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レポート

2008/11/18

がん治療を始める前に

副作用予防のためにお口のケアを

 がんと診断されたとき、真っ先に何をするだろうか?セカンドオピニオンの意見を聞く、より自分に合った治療法を調べるーー。もちろん、そうしたことも大切だが、それと同時に始めてもらいたいのが、お口のケアだ。がんと口腔ケアにどのような関係があるのか不思議に思う人も多いだろう。実は、静岡県立静岡がんセンターの研究によれば、適切な口腔ケアにより、化学療法や放射線療法、術後の合併症のリスクが大幅に低減することがわかってきた。

 最近、「歯周病と糖尿病の関係」や、「歯周病と心筋梗塞の関係」など、口の中の病気が全身疾患にかかわるといったデータが次々に報告され、注目を集めている。歯周病菌などの口腔内細菌や、それらの細菌の抜け殻が体内に入り炎症を起こすことが主な原因だ。

 健康な人においても疾病予防の観点から口腔ケアは重要だが、実はがんなどで治療を受ける人にとっては、なおさら口腔ケアが大切になってくる。「特に治療前から口腔ケアをしておいてもらいたいのが、化学療法を受ける方、口腔領域に放射線治療を受ける方、そして食道や頭頸部の手術を受ける方」というのは、静岡県立静岡がんセンターの歯科口腔外科部長の大田洋二郎氏。

 その理由として大田氏は、「そのような方では、免疫力が低下しており、口腔内の細菌による影響をより受けやすい。米国がんセンターの調査では、化学療法を受けた患者の40%、骨髄移植を受けた患者の80%、口腔領域に放射線治療を受けた患者の100%で口内炎などの合併症が生じていた」と説明する。

 例えば、抗がん剤治療では、がん細胞とともに口腔内の正常な細胞も損傷する。すると、通常治療後5〜7日で口内炎が生じてくる。口内炎の痛みから、患者によっては、食べる、飲み込む、話すといったことが難しくなり、そのことが原因で治療の延期や中断を余儀なくされることもある。また、口内炎の傷口からの感染リスクも高まる。

 「化学療法を受けた患者のうち、口腔合併症を発症した人の約半数が、強度の口内炎を理由に治療のスケジュール変更や薬剤の投与量の変更が必要になったという報告すらある」と大田氏。

 放射線治療の場合には、放射線により唾液腺がダメージを受けて唾液が出にくくなり、口の中が乾いて唾液による浄化や口の中の保護ができなくなる。その結果、口腔粘膜の潰瘍や、口内炎の痛みによる開口障害、味覚障害、歯周病などの悪化が起こり、それがその後のがん治療の大きな妨げになるのだ。

 静岡がんセンターで、頭頸部の手術・放射線治療前に口腔ケアを行ったケースでは、口内炎の治りが早く、口内炎や手術の傷口からの感染による敗血症がなくなった。また、食事の経口摂取再開時期を1週間も早めることもできたという。「治療中、治療後のQOLの向上のためにも口腔ケアは不可欠」と大田氏は力説する。

お口のケアで肺炎発症リスクも低下
 食道や頭頸部の手術の場合、口腔ケアにより、命にも関わる“肺炎”という合併症のリスクを減らすこともできる。こうした手術では、術後の嚥下(飲み込み)機能が低下しやすい。このため、誤嚥を起こしやすく、口腔内のケアが行き届かずに不潔な状態にあると、唾液中の細菌が肺に入り肺炎のリスクが高まる。

 大田氏は「当院では、術後の口腔ケアを実施し始めてから、頭頸部進行がんの患者の術後の合併症は4分の1に減少し、肺炎の発症数も低減した」と話す。

 このように、口腔ケアが口内炎や肺炎、敗血症などの予防、症状緩和に有効なことは明らかだが、実際には何をすれば良いのか。

 「まずは、歯科医院で、虫歯や歯周病がないかどうか、義歯が合っているかなどをチェックしてもらい必要に応じて治療を行う。その上で、PTC(Professional Tooth Cleaning)といわれる歯科衛生士によるプロの口腔内クリーニングを受けてほしい。放射線治療や化学療法を受ける予定であれば、治療が始まる2週間前までに歯科医の診察を受けるといい」と大田氏。

 PTCでは、歯石や、日頃のブラッシングなどでは落としきれない歯と歯茎の間や歯と歯の間などの歯垢を取り除く。歯垢は細菌の塊。歯垢を除去することで、感染源を除去することになる。また、歯についた細菌だけでなく、ほおや歯茎などの粘膜や舌に付着した細菌を除去するのも効果的。専用のスポンジなどでやさしくこするといい。これは、がん治療が始まった後も同様だ。

 PTC自体にかかる時間は数時間。入院準備の一環として、口腔ケアを是非とも取り入れてほしい。(医療ジャーナリスト 武田 京子)

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