このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2009/4/7

日本列島がん対策・現地レポート〔沖縄県〕

地域に開かれた連携協議会を核に現場発のがん対策に取り組む(上)

「自分達ができることから始める――」。がん対策の後発県である沖縄県では、県の対応に危機感を抱いた医療提供者達が、がん診療連携協議会の場を県全体のがん医療を考える場として地域に開放し、患者や一般市民を巻き込みながら動き始めた。他県にはみられない連携協議会の取り組みを中心に、沖縄の様子をレポートする。



 3月18日、琉球大学医学部大会議室で「第3回沖縄県がん診療連携協議会(以下、連携協議会)」が開催された。この連携協議会は、昨年(2008年)9月に発足したもの。当日の会議では、実際の作業を担当する各部会の責任者から今年度の事業計画の実績と評価、および次年度の事業計画の報告が行われた。加えて、患者・家族・遺族委員からの積極的な質問や意見が相次ぎ、優先して取り組むべき課題がさらに明確になったり、新しいアイデアが提供されたりした。

 通常、連携協議会は、がん診療連携拠点病院や保健医療機関、行政機関の関係者、有識者等で構成されるが、このような専門家に加え、沖縄県では患者・家族・遺族が委員として参加していること。これは、他県ではほとんどみられない大きな特徴の一つだ。

会議の内容を一般公開し、傍聴席からの発言も受け付ける

3月18日に開催された第3回沖縄県がん診療連携協議会の傍聴には20人を超える患者や家族が集まった。
3月18日に開催された第3回沖縄県がん診療連携協議会の傍聴には20人を超える患者や家族が集まった。

 加えて連携協議会は、会議を一般公開しており、傍聴席からの発言も受け付けている。この日は、事前にがんのイベント(リレー・フォー・ライフ)や新聞紙上で連携協議会の開催告知と傍聴参加を呼びかけていたこともあり、傍聴席には20人を超える患者や家族が集まった(写真右)。そして、傍聴席からも「膵臓がんの専門医は県内のどこにいるのか」「大人のがんの話ばかりしないで、子どものがんにも目を向けて」など、それぞれの患者や家族が抱える切実な訴えが続き、がん診療連携拠点病院や保健医療機関を代表する各委員がじっと耳を傾ける場面もみられた――。

 この患者の声を積極的に取り入れたいという姿勢に対して、連携協議会の遺族委員である崎山律子氏は「患者や家族、がん対策に関心のある県民が意見を言える場ができたと高く評価しています。ここに出てきた声を吸い上げ、がん対策に反映させていくことが連携協議会の役割ではないでしょうか」と歓迎する。

 有識者委員の一人として参加するNPO法人グループ・ネクサス理事長の天野慎介氏も「傍聴席の一般市民が発言できるのはすごい。この種の会議では考えられないことです。まるでタウンミーティング(行政が地域住民と対話する集会)のような場になりましたね」と評価する。

 一方、傍聴に来た患者や家族からは「患者の声を聞いてもらえるのも有り難いが、医療提供者の声が聞けてよかった。これまでは医師や病院ががん対策にどのように取り組んでいるのかよくわからず不安だった」という感想も目立った。

県の対応に危機感を抱いた医療提供者達が地域に目を向け動き始めた
 「地域に開かれた連携協議会を目指す――」。沖縄県の都道府県がん診療連携拠点病院である琉球大学医学部附属病院は、連携協議会を発足するにあたり、こんな方針を掲げた。そして、連携協議会や作業部会の委員として、いろいろな立場の人に参加を求めるとともに情報公開にも力を入れてきた。会議を公開するだけでなく、傍聴者には委員と同じ資料を配布し、議事録も連携協議会のウェブサイト上で閲覧できるなど、ガラス張りの運営に努める。このタイプの協議会の取り組みとしては先進的なもの。

 各地のがん対策の実情に詳しい、日本医療政策機構がん政策情報センター長の埴岡健一氏は「医療提供者が、患者と話し合いながら自分達のできることからがん医療を変えていこうとする意欲が強いことも、大きな特徴の一つだ」と話す。

 こうした動きの背景には、沖縄県の行政が、がん対策にそれほど注力していないことが影響している。沖縄県の人口100万人当たりのがん対策予算は、全国ワースト3位(2007年度都道府県がん対策予算ランキング:日本医療政策機構がん政策情報センター調べ)。しかも、沖縄県のがん対策推進計画の進行状況は、保健医療計画と併せて「沖縄県保健医療協議会」が管理することになっているが、計画が策定された昨年3月以降、実質的な協議は一度も行われていない状態が続いていた。

 これは、県ががん対策よりもメタボ対策を優先課題としているため。沖縄県は、各都道府県別の75歳未満がん年齢調整死亡率では低い方から4番目となっており、がんで死ぬ人の割合は多くない。それに対し、かつて全国一を誇った男性の平均寿命は2000年に4位から26位まで一気に転落し、大きな衝撃を与えた。

 しかし、がんの部位別でみると、子宮頸がん、白血病は沖縄県が全国で最も死亡率が高く、肺がん、大腸がんも死亡率のワースト上位に入る。告知や緩和ケアへの取り組みも遅れ、改善すべき課題が山積している。

連携協議会議長を務める琉球大学医学部附属病院長の須加原一博氏
連携協議会議長を務める琉球大学医学部附属病院長の須加原一博氏

 県の現状に危機感を抱いた医療提供者達が、連携協議会を県全体のがん医療を考える場――実質的に停止しているがん対策推進協議会の代わりとなる組織にするために動き始めたというわけだ。連携協議会を、いろいろな立場の人に参加してもらうことを決め、地域に開かれた運営を開始した。

「沖縄県全体のがん医療のレベルを上げるのは、都道府県がん診療連携拠点病院である当院の使命です。県内の医療機関からも琉大を中心に体制を整備して欲しいという要望が強く、昨年、院内に設立したがんセンターが主体となって取り組んでいるところです」と、連携協議会議長を務める琉球大学医学部附属病院長の須加原一博氏(写真右)は説明する。

●「がん対策推進協議会」と「がん診療連携協議会」の役割

「がん対策推進協議会」には、各都道府県のがん対策の計画を策定し、その後の進行状況を管理する役割がある。現在、ほとんどの県のがん対策推進協議会は、計画の策定を終え、引き続き、進行管理を行っている。しかし、なかには計画の策定終了と同時にがん対策推進協議会を閉会した自治体や、実質的に機能が停止している自治体もいくつかある。

 一方、「がん診療連携協議会」は、厚生労働省健康局長「がん診療連携拠点病院の整備指針」の通知を受けて各都道府県に設置されているもので、各都道府県におけるがん診療連携拠点病院の連絡・調整を行うこととなっている。緩和ケアをはじめとする各種研修の計画・実施、セカンドオピニオンリストの作成、院内がん登録データの評価・分析、診療支援医師の派遣調整など、地域におけるがん診療連携体制を整備する役割を担っている。

(医療ライター 渡辺 千鶴)



この記事を友達に伝える印刷用ページ