このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2009/2/3

発がん物質から逃れるために

「だまされたと思ってニコチンパッチを使ってみて!」

 喫煙は肺がんだけでなく、食道がん、喉頭がん、口腔がん、咽頭がん、腎がん、膀胱がん、膵がん、胃がん、子宮頸がん、急性骨髄性白血病などの発症リスクを高めることが知られている。日本にたばこがなかったら、がんの発症数は半減すると断言する疫学者もいるほどだ。欧米に比べて日本では遅れが目立つたばこ対策だが、禁煙外来を設ける医療機関の増加や禁煙補助薬が薬局で買えるようになるなど、禁煙をサポートする体制が整ってきている。快適な禁煙術を知って欲しい。



 「禁煙に遅すぎることはないことを、まず申し上げます」と強調するのは、日本における禁煙指導の第一人者である奈良女子大学保健管理センター教授の高橋裕子氏。

 高橋氏は、「がん患者さんのなかには、『もうがんになっちゃったのだから禁煙しても遅すぎる』という方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。禁煙することで、術後の回復も早く、抗がん剤や放射線治療の治療効果が上がり、副作用も軽減できるのです。禁煙には、遅すぎるということは決してないのです」と力を込める。

 高橋氏が禁煙治療に当たっている京都大学附属病院では、術前に禁煙できない患者は、手術の順番が繰り下げられる科も存在するという。喫煙は手術の合併症の発症率を高めることが明らかになっており、合併症のリスクを減らすためにも手術時には禁煙が必須となっているのだ。

 京大病院では、がん患者の禁煙サポートに禁煙補助薬が用いられている。「禁煙補助薬として経口薬も利用されていますが、腎臓に負担がかかっている状態では利用できない場合もあります。その点、ニコチンパッチは、副作用といえば皮膚のかぶれ程度で、がん患者さんでも安心して利用できます」と高橋氏。既に、たくさんのがん患者が禁煙のために、ニコチンパッチを利用しているという。

禁煙は辛くない
 禁煙サポートに関して高橋氏が強調するのは、「よく効く薬がある」という点。現在、日本には喫煙補助薬として、ニコチンパッチ、ニコチンガム、経口薬(チャンピックス)がある。経口薬は、禁煙外来などを受診して医師の処方箋を得る必要があるが、ニコチンパッチ、ニコチンガムは、薬局で購入することもできる。

 「禁煙外来を受診する方は増えてはいますが、喫煙者全体のうちわずか1〜2%にすぎません。やはり、禁煙のために病院に行くことは敷居が高いのでしょう」と高橋氏。だからこそ、「薬局で買えるニコチンパッチを有効活用して欲しい」と強調する。

 ただし、同じニコチンパッチでも、薬局で買う場合と医師の処方では使い方が異なることを覚えておいて欲しい。

 「一般的に医師は、1日20本を吸っている成人男性には、まず、一番含有量の高いパッチ(市販の1.5倍のニコチン含有量)を処方しますが、このパッチは薬局では買えないのです」と高橋氏。そのため、「薬局で購入したニコチンパッチでうまく禁煙できなかったとしても、諦めないで病院を受診して欲しい」と語る。

 また、薬局で購入するパッチは寝ている間は使用しないように指示される。しかし、医師は通常24時間の使用を指示しているのが現状だ。就寝中も使用することで、「起床直後のニコチン切れが生じないため、起きてすぐに吸いたくなるようなヘビースモーカーには喜ばれています」と高橋氏。

 ただし、就寝中にニコチンパッチを貼っている場合、悪夢を見るなどの副作用が生じる場合がある。そのような場合には就寝中はパッチを貼らないよう指示し直すという。

『禁煙で太る』について
 禁煙中の悩みとして多くの喫煙者は、太ることを挙げる。「ニコチンパッチを利用すると、利用しない場合に比べて体重増加が抑制されることが明らかになっています」と高橋氏はもう一つの効用を語る。パッチを利用しない場合、禁煙で食欲が急激に高まり6〜7kgも体重が増えることもあるが、パッチを利用すると、それほど急激な体重増はなく、2〜3kg程度に抑えられることが多いということだ。

 また、たとえ太っても禁煙後の体重増には特徴があるともいう。通常、太ると善玉コレステロールのHDLが減るが、禁煙による体重増では、このHDLが増える。まさに「禁煙による体重増は健康になったことの現れ」(高橋氏)なのだ。また、たばこを一日20本吸う場合の動脈硬化の発症リスクは、40kgの体重増に匹敵することも覚えておくと心強いかもしれない。

周囲のサポートのコツとは?
 「禁煙では、周囲のサポートがとても重要」と高橋氏。禁煙サポートの原則として、1)禁煙補助薬の入手を手伝う、2)少しでも努力したらほめる、3)感謝する−−の3点を挙げる。

 「ニコチンパッチを買ってあげてもいいでしょうし、一緒に買いに行ってもいいでしょう。薬局でこんなのあるみたいねと声をかけるのでもいいと思います。まずは、パッチの入手を手伝ってあげてください」と高橋氏は解説する。

 そして、「パッチを貼るところまで行かなくても、まず、箱を見たこと、箱を開けたことでもほめてあげてください」。禁煙に向けて気持ちが動くことを、気長に見守る姿勢が重要という。

 禁煙を始めたら、「禁煙してくれたことで生じるメリットを少しでも感謝しましょう」と高橋氏。「(喫煙者の)病気の心配が無くなった、(自分の)受動喫煙のリスクが減ったなど、なんでもいいので、禁煙で生じるメリットを感謝してください」という。禁煙したことを本人が良かったと思えることが禁煙の励みになるのだ。

 では、禁煙しているはずなのに、たばこの匂いがしてきたらどうしたらどう対応したらいいだろうか。「まずは、見て見ぬふりをして、機会を見て、再度、チャレンジしてもらいましょう。一番言ってはいけない言葉は、『やっぱりダメね』です。挫折はあるもの。長い目で見てよい方向に向くように、繰り返し励ましてあげてください」と高橋氏。

 国内の調査では、禁煙外来受診者の1年後の禁煙成功率は3割程度。また、海外の調査では、市販の禁煙補助薬を利用した場合の1年後の禁煙成功率は1割程度だ。再度、吸ってしまうことは決して稀ではない。そのため、何度も繰り返し、禁煙にチャレンジし続けることが重要なのだ。

 喫煙を続けるのはニコチンへの依存(ニコチン依存症)が生じているため。そして、ニコチン依存症になると、たばこを止めようと思わなくなるといわれている。このニコチンに関して、英国王立内科医師会は、ヘロインやコカインなどの非合法の薬物よりも、依存が生じやすいとの報告書を出している。すなわち、たばこを止められない喫煙者はニコチンの被害者であり、ニコチン依存症という病名を持つ患者でもあるのだ。とはいえ、ニコチン依存症は薬をうまく使うことで必ず治療できる。禁煙補助薬を上手に活用して、発がん物質から一日も早く逃れて欲しい。

(小板橋 律子)

●高橋氏による禁煙のための原則
1) 禁煙をサポートする薬があること、あまり苦しまずに禁煙できる方法があることを知らせる。
2) 禁煙することで良いことがあることを知らせる。
3) 喫煙の毒性、マイナスを知らせる(脅すのではなく、客観的に)。
4) 喫煙による不都合を知らせる。
5) 何度も繰り返し、根気よく、諦めない。
6) 家庭内や職場の環境を整える。

この記事を友達に伝える印刷用ページ