このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/10/28

【寄稿】パンキャンジャパン・アメリカ訪問記 --その1

膵がん診療の最前線を探る

 膵臓がん(膵がん)の診療・研究で世界をリードするメリーランド州バルチモア市に位置するJohns Hopkins病院。同病院は、US. News & World Report誌による全米病院ランキングで第1位であり、膵がん治療の患者数も治療成績においても全米第1位だ。膵がん診療の最前線を報告したい。(寄稿:NPO法人パンキャンジャパン事務局長 眞島 喜幸)




ジョンズホプキンス病院(Johns Hopkins Hospital)
ジョンズホプキンス病院(Johns Hopkins Hospital)

 米国がん協会(American Cancer Society)の統計によると、米国における膵臓がん罹患数は約3万7000人だ。主要がんの生存率はさまざまな要因から改善がみられるなか、膵臓がんの5年生存率は僅か4%であり、がんの死亡率で第4位となっている。日本においては、膵がんの発症数は年間約2万人と比較的少ないが、生存率の低さから死亡率は第5位だ。

 米国において膵がん治療数、治療成績ともにナンバーワンのJohns Hopkins病院では、毎年多くの膵がん患者が治療を受けている。同病院における外科療法の患者数だけでも年間250人以上で、我が国の専門病院の約5倍。米国の人口は我が国の約2.6倍ということから見ても、同病院に患者が集中していることがわかる。

膵臓がん多種職クリニック
 同病院では、Sidney Kimmel包括がんセンター(The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center)の一部として、膵がん患者に最高品質のケアを提供するための膵がん専門の多種職クリニックが開設された。

 このクリニックでは、膵がんの疑いのある、あるいは膵がんと診断された患者を対象に、Johns Hopkins病院のすべてのリソースを投入し、包括的な診断サービスの提供を目指している。多職種チームは、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、腫瘍外科医、消化器専門医、病理医、放射線専門医、遺伝子カウンセラー、全米家族性膵臓がん登録担当者、管理栄養士、ペインクリニック、ソーシャルワーカーから構成されている。

 持ち込まれた病理標本やMR胆管膵管撮影(MRCP)画像、CT画像、超音波内視鏡検査(EUS)画像、他の検査結果をベースに、膵がんの診断、治療、研究において全米トップの臨床医と専門家が参加する形でカンファレンスが開かれ、丸一日かけて、病期の診断(ステージング)から治療計画までがディスカッションされる。米国では、さまざまな専門医の意見を聞くことは常識とされているが、専門家が一同に集まり、患者の診断から治療計画までをディスカッションするケースはまれだ。

 このカンファレンスでは意見をいう場合、常に最新のエビデンスも同時に提示しなければならない。そのため、最高の治療法についてシビアな検討がされることが担保されている。また、同カンファレンスでは、病理診断の誤りが指摘されることや、ディスカッションの結果、治療方針が変更となるケースも多くみられるという。

 患者にとっての最善の治療計画が立案されると、患者とその家族にはリコメンデーションとして説明される。

 同カンファレンスの質の高さから、ジョンズホプキンスで診療を受けることを希望する患者は多い。遠方より同病院を訪れる患者のために考え出された米国ならではのセカンドオピニオンサービスと言える。日本の専門病院においてもこのような患者主体のサービスが提供される日が来ることを願う。

膵がん制圧は、患者・家族と研究者のコラボから
 膵がんの研究で世界をリードするのは、Johns Hopkins大学Sol Goldman膵がん研究センター(Johns Hopkins Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center)だ。

 同センターは母リリアンを膵がんで亡くした娘とその家族である、ゴールドマン家の寄付で設立された。父ソルと、母リリアンの功績を称え、Sol Goldman膵がん研究センターと命名された。米国では患者・家族は、病気を撲滅するために研究所あるいはお世話になった病院へ寄付し、またボランティア活動に参加したりして積極的にサポートする。この研究センターも例外ではなく、研究者と患者・家族のコラボレーションから生まれた。

Johns Hopkins大学Sol Goldman膵がん研究センターのラルフルーベン(Ralph Hruban)氏
Johns Hopkins大学Sol Goldman膵がん研究センターのラルフルーベン(Ralph Hruban)氏

 同研究センター長、病理学者であるラルフ・ルーベン氏(Ralph Hruban)から同研究センターについて伺った。

 「この研究センターが創られた背景には、Johns Hopkins病院の外科部長であったジョン・キャメロン氏(John Cameron)の活躍があった。当時、膵がん患者にとって唯一の治療法であった手術も合併症による死亡率が20%もあったため、広く普及しなかった。キャメロン氏の努力によってWhipple術が改善され、Johns Hopkins病院における死亡率が2%以下まで減少した結果、米国全土から膵がん患者が集まるようになった。当時の研究部長ヤードレー氏から膵がん患者が増えるということを聞き、同僚の研究者カーン氏とともに膵がんの研究への取り組みを始めた」とルーベン氏は語った。

膵がん患者団体の生みの親でもある研究センター長

ルーベン氏と日本からの研究者の皆さん
ルーベン氏と日本からの研究者の皆さん

 膵がん患者とその家族に情報を提供したいと、自らが費用を負担してウェブサイトを立ち上げたルーベン氏。その掲示板のメッセージを読み、掲示板で知り合った大勢の患者・家族が協力し、PanCan (Pancreatic Cancer Action Network) という患者団体が立ち上がった。その後、草の根運動を通して大きく成長したPanCanは、現在では、研究資金の提供などで同センターを支援している。研究者と患者のコラボが脈々と継続、維持されているといえる。

日米研究者による共同研究が進むJohns Hopkins大学
 ルーベン氏の好意により日本からの研究者の方々と意見交換することもできた。

 Johns Hopkins大学の研究者の努力によって、膵がん制圧にむけた一定の成果が出るのはそれほど遠い日ではないと感じた。一時も早く膵がんが根治される日が来ることを願う患者・家族に希望を与えることを目指して、日々研究に励む皆さんの顔が輝いて見えた。

<その1:おわり>


【参考サイト】
NPO法人パンキャンジャパン
PanCan (Pancreatic Cancer Action Network)
全米病院ランキング(USNニュ-ス&ワールド誌)US News & World Report/Best Hospitals(英語)
Johns Hopkins病院Sidney Kimmel包括がんセンター(The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center)
Johns Hopkins大学Sol Goldman膵がん研究センター
 Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center



この記事を友達に伝える印刷用ページ