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レポート

2009/1/20

20歳前後で発症したがんの治療方針

一部の血液がんでは小児の治療方法で生存率が約2倍に

 多くの総合病院が小児科の対象年齢を中学3年生までとし、中学を卒業した時点で成人として診察している。しかし、一部の血液がんでは、小児がんとして治療を受けることで、成人のがんとしての治療に比べて、生存率が約2倍に上がることが知られている。小児として治療を受けるか成人として治療を受けるかが、命をも左右しかねないのだ。

「一部の血液がんでは治療法の選択次第で生存のチャンスが約2倍になる」と語る愛知医科大学小児科学講座教授の鶴澤正仁氏

 「急性リンパ芽球性白血病(ALL)と、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)では、小児の治療方法で治療した場合の生存率が、成人の場合に比べて約2倍高いことが知られている」と断言するのは、愛知医科大学医学部小児科学講座教授の鶴澤正仁氏。 これまでの様々な研究から、例えばALLでは、小児がんとしての治療による5年生存率は6割〜8割近い成績が示されている一方で、成人としての治療ではその約半分の4割前後となっている。

 「これらのデータは海外の研究によるものです。しかし、これだけ治療成績の差が明らかなので、日本においても25歳ぐらいまでは小児の治療方法に沿って治療を受けて欲しい」と訴える。

 高校生以上では、がんの診断を受けるのは小児科ではなく内科であることが一般的だ。そのため鶴澤氏は、「高校生などでリンパ芽球型と診断され、血液内科などで成人型の治療をやると言われた場合、ぜひ、小児血液を専門とする医師のセカンド・オピニオンを受けて欲しい」と強調する。リンパ芽球型以外の血液がんでは、治療成績に差は認められていないため、小児の治療方法でも成人のものでもどちらでもかまわないということだ。

全国規模の臨床試験を計画中
 「ただし」と、鶴澤氏。「小児の治療方法では、副作用がより強くでる可能性がある」と語る。子どもの場合、成人に比べて、薬剤の相対投与量が多く、また、幼い子どもほど副作用への耐性が高いことが知られている。しかし、「20歳以上では、副作用がきつく出てしまい、治療を完遂できる割合も下がってしまう可能性は否めない」(鶴澤氏)。ただし、どのような副作用が生じ得るのかなどのデータはまだ存在しないのが現状という。

 そのため、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)は、成人の白血病研究グループである日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)と共同で、今年から、25歳以下のT細胞性ALL患者を対象に小児の治療法を実施し、治療成績や副作用の発現状況などを調査する計画であると、鶴澤氏は明らかにする。

 「この臨床試験による結果は4〜5年後にもまとまるでしょう。その結果は、日本における貴重なデータとなる」と期待を語る。この臨床試験により、20歳前後の患者が、小児の治療法を選択することのメリットと、副作用などのデメリットが明確に示され、患者の治療法選択に役立つと期待される。

固形がんでは今後の課題
 一方、「脳腫瘍のみでなく固形がんにおいては、15歳から25歳のいわゆるヤングアダルトの治療は、小児を対象とする抗がん剤の治療法がいいのか、成人の治療法がいいのか、結論が出ておらず、今後、本気で取り組むべき課題」というのは、脳腫瘍を専門とする、埼玉医科大学国際医療センター小児脳脊髄腫瘍部門准教授の柳澤隆昭氏。

 柳澤氏によると、「ごく一部の脳腫瘍において、小児の治療法が成人のものよりも治療成績がよさそうかもしれないというデータは出ている。その一方で、小児の治療法で10代後半を治療した場合、抗がん剤の毒性が強く出やすい。毒性を我慢してまでも小児の治療法を選択すべきかどうかに関して世界的にも結論が出ていない状況」と説明する。

 同じ抗がん剤で治療した場合でも、その副作用は、小児、ヤングアダルト、成人で差が大きいということだ。 このような状況ではあるが柳澤氏は、「主治医が小児の治療法に精通した専門家の意見を求めやすい環境であるかは確認して欲しい」という。主治医が小児科医であるべきとまではいえないが、小児の治療に精通した専門家の意見も加味した診療は有意義ということだ。(小板橋 律子)※2009年1月21日に以下を修正致しました。日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)と日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)が共同で計画している臨床試験の対象者は、20歳前後ではなく、25歳以下のT細胞性ALL患者。また、その結果は3年ではなく、4〜5年後に出る予定です。お詫びのうえ訂正します。

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