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レポート

2009/5/12

再発がんを生きる−あけぼの千葉の小倉恒子さん(上)

再発患者に関する情報は不足している

今年1月に『乳がんの女医が贈る 乳がんが再発した人の明るい処方箋』(主婦の友社)を出版した小倉恒子さんは、34歳で乳がんになり左乳房を切除する手術を受けた。13年後の2000年に再発、2005年には再々発し多発性骨転移、多発性腹腔内リンパ節転移、肺転移。2007年には全身転移が発覚したが、いまも抗がん剤治療を受けながら、現役の耳鼻咽喉科医として毎日患者を診察し、趣味のソシアルダンスも楽しむ。


小倉恒子さん

小倉恒子さん

 私が、『乳がんの女医が贈る 乳がんが再発した人の明るい処方箋』を書いたのは、再発した人のための治療や副作用への対処法などの情報があまりにも少ないと実感していたからです。有名な乳腺外科医の書いた本を読んでも、再発した人のための情報は少ししかありません。患者会でさえ、再発者のために何かをやる機会は少ないんですね。

 『乳癌治療ガイドライン』にも再発治療に関してはちょこっとしか書いてありません。乳がんの場合、再発治療も初発の治療と同じように、ホルモン依存性かHER2陽性かどうかで治療の選択肢が異なります。

 そういう意味では、再発治療でも、ある程度標準治療があるのは、ファーストライン、セカンドラインぐらいまでで、再々発や再々再発、全身転移を起こしたりすると、医師によって治療の内容は違います。ある意味、良い医師にめぐり合えるかどうかで、命の長さや、がんと共存しながらも何とか自分のやりたいことをやりながら生きられるかどうかが変わってきてしまうのです。

 また、今回、再発の人向けの本を書いたのは、再発、再々発、全身転移を経験してきた私だからこそ、がんと一緒に生きるためのヒントとなる情報が伝えられると考えたからでもあります。特に抗がん剤治療は、副作用がつらいので、続けようという気になれない人もいます。過去には、毛が抜けるだけで嫌だからと抗がん剤治療を受けずに亡くなった人もいました。でも、抗がん剤の副作用が出てもメイクを工夫しかつらを利用すれば、おしゃれも楽しめます。

 今回の本で、あえて表紙の裏に、抗がん剤の副作用で髪が抜けて色素沈着もある素顔をさらし、メイクアップの方法を写真入りで載せたのは、こういう姿になっても、これだけおしゃれはできます、だから抗がん剤を受けて残りの人生を楽しみましょうと伝えたかったからです。

がん難民にならないようにするには
 がんの専門病院であっても、セカンドラインぐらいで治療がうまくいかないと、「もうこの病院でできる治療はありません」などと言われてしまう場合があります。それががん専門病院だと、もう治療法はないんだとあきらめてがん難民になってしまう人もいますが、再発治療に熱心な医師のところへ行けばまだできる治療があるかもしれません。がんの種類によっては、再発してかなり進行すると治療法がない場合もありますが、本当に全部の抗がん剤を試したのか、本当にできる治療はないのか、確かめてほしいと思います。

 私もいま治療を受けている腫瘍内科医にめぐり合うまで、いくつか病院を替わりました。頼りにしていた先生がある日突然診療所に来なくなって、途方に暮れたこともあります。でも、主治医になった人とドーンとぶつかったりしても、それじゃあこっちおいでよと言ってくれる先生がいて、何とか治療を続けてこられました。再発治療をしてくれる医師は絶対いると思って探すしかありません。

 医師を探すとき気をつけてほしいのはインターネットの情報です。再発治療をしてくれる医師をインターネットで探すのはほとんど無理だと思ったほうがいい。インターネットは情報を得るのに便利なツールですが、ネット上の情報がすべて正しいとは限りません。

 それどころか、ただ抗がん剤を検索しただけでも、効果がきちんと証明されていない高価な代替治療が上位に挙がって来てしまいます。ネットで再発治療をしてくれる医師を探そうとすると、高価な代替治療のほうへ流れていってしまう危険性があります。そういった代替治療には、効果が科学的に証明されているものはありません。高価なサプリメントなどで、肝機能を悪くすれば、抗がん剤治療を受けられなくなる危険もあります。

 では、ずっとみてもらっていた病院でもう治療がないといわれたとき、どうやって再発治療をしてくれる医師を探すかですが、患者会や病院のがん相談窓口(がん診療連携拠点病院の相談支援センターなど)を利用するのが一番だと思います。私は、がんの手術を受けてすぐに、乳がん患者会のあけぼの会に入会し、いまも「あけぼの千葉」で活動を続けています。一般的に、患者会は顧問医というのを作って勉強会を開いていますから、患者会に問い合わせればそういった先生を紹介してもらえるはずです。

