このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/12/24

静岡がんセンターで「がんの社会学」に関する合同班会議

拠点病院の体制に患者会の厳しい目

 厚生労働省予算による2つの研究班が開催する「がんの社会学に関する合同班会議」が12月5日、静岡県立静岡がんセンターで開かれ、全国のがん診療連携拠点病院の関係者、患者会および患者支援団体の代表が集まり、拠点病院の現状報告と意見交換が行われた。地域の拠点病院について報告する患者団体からは現状への厳しい注文が相次いだ。



 研究班の主任研究者を務める山口建氏(静岡がんセンター総長)は冒頭、がん診療連携拠点病院の現状を報告。「拠点病院の認知度は徐々に上がってきていて、メディアでも取り上げられる機会が増えてきたが、『緩和ケアは拠点病院でしかできない』といった誤解も目に付くようになってきた」と切り出し、拠点病院の存在意義や活動状況の情報を発信していくことの重要性を参加者に強調した。

静岡がんセンター総長の山口建氏
静岡がんセンター総長の山口建氏。「拠点病院を育てるために、患者会、住民の視点でこれからもさまざまな指摘を続けていくべき」

 拠点病院に関する最近のトピックスとして山口氏が挙げたのは、「都道府県、二次保健医療圏での設置」「拠点病院の要件(特に人事)」「拠点病院の補助金、診療報酬」「院内がん登録」「地域連携クリティカルパス」「緩和ケアチーム、地域研修の実践」「相談支援センター」といった点。医療者および診療体制を整備する側の悩みどころを示した。

 特に強調したのが、拠点病院に拠出されるべき補助金が、多くの地域でフルに拠出されていない点。拠点病院への補助金は、国と県が2分の1ずつ負担することになっているが、県の拠出分が少ないために、もらえるべき補助金を全額もらっていない施設が多いことが明らかになっている。診療報酬で加算できる部分などと合わせ、がん診療に関連する収入をきちんと得ているか見直してみることを、各拠点病院からの参加者に勧めた。

 拠点病院の責務でありながら、その実施体制がいまだ議論されているものとして、「院内がん登録」、「地域連携クリティカルパス」を挙げた。がん登録については、入力などの作業が煩雑なために臨床現場からは不評で、登録項目の議論が学会などでも続いており、電子カルテの活用による効率化もあまり進んでいないという。

 拠点病院は2012年度中に5大がんの地域連携パス(がん診療連携拠点病院と地域の医療機関等が作成する診療役割分担表、共同診療計画表及び患者用診療計画表から構成されるがん患者に対する診療の全体像を体系化した表)を整備しなければならない。しかし、「退院後のがんについて、クリティカルパスなど作れるのか?」という疑問があり、厚労省研究班「全国のがん診療連携拠点病院において活用が可能な地域連携クリティカルパスモデルの開発」でもモデルの開発が進行中だ。

全国から224人が参加。拠点病院は65カ所から参加した
全国から224人が参加。拠点病院は65カ所から参加した

 会議では、研究班メンバーの望月泉氏(岩手県立中央病院副院長)がクリティカルパスのモデルを紹介。カルテの持ち運びなど、システム上の問題点のほか、「患者が望む最高の医療の提供を保証するものではない」ということを、一般にいかに理解してもらうかが大きな問題になると指摘した。そのためにも、介護保険制度の介護支援専門員(ケアマネジャー)に相当する、がん医療の連携コーディネーターをつくることを提案した。

 緩和ケアの研修についても、2日がかりの研修の実施はなかなかはかどっていない現状を山口氏は紹介。静岡県も08年度分については、09年明けにようやく実施するという例を挙げ、「(研修を)企画するのは結構だが、ふたを開けてみたら(地域のがん診療に携わるスタッフが)誰も出ないという状況が恐い」(山口氏)と、地域内の足並みをそろえることの難しさを示した。

 相談支援センターについては、かなりの予算措置がされていることもあり、きちんと行う必要があると各拠点病院に強調。がん相談をやっていることを明示して広報し、がん患者が訪れやすい環境をつくるとともに、自院以外の患者からの相談も怠りなく受けなければならないという基本原則の徹底を求めた。

拠点病院は住民が育てるつもりで
 会議の後半では、各地の患者会・支援団体が、各地域の拠点病院およびがん診療体制について報告。診療体制の整備が進んでいない状況などを訴えた。主な指摘は以下の通り。

 「(埼玉県の拠点病院についての報告で)大学病院では一定水準以上のがん診療が行われているようだが、退院後の連携がみられない。一方、地域の中核病院は連携はうまく行っているようだが、がん治療の実績や専門医の配置が不十分」(イデアフォー)

 「(千葉県の拠点病院についての報告で)県内最大の医療圏に拠点病院がない。在宅療養を望まなかったり困難な場合の受け入れ先となる一般病院が必要。拠点病院の多くは総合病院で、がん対策推進計画の遂行は現状困難。患者会との協働が求められる」(支えあう会「α」)

「市民のためのがん治療の会」代表の會田昭一郎氏は、放射線治療のレベル差の是正を訴えた
「市民のためのがん治療の会」代表の會田昭一郎氏は、放射線治療のレベル差の是正を訴えた

 「拠点病院のかなりが、放射線治療の専門医を有しておらず、放射線治療の実施率が低すぎる。(骨転移疼痛の緩和薬である)Sr-89は22%でしか使われていない。このレベル差の現状は国民をだましている」(市民のためのがん治療の会)

 「緩和治療の原則を知らない医師はかなり多い。各相談センターは、連携先の診療所が看取りまでちゃんと行ったかどうかをチェックすべきではないか」(千葉・在宅ケア市民ネットワーク ピュア)

 これらの指摘に対し、山口氏が「(イデアフォーの指摘に対して)使用したデータの一部は不正確なので、拠点病院の実績はおそらくいろんな形で確かめられる」「(市民のためのがん治療の会の指摘に対し)拠点病院の要件に放射線治療の体制は当初入ってなかったので、現状では仕方のない部分があり、更新時などに改めてチェックしてほしい。Sr-89もやれないからダメだというものではなく、できるところでと考えるべき」とフォローする一幕もあった。

 しかし、「患者会・支援団体の指摘は大枠で正しい。国の補助金はいつまであるか分からないのだから、地域の住民が拠点病院を育てるつもりで、これからも様々な指摘や働きかけを行ってほしい」として、山口氏は会議を締め括った。

(石垣 恒一)


この記事を友達に伝える印刷用ページ