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レポート

2009/3/3

異例尽くしのスピード承認・即日保険適用

骨髄移植用・骨髄採取キットの代替品が販売開始

昨年12月末、骨髄採取キットの供給が中断されることが公になり、最悪の場合には日本の骨髄移植の中断が危惧された。海外の代替製品をスピード承認・即日保険適用するという厚生労働省(厚労省)の迅速な対応によって、最悪の事態は回避できることが確定した。



 ことの発端は2008年12月19日、骨髄採取キットの国内で唯一の販売元であるバクスターが、販売している「ボーンマロウコレクションキット」の供給が一時的に継続できなくなることを、同社のホームページ上で発表したことにさかのぼる。

 背景には、米Baxter社が骨髄採取キットの製造・販売を行っていた事業部を売却したことがある。事業部売却後、ボーンマロウコレクションキットの製造元は、売却先の米Fenwal社に移った。Fenwal社は、製造拠点を米国からドミニカ共和国へ移し、キットの一部を改良して、米食品医薬品局(FDA)などの承認を得る計画を立てていた。しかし、予定よりも手続きに時間がかかったことから新工場の稼動が大幅に遅れた。その結果、世界的にボーンマロウコレクションキットの供給がストップする見込みになった。

 ボーンマロウコレクションキットとは、骨髄移植のために採取した骨髄液をろ過・収集するもの。採取した骨髄液に含まれる骨片や脂肪を除くために利用する。採取した骨髄液を入れるバッグとフィルター、ろ過後の骨髄液を入れるパックからなり、国内では「単回使用骨髄採取・移送セット」として唯一認められている医療機器だ。

 国内で患者の血縁者や第3者のドナーから骨髄採取を行っている採取施設は、約250施設。そのうち5%の採取施設が、旧来の手作業によって骨髄液をろ過、収集しているものの、95%の採取施設はボーンマロウコレクションキットを使っているのが現状だ。「以前は、ザルのようなものを使い手作業でろ過していたが、安全性や利便性の面でキットの方が優れている。もう手作業に戻すつもりはない」と、採取施設のある医師は話す。

在庫は3月中に底を突く
 バクスターの発表を受け、厚労省、日本造血細胞移植学会、骨髄移植推進財団、そしてバクスターは協議を開始した。国内では、月間約150個のボーンマロウコレクションキットが使われている。協議時におけるバクスターのキットの在庫は47個(09年1月28日時点)。既に採取施設に納入済みだが、具体的な使用計画が立てられていないキットの在庫は百数十個。2月中の骨髄採取には影響がないものの、そのまま行くと3月以降は骨髄採取が行えなくなると推計された。これはすなわち、国内の骨髄移植が中断されることを意味する。

 幸い、欧米ではバクスターのキットに加えて、米BioAccsess社の骨髄採取キットが承認されている。そこで、学会はBioAccess社の骨髄採取キットの有効性や安全性について文献を基に調査を行い、問題がないことを厚労省に報告。関係者で議論を重ねた後、最終的にバクスターがBioAccess社と契約を結び、今年1月28日に骨髄採取キットの承認申請を行った。同時にバクスターはBioAccess社の骨髄採取キットを日本向けに600個買い取った。

異例尽くしの迅速承認・即日保険適用
 厚労省は2月26日、新しい骨髄採取キットである「ボーンマロウコレクションシステム」(以下、新キット)を承認した。加えて、メーカーの申請に基づき、即日保険適用したことを都道府県などに通知。一方、バクスターは、保険適用が承認された翌日の27日から新キットの販売を開始した。

 通常、この手の医療機器の審査には少なくとも半年かかる。今回は非常事態として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)がスピード審査を行い、1カ月弱という短期間での承認にこぎ着けた。様々な点で異例の対応を厚労省が行ったことで、最悪の事態は回避できることになった。

 ドナーからの骨髄採取を行っている東京都立駒込病院内科部長の秋山秀樹氏は「これで日本の移植治療は継続されるでしょう」と安堵する。

 バクスターは購入済みの600個(約4カ月分)を販売するが、その後、引き続き販売を続けるかどうかは「(旧キットの国内販売を担当する予定の)Fenwal社の日本法人の動向や、現場の需要などを見て判断する」(広報部)予定だ。

 今回、異例尽くしの迅速承認・保険適用に至った背景には、世論の高まりを背景に、厚生労働大臣を中心に厚労省が部局を越えて対応にあたったことが挙げられる。骨髄採取キット欠品問題の関連部局は、臓器移植対策室、審査管理課、経済課など多岐にわたるが、「2009年1月に入ってからは、採取施設に骨髄採取キットが行き渡っているかどうか、毎日大臣に経過報告するなどの対応をとっていた」(厚労省関係者)。

 ただし、同じ騒動が抗がん剤などの医薬品で起きた場合に、今回のような対応が可能かというと、話は別だ。もともと骨髄採取キットは、体外で利用するため比較的リスクが低い医療機器に分類されており、安全性評価の項目が比較的少ない。これに対して体内に入る医薬品の場合、安全性評価の項目は多岐にわたり、また、その基準も高いためだ。

(久保田 文)


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