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レポート

2009/1/27

がんの発見個数やポリープ切除数増加の効果も

短時間で苦痛の少ない大腸内視鏡検査

 大腸内視鏡検査といえば「痛い」「苦しい」「長時間かかる」といったマイナスイメージが一般的だ。近年、大腸がん検診が普及してきたが、内視鏡検査を受けたくないと病院受診に消極的な人も多いのではないだろうか。これに対し、中山診療所(群馬県高山村)所長の荻原裕之氏は、ある内視鏡の導入により、短時間で苦痛の少ない検査が可能になったと明かす。

 その内視鏡とは、もともと小腸用内視鏡として新たに開発された「ダブルバルーン内視鏡」だ。ダブルバルーン内視鏡は、通常の黒い軟性内視鏡の筒状部分が透明で軟らかいオーバーチューブで覆われている。内視鏡の先端とオーバーチューブの先端にそれぞれ、伸縮するバルーンが付いていることから、ダブルバルーン内視鏡という名前が付けられた。
 検査では、バルーンを膨らませたり縮めたりしながら、内視鏡とオーバーチューブを交互に腸の奥へと進めていく。従来の内視鏡では、複雑に折れ曲がりかつ柔軟性に富んだ大腸をくまなく検査するのは、専門医でも難しいことが少なくなかった。だが、この内視鏡はバルーンを用いて内視鏡やオーバーチューブの先端を腸管内に固定できる。いわば尺取り虫のように、内視鏡先端を確実に腸の奥へと進められるわけだ。

開業で大腸内視鏡検査の必要に迫られる
 勤務医時代には心臓血管外科医だった荻原氏は、開業と同時に必要に迫られ、上部および下部の消化管内視鏡検査を始めた。「主に胃を見る上部内視鏡検査は挿入が容易で、すぐに慣れることができた」と振り返る荻原氏だが、下部内視鏡検査は「押しても押しても内視鏡が入っていかずに抜けて行き、時間は経過する一方。患者さんも痛がるので、あらかじめ検査時間を決めておき、盲腸まで到達しなかった患者さんには改めて病院での再検査をお願いしていた」(荻原氏)。

 一時期は、結局病院に再検査を依頼することになるなら、と自施設での大腸内視鏡検査を止めていた荻原氏だが、村で唯一の診療所であることから患者側のニーズも高く、どうしたらよいかと迷っている時期に、大腸用のダブルバルーン内視鏡と出会ったという。

 「準備に時間がかかることと、こまめにバルーンを膨らませたり縮めたりする作業が面倒といえば面倒だが、すぐに操作に慣れた。最初の患者さんから今まで、全員盲腸まで短時間で到達できている」と荻原氏は語る。盲腸への到達率は導入前の約60%から100%に上昇、到達までの時間も平均10〜15分と大きく短縮された(表1)。

 ダブルバルーン内視鏡は挿入が容易なだけではない。大腸内視鏡検査の本来の目的である精密な検査、そして治療も簡便になったと荻原氏は強調する。実際、発見したがんの個数、ポリープの切除数ともに増加している。「バルーンがあるので、内視鏡が一気に抜けてしまうことがない。観察したい場所で止まって十分な観察が行えるため、これまで発見できなかった上行結腸にあるがんも2個発見した」(荻原氏)。

 患者からの苦痛の訴えも減ったという。苦痛が少ないことに加え、内視鏡が進みにくいときに腹部を手で圧迫したり、身体の向きを変えてもらったりする手順も不要になり、特に高齢者を中心に喜ばれているそうだ。患者の痛みを和らげるために鎮静剤が使われることもあるが、荻原氏は「患者が苦痛を訴えるのは、何らかの合併症の兆候とも考えられる。例えば、内視鏡を無理に押し込みすぎていないかなど、検査手順を見直すのに有用な情報なので、私はできるだけ鎮静剤を使わず、患者さんと話をしながら検査を進めている」と話す。

診療所への普及はまだこれから
 残念ながら、ダブルバルーン内視鏡の診療所への導入は、まだほとんど進んでいないのが現状だ。小腸用内視鏡として、全長が大腸用よりも長いタイプのものが最初に発売されており、こちらは多くの大学病院で導入が進んでいる。しかし、大腸用の短い内視鏡については存在自体があまり知られておらず、普及はこれからの大きな課題だ。

 大腸がんは、早期に発見されれば完治も期待できる。このため、精査と治療が同時に行える大腸内視鏡の重要性はますます高まると予想される。従来の大腸内視鏡検査に熟練した医師がまだ少ないことを考えると、習得の容易なダブルバルーン内視鏡による大腸内視鏡検査を行う施設が少しでも増加することを望みたい。(小又 理恵子)

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