再発は悔しかったが5倍の速さで人生を楽しむ
 乳がんは、10年、20年と長い期間経過を追う必要のあるがんです。私は、10年を過ぎ、大丈夫と思っていた13年目に再発しました。胸骨転移、そして、肺門リンパ節転移、縦隔リンパ節転移がありました。その1年くらい前から、ソシアルダンスをするときに胸骨と右肋骨の間に痛みが走り、骨シンチグラフィー(以下、骨シンチ)でその部分が黒くなっていましたが、ダンスと仕事のやりすぎだろうで片付けていました。そのとき、整形外科、乳腺外科、放射線科の意見が分かれたので、「骨転移ではない」という整形外科医の意見を信じることにしたのです。再発は認めたくない事実ですから、骨転移だと信じたくなかったのだと思います。

 でも、骨の痛みが薬を飲んでも抑えられないほど限界に達し、もう一度、骨シンチとMRIを撮ってもらったら、骨転移だと認めざるを得ない状況になっていました。やっぱり再発だったと思うと悔しかったですね。

 「お願い致します。私はまだまだ働きたいのです。よろしくお願いします」と放射線科の先生に深々と頭を下げ診察室を出ましたが、ちょっとだけ涙が出ました。ショックでしたが、意外と早く立ち直り、今度は人の5倍の速さで人生を楽しみながら生きようと思いました。仕事は今まで通り、月曜日から土曜日まで患者さんの診察にあたり、寝る時間も3時間半ぐらいにして、本も書いたし、いろんな本を読みました。それから、アクション映画もよく観ました。それは、自分を強め、自分が倒れないヒロインであるとイメージするためでもありました。ソシアルダンスにも毎日通って、それまで以上にダンスに打ち込みました。

“がん友”と仕事が支えに
 最初に乳がんの手術を受けたときもそうですが、私が、絶望的な気持ちに何とか対処してこられたのは、同じ病気を持つ“がん友”の存在も大きかったと思います。私ががんになったのは34歳で、長男が5歳、長女が3歳でしたから、子どもの成長がみられないのではないかと泣き暮れ、抑うつ状態になった時期もありました。それも、初発の段階でリンパ節転移があって再発のリスクが高い状態だったので、不安でたまりませんでした。

 でも、退院して1カ月くらいして、あけぼの会に電話をし、事務所の仕事を手伝ったりして先輩患者の話を聞くうちに、どんどん元気になりました。闘病記もずいぶんたくさん読みました。そして、私は人より早く死ぬかもしれないから、そのときは今までの3倍の速度で生きようと考えました。

 私は映画が大好きなので、映画を1年に100本観て本は1週間に3冊読むと決め、本当に実行したのです。そうすると、自分が行かれない国にも行けるし、自分がなれなかった職業や人生も経験できる。何にも知らないで死ぬわけにいかないと思ったんですね。いまも、できるだけ映画を観たり、本を読むようにしています。

 私の“がん友”の中には、看護師だったのにスナックのママになった人や、保険の外交員だったのに長年の夢だった配管工になった女性もいます。がんになったのをきっかけに、長年の夢を実現したのですから、がんになったのは無駄ではないし、逆に人生にとってはプラスだと捉えたらいいのではないでしょうか。

 再発したとしても同じ気持ちでいいと思います。乳がんのようにゆっくり進むがんの場合、再発しても、再々発しても、たくさんの治療法があり、それを恐れずに受ければ、がんと共に充実した人生が送れます。

 私の場合、40歳で離婚しシングルマザーになってから、フルタイムで耳鼻科医として働いていますが、再発しても全身転移になっても仕事を続けていることが精神的な支えになっています。子供達は成人しましたが、長男はギタリストを目指して修行をしている段階なので、まだ経済的に支えていかなければなりません。そういった環境がかえって私をしっかりさせてくれています。

 仕事やダンスなどに打ち込んでいる時間は、自分が全身転移をした末期の患者だという事実を忘れます。調子が悪い日でも患者さんに会うのだと思うとキリッとしますから、仕事を休んだこともありません。いまは抗がん剤の副作用の骨髄抑制で、白血球の値が低くなってしまっていますが、この10年ぐらいかぜをひいたこともないんです。とりあえず耳鼻科のプロとして頼りにしてくれて患者さんたちがいるから、倒れるまで医師としての仕事は続けるつもりです。

 どんな仕事の人も同じだと思いますし、たとえ専業主婦の方でも、子どもや夫、親や姑さん、舅さんがいたらその方たちにもあてにされている、自分はお荷物じゃなくて、反対にあてにされているんだと思ったほうがいいのではないでしょうか。再発したからといってやりたいことをあきらめる必要はありません。調子がよければパートに出たりしてもいいし、普通に生活していいと思います。

(まとめ:医療ライター・福島安紀)


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