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レポート

2009/4/14

日本列島がん対策・現地レポート〔沖縄県〕

地域に開かれた連携協議会を核に現場発のがん対策に取り組む(下)

「自分達ができることから始める――」。がん対策の後発県である沖縄県では、県の対応に危機感を抱いた医療提供者たちが、県全体のがん医療を考える場として、がん診療連携協議会の場を地域に開放し、患者や一般市民を巻き込みながら動き始めた。今回は、連携協議会の具体的な活動内容をレポートする。



沖縄県がん診療連携協議会の組織図

沖縄県がん診療連携協議会の組織図

 沖縄県がん診療連携協議会(以下、連携協議会)の組織は(右表参照)のとおり。分野別に設置する6部会では、がん診療連携拠点病院の整備指針で定められている項目を中心に具体的な活動計画を策定し、実際の活動を行っている。

各部会の中心となるメンバーはその分野のエキスパートで固める
 この部会運営にも他ではあまりみられない特徴がある。まず、各部会の中心となるメンバーは、拠点病院に所属しているかどうかにかかわらず、その分野のエキスパートで固めた。

 たとえば、緩和ケア部会では、拠点病院ではない医療機関の緩和ケア専門医が責任者となり、緩和ケア認定看護師や薬剤師、臨床心理士、在宅医など、緩和ケアの第一線で活躍する人材が参加する。同様に相談支援部会では医療ソーシャルワーカーが、がん登録部会では診療情報管理士が、多数コアメンバーとして活動する。

琉球大学医学部附属病院がんセンター長の増田昌人氏。全体の調整役を務めている

琉球大学の増田昌人氏。世論に訴えるため、メディアへの働きかけも重視。連携協議会の開催前日には、県庁の記者クラブに出かけ、記者への説明や各社への投げ込みも行った

 「現場で起こっている問題や疑問を持ち寄り、徹底的に話し合うことによって、医療提供者の誰もが本当に変えていかなければならないと考える課題を活動計画に反映できるところが大きい」と、全体の調整役を担う琉球大学医学部附属病院がんセンター長の増田昌人氏(写真右)は利点を分析する。

 また、「部会の活動を通して、医療提供者がその気になれば変えられることもあるのだと実感しています」とも。その一例が麻薬の頓服処方制限の撤廃だ。沖縄県では、疼痛時の麻薬の頓服薬の処方が月10回までしか保険診療で認められていなかった。そのことを問題視した緩和ケア部会では、沖縄県国民健康保険団体連合会、沖縄県社会保険診療報酬支払基金など関係機関と交渉し、今年3月から月10回以上の処方を行っても保険診療で認められるようになった。

 「緊急性のあるものは、県をはじめ必要な関係機関に積極的に働きかけて改善していきたいと考えています。とにかくできることから始めます」と、増田氏は意欲的だ。

 「自分達ができることから始める――」。取材中、このフレーズにはあちこちで何度も出くわした。これは連携協議会の関係者に共通する思いのようだ。

計画を策定し実際の活動を担う部会にも患者委員の参加を募集中
 一方、連携協議会の運営同様、部会の運営にもガラス張りを心がける。部会ごとに月1回のペースで行われる会議の議事要旨は、連携協議会のウェブサイト上に設けられている各部会のサイトに掲載、誰でも自由に閲覧できる。さらに、各部会が立案した今年度の事業計画は項目ごとに実績を具体的に記載したうえで5段階の自己評価を行い、こちらもウェブサイト上で公表した(例えば、緩和ケア部会のサイトなど)。

 評価は、1点〜5点までの5段階となっており、それぞれの点数の根拠も示されている。このような実績報告が公表されることによって、患者や市民もがん対策の進捗状況を容易に把握できる。

 「客観的に評価することによって、次年度の目標と重点課題を明確にすることが狙いです。医療者の自己満足に終わることのないよう、次年度は第3者評価を実施したいと考えています」と、増田氏。また、連携協議会での会議の経験を通し、患者や家族、遺族に参加してもらうことの意義と必要性を痛感したことから、現在4つの部会(緩和ケア、普及啓発、研修、相談支援)でも、患者・家族・遺族委員の参加を募集中だ。連携協議会のウェブサイトの4つの部会の委員一覧をみると、その枠が既に設けてあり、連携協議会が本気で患者参加を求めていることがよくわかる。

 「沖縄県には、がんになったことを隠しておきたい風潮があるため、これまで患者の意見が出てこないことを県民性として片づけていたようなところがあります。しかし、患者が意見を言える仕組みも作らずに、そんなふうに考えるのは、がん対策を遅らせることにもつながるのではないかと思うのです」と、増田氏は指摘する。

 このような連携協議会の取り組みに対して、日本医療政策機構がん政策情報センター長の埴岡氏も「「沖縄県は47都道府県の中でも創意工夫が見当たらないがん対策推進計画を策定したうえに、がん対策の予算額も少ない。だが、県だけに頼らず、がん医療を担う医療提供者自らが、患者が意見を言える場を積極的に作っている。当事者(医療者と患者・家族)同士が手を携えることによって巻き返しをする好事例になる可能性がある」と期待する。また、連携協議会の役割に関しては、「国から示された役割を担うだけでなく、沖縄県の連携協議会のような運営をして、地域のがん対策のけん引役となることもできる」と語る。

 今後、県を動かすためには、患者や家族、一般市民をはじめ、いろいろな立場の人がかかわり始めた連携協議会の場をどのように維持・発展させ、がん対策の必要性を世論に訴えかけていくかにかかっている。関係者の正念場は、まさにこれからといえよう。

(医療ライター 渡辺 千鶴)

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