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レポート

2008/12/9

がん治療と男性性機能障害

あきらめなければEDは克服する術がある

 「日本人はあまりセックスへの要望がないから」と、がん治療に伴う性機能障害について、多くの医療者はあまり触れないのが現状のようだ。しかし、性の問題に直面して一人で悩んでいる男性患者は少なくないと患者関係者はいう。がん治療は男性性機能にどのような影響を及ぼすのか、またどのような治療法があるのか……。「日本がんと性研究会」が10月26日に主催した講演会(講師:川崎医科大学泌尿器科学教室教授の永井敦氏)の内容をレポートしたい。



 「男性性機能のキーワードとして覚えておいていただきたいのは、NO(エヌオー:一酸化窒素)です」と永井敦氏は講演を切り出した。NOとは、性的刺激を介して生じ、勃起を生じさせるシグナル分子だ。

 永井氏は、勃起のメカニズムとして、「1)性的に興奮する→2)勃起させる神経からNOが出る→3)動脈血流が増える→4)勃起が起こる」と説明する。勃起障害(ED)とは、このメカニズムのうちのどこかに障害がある状態だ。すなわち、EDになる原因は、以下の3つに大別されるという。

●EDになる3つの原因
1)治療による影響から落ち込みが強い、うつ状態により、性的に興奮しなくなる。
2)がんの手術で勃起させる神経が傷ついたり切除され、NOがでなくなる。
3)手術で動脈に傷がついたり、糖尿病や動脈硬化・高血圧などによる血管障害により、動脈血流が増えなくなる。

 1)は、「手術や治療により生じた自分自身の体の変化から落ち込み、自分はダメだと思いこんでいる状態などで生じやすい」と、永井氏。

 一方、直腸がんや前立腺がん、膀胱がんなどの骨盤内の手術は、勃起に関与する神経を傷つけてしまうことがあり、2)を原因とするEDを生じやすいという。

選択肢が増えつつあるED治療
 では、EDの治療にはどのようなものがあるのだろうか。「NOを出す神経が残っていれば、バイアグラなどの勃起障害治療薬が有効」と永井氏。バイアグラ(一般名:シルデナフィルクエン酸塩)は、NOによって誘導されるcGMPという物質の分解を阻害する薬剤だ。国内には、同様の機序の薬剤として、レビトラ(一般名:バルデナフィル塩酸塩水和物)、シアリス(一般名:タダラフィル)という薬剤も承認されており、選択肢も増えているという。

 一方、NOを出す神経が残っていない場合には、「これらの薬剤は効かない」と永井氏。しかし「心配は無用」と力を込める。「このような場合には、陰茎海綿体注射もしくは、陰圧式勃起補助具が有効」という。

 陰茎海綿体注射とは、プロスタグランジンE1という薬剤を直接、陰茎に注射するというもの。プロスタグランジンE1は、筋肉を緩める作用があり、陰茎の筋肉が緩むことで動脈血流が増加し、勃起するという。

 「陰茎海綿体注射は、バイアグラなどの薬剤が効かない方に大変有効」と永井氏は話す。ただし、「日本では、保険承認されていないため、一部の施設で臨床研究の一部として利用されているのみ」と現状を語る。とはいえ、ED治療を行っている病院であれば、処方しているところが多いようなので、問い合わせるとよさそうだ。

 もう1つの選択肢である陰圧式勃起補助具とは、陰茎を筒状のポンプ内に入れ、陰圧にすることで物理的に膨らませるというもの。勃起を維持するため、輪ゴムのようなものを陰茎の根元にはめる必要がある。

 「陰圧式勃起補助具は、インターネットなどで入手することも可能。ただし、インターネットで出回っているものは、壊れやすいようだ」と永井氏。そのため、専門家の診察を受けたうえで、治療法を選択して欲しいという。

 このようにEDのメカニズムに沿った治療法は整いつつある。「ED治療の第一の目標は、満足のいく性的関係を回復すること」と永井氏。「そのためには、男女の性の違いを理解したうえで、パートナーとのコミュニケーションを大切にして欲しい」と締めくくった。

(小板橋 律子)

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