の凹凸を捉える事が可能になったからだ。

 仮想内視鏡の最大の特徴は、内視鏡を肛門から腸の奥まで「挿入する」行為を行わずに、CT検査だけで済む点だろう。内視鏡を挿入しないため腸穿孔のリスクもなく、被検者の負担も小さいといわれている。ただし、CT検査で病変を検出しやすくするため、肛門から腸内にガスを入れる必要があると聞く。ガスの「挿入」がいかなるものか、気になるところだ。

 では、前日の「前処置」から順を追って仮想内視鏡による大腸がん検診の体験を記していこう。

炭酸ガスで腸内を膨張させ、粘膜全体をCTで一望する
 検診前日の「前処置」は検査食(3食:夕食のみ6時前後の時間指定)、バリウムとともに水(600cc×3回:10時頃・17時頃・19時頃)、検査用下剤(20時頃と23時頃)の摂取が時間単位で指定される。検査食と検査用下剤は、通常の内視鏡を用いた検診と同じだ。

 「検診の前日は外食できませんからね」と編集長に念を押されていたため、渡された書面の指示どおりに規則正しく経口物を摂取しながら1日を過ごす。普段は不規則なリズムで職務時間を過ごしているため、時間管理の習慣が身に付いていないからか、仕事にあまり集中できなかった……というのが前処置の感想だ(あくまで個人的な事由だが)。

 バリウムを得意と自負する私にとっては、3回のバリウムは苦にならなかったが、これは個人差があるものだろう。バリウムが苦手な方には3回は辛いかもしれない。

仮想内視鏡検査をしてくださった飯沼元先生
仮想内視鏡検査をしてくださった飯沼元先生(日経メディカル2月号より)

 さて、検査当日。念には念を入れて大腸を空にして、自宅を後にする。国立がんセンター中央病院に到着後、診ていただく飯沼元先生(放射線グループ 画像診断 消化管X線診断医長、がん予防・検診研究センター併任)と挨拶。飯沼先生は凛とした口調で「本当に、あっという間ですから。さぁ、着替えたら検査室に入ってください」。通常では前にある開口部が後ろに位置する検査用パンツを履き、その上着の後ろ裾の丈を気にしながら、いそいそと検査室へ。

 すぐさまベッドに横たわり、検査に適した体位の位置調整をした後、横ばいに。さてさて、いよいよ仮想内視鏡検査が始まる。編集長から事前に「炭酸ガスをお尻から大腸に注入してCTを何度か往復するだけよ」と、まるで他人事のように、子どもをあやすかの如く諭されたものの、当の本人は「だけよ」ではすまされず、「ガス注入器の挿入時に妙な不快感や違和感はないのか?」「お腹が妊婦さんの如くパンパンに膨らんで強い痛みも伴うのでは?」「肛門括約筋が炭酸ガスの圧力に負けて放屁のようにガスを漏らしてしまうのでは?」といったさまざまな不安が頭をよぎる。

一定圧でガスを注入する自動炭酸ガス注入器
一定圧でガスを注入する自動炭酸ガス注入器

 炭酸ガス注入器が挿入された瞬間は、「あ、入ってきたな〜」といったくらいの感覚で、それ以上に不愉快な感覚や痛みはない。注入器はわずかな異物感を感じる程度で止まり、ガスが送り込まれ始める。徐々にお腹が膨らむ感覚が伝わってくるが、「苦しい」と訴えるほどの感じではない。

 「では、検査を始めま〜す」という飯沼先生のアナウンスが終わると、腹ばいで2回、仰向けで2回、CTの輪を往復した。先生の「はい、終わりで〜す」の声にて無事に検査は終了。何とも簡便だったため、あっけにとられる。検査室に入って検査終了まで、10分も要しただろうか?(時計で計ったたわけではないので、あくまで感覚的なもの)。

 ガスを注入されCTを往復する際に感じたことといえば、仰向けになったときにだけ腹部の膨満感をやや強く感じ、数カ所にチクチクとした軽い痛みを伴ったことくらいか。痛みといっても我慢を強いられるほどの苦痛ではない。

