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レポート

2009/4/14

St.Gallen国際会議レポート3 早期乳がん術前化学療法の選択基準は術後と同じ、分子標的薬の術前投与も推奨

早期乳がんの治療法を話し合うSt.Gallen国際会議(正式名称:Primary Therapy Breast Cancer 11th International Conference)が、3月11日〜14日にスイスSt.Gallenで開催された。同会議の目玉は最終日に開催されるパネリスト41人の投票を基にした合意(コンセンサス)形成。この結果は、日本の乳がん診療にも大きく影響を与える。レポート3回目は、術前薬物療法に関する議論を報告する。



 今回の会議における術前薬物療法の議論で最大のポイントとなったのは、「術前薬物療法における薬剤選択の基準は、術後薬物療法と同じか」という設問への答えだろう。この設問は、最初から用意されていたものではなく、議論のなかで提案されたもの。投票の結果、一人の反対もなく、術前薬物療法の薬剤選択は術後薬物療法と同じであることが合意された(賛成97%、反対0%)。

 この合意に沿う形で、タキサン系抗がん剤(賛成63%、反対26%)、アントラサイクリン系抗がん剤(賛成82%、反対5%)を含んだ薬物療法が術前薬物療法の標準治療として確認された。

 また、HER2陽性の患者に対する術前薬物療法には、分子標的薬を含めるべき(賛成90%、反対3%)となった。ただし日本では、分子標的薬であるトラスツズマブ(商品名「ハーセプチン」)の術後薬物療法としての投与が昨年、保険診療として認められたばかり。もちろん、術前投与に関しては保険適用とはなっていないという問題がある。

 一方、ホルモン療法に関しては、閉経後でホルモン感受性が高い患者に対するホルモン療法単独の術前薬物療法は妥当と結論された(賛成90%、反対7%)。ただし、術前ホルモン療法の最適な期間に関しては意見が分かれ、結論に至らなかった。3〜4カ月が最適との回答は20%、4〜8カ月は43%、8カ月以上もしくは最大反応が得られる期間以上としたのは37%であった。

術後のビスホスフォネート製剤投与で再発抑制?

 今回の会議に先立つ、2008年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で注目された新たな知見がある。骨転移の治療などに利用されているビスホスフォネート製剤(ゾレドロン酸、商品名「ゾメタ」)を術後薬物療法に組み入れることで、再発抑制効果が高まるというもの。

 今回の会議ではこの発表を受け、「健康な骨を持つ閉経前の乳癌患者に対して、術後ホルモン療法に、6カ月に1回投与のゾレドロン酸を追加するべきか」が問われた。その結果、投与すべき(38%)、すべきでない(50%)と、反対意見が若干多かった。一方、閉経後でAI剤投与を受けている患者に対するゾレドロン酸の併用に関しても、投与すべき(26%)、すべきでない(59%)と、否定的な意見が多かった。

 この結果に関して、「ゾレドロン酸の効果の更なる検証のため、対象患者群を変えたもう一つの臨床試験の結果が必要」との意見が出された。また座長は「次回の会議に向けた課題になるだろう」と付け加えた。日本から参加した医師からも、「ゾレドロン酸は点滴投与が必要ではあるが、再発抑制のための投与では、6カ月に一度の投与となっており、利用しやすい。今後、再発抑制効果の検証が進み、有効性が確認されれば、急速に普及するだろう」と期待が聞かれた。

トラスツズマブの術後薬物療法で化学療法は省略できるか?
 意見が分かれ、2度の投票が行われた設問もあった。

 「わきの下のリンパ節転移陰性で、HER2陽性かつホルモン感受性の患者に対して、化学療法を行わず、トラスツズマブとホルモン療法のみの投与は可能か?」という設問に対して、一度目の投票結果に対する反論が続出、再投票の結果、一度目の投票結果が覆ったのだ。

 この設問に対しては、一度目の投票では、化学療法を省略できるとする意見(58%)が、できないという意見(34%)を上回った。

 この結果に対して、米国Emory University School of MedicineのWilliam C. Wood氏は、「術後薬物療法としてエビデンスがあるのは、何らかの形で抗がん剤とトラスツズマブ投与を併用したもの。抗がん剤投与を省略できることを示すデータはない。この設問への回答は慎重に考えるべき」と警鐘を鳴らした。

 加えて、ベルギーのJules Bordet InstituteのMartine Piccart-Gebhart氏も「確かに、転移性乳がんに対してはトラスツズマブ単独投与の効果を示すデータはある。しかし、術後薬物療法としてのデータはない」と強調した。

 そして、再投票の結果、化学療法省略可能とする意見は33%まで減り、省略できないという回答がが辛うじて過半数(51%)を超えた。座長は、「ここは意見の分かれるところ」とまとめ、今後の課題とした。

(小板橋 律子)

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