吸収速度が空気と比べて130倍の炭酸ガスが、受検者の負担を軽くする
 CTスキャン後、読影終了まで要する時間は15分ほどという。その間に、飯沼先生に受診の感想をお話しするとともに、取材も行う。

記者:あっという間に検査が終わってしまいましたが、時間的にはどのくらいですか?
飯沼:1人あたり10数分で、1時間に5人のペースで検査できます。

記者:前処置として数回に分けて多くのバリウムを飲むのはなぜでしょうか。
飯沼:バリウムは、便とポリープをはっきりと鑑別させるために飲んでいただきます。腹臥(腹ばい)と仰臥(仰向け)に臥位(体位)をかえることでバリウムが(腸内を)移動し、2つの画像を比較することで病変を見つける精度が高まります。

記者:なぜ腸内に炭酸ガスを送り込んで撮影するのですか?
飯沼:以前は手動で空気を送り込んでいましたが、空気圧が一定せずに腹部に痛みを伴ったり、検査後も膨満感と痛みが消えずに多くの受検者に負担を与えていました。炭酸ガスは空気と比べて吸収速度が130倍と速く、しかも自動で一定圧のガスを注入できる機器が登場しましたので、それを使えば、飛躍的に受検者の負担が軽くなりました。


見つかった下行結腸のポリープ

 と、素朴な疑問が解けたところで、立ち会った技師の方が、読影準備が整ったことを伝える。「ありましたか。では、画像を見に行きましょう」と、笑顔で別室の読影室へと促す飯沼先生。

 「え、ありましたって、病変……?」と内心、狼狽える記者。

人的読影を支援する病変検出コンピュータ・システムも
 読影室に入ると、モニタ−に映る3D画像をくるくると回転させながら淡々と飯沼先生が診断を始める。「2つほど、疑われるポリープがありますね。1つは、S状結腸に8mmほど。もうひとつは、下行結腸に10mm(右上の写真)ほど。こちらは、やや問題ありかな。でも、良性ですから心配しないで。折角だから近いうちに、内視鏡でなくしちゃいましょう」と優しいお言葉。

 続いて、CTコロノ検査から得られた画像を解析し、大腸に存在するポリープを病変の疑いのある部位として検出するソフトウェア(開発元:メディックサイト)で映し出された腸内の様子を再び観察する(右下の写真)。


  「ほら、しっかりとポリープが検出されているでしょう」と、飯沼先生。このソフトウエアは、「5mm以上の病変の検出感度は、経験豊富な読影者と同等の有効性があるため、検診、内視鏡検査や手術をより効果的に支援するシステム」(メディックサイト)だという。また、内視鏡では死角となりやすい腸のヒダの裏側にある病変を検出することも可能ということだ。この病変候補部を検出するCADを使用することで、見落としを防止する効果もあるという。

病変の位置が断面でわかるため、施術の際に位置を特定できる

病変の位置が断面でわかるため、施術の際に位置を特定できる

 ひと通り、仮想内視鏡受診、読影結果の診断、解析・検出ソフトの結果映像を見終わっての感想は……と問われると、まずその検査時間の早さと不快感や痛みが皆無に近いことを実感したと即座に答える。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)をすでに5回も受診した経験のある記者にとって、あの不快感や苦痛は忘れようにも忘れられない。仮想内視鏡とは雲泥の差だ(大腸内視鏡が未経験なのが、今となっては残念?)。

 今回、幸いにも飯沼先生のご指導のもと、深刻には至らないポリープが発見できたのは、この体験取材のお陰である。

 がんセンターを後にして、「受診者の1人として、検査の簡便さと身体的な負担の少なさが広く認知され、今後、国内でも仮想内視鏡が大腸がん検診の選択肢の一つとなることを期待したい」との文言で原稿をまとめようと考えているときには、すでに炭酸ガスはすべて吸収され、膨満感の名残も全くなくなっていた。

(取材:井関 清経)

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