このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/10/21

乳がん診療ガイドライン改訂版−疫学・予防

乳がん予防のサプリメントは推奨しない

 「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン」のうち、「外科療法」「放射線療法」「検診・診断」「疫学・予防」が3年ぶりに改訂された。9月26日、27日に大阪で開催された日本乳癌学会では「乳癌診療ガイドライン2008年版改訂の説明」と題した特別報告があり、各ガイドラインの改訂に携わった委員から、改訂のポイントが説明された。ガイドライン改訂に関する3回目のレポートでは、項目数が倍増し、大幅改訂となった「疫学・予防」の改訂ポイントを解説する。



 「今回の改訂では、社会、一般臨床医の関心の高い疑問点に答えることを目的に、高いエビデンスレベルの存在しない項目も網羅した」と語るのは、「疫学・予防」の改訂を率いた、広島大学原爆放射線医科学研究所の村上茂氏。そのため、今回の改訂では、前回に比べて大幅に記載項目が増えている。また、これまで利用していた『推奨グレード』では分類できない項目に関しては、『エビデンスグレード』で発がんリスクの根拠レベルが呈示された。

乳がんの発症リスクを下げるためにできること

※エビデンスグレード
Convincing(確実):発がんリスクに関連することが、確実であると判断できる十分な根拠があり、予防行動を取ることが勧められる。
Probable(ほぼ確実):発がんリスクに関連することが、ほぼ確実であると判断できる十分な根拠があり、予防行動を取ることが一般的に勧められる。
Limited-suggestive(可能性あり):「確実」「ほぼ確実」とは判断できないが、発がんリスクとの関連性を示唆する根拠がある。
Limited-no conclusion(証拠不十分):データが不十分であり、発がんリスクとの関連性について結論付けることができない。
Substantial effect on risk unlikely(大きな関連なし):発がんリスクに対して実質的な影響はないと判断する十分な根拠がある。

 今回の改訂では、サプリメントに関する項目が新たに加わった。「乳がんのリスクを減少させる目的で、サプリメントを服用することは勧められない」(推奨グレードD)とされた。世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)による報告書においても、がん予防の目的でサプリメントを服用することは推奨されておらず(関連記事)、今回改訂されたガイドラインにおいても同じ結論となった。サプリメントに頼らず、バランスのよい食事をすることが大切といえる。

 『エビデンスグレード』に沿って発がんリスクの有無を見てみると、今回の改訂で発がんリスクがあることが『Convincing (確実)』とされたのは、閉経後の肥満、高線量の放射線被曝、良性乳腺疾患(異型過形成)の既往、乳がんの家族歴、閉経後のエストロゲン・プロゲスチン併用のホルモン補充療法だ。

 ただし、同じホルモン補充療法でも、エストロゲン単独の補充療法が乳がんのリスクに関連するかどうかは、結論付けられていないとされた。

 逆に、乳がんの発症リスクを下げることが『確実』とされたのは、出産経験(初産年齢が低いほどリスクは低くなる)、授乳経験(授乳期間が長いほどリスクは低くなる)であった。

 『確実』よりも不確定ではあるが、発がんリスクがあることが『Probable(ほぼ確実)』となったのは、アルコール摂取、早い初経年齢であった。アルコールに関しては、飲酒量が増えるほど発がんリスクは高くなるとしている。

 逆に、発症リスクを下げることが『ほぼ確実』なのは、閉経前の肥満、閉経後の運動となっていた。肥満は、閉経後においては発症リスクを上げることが確実とされており、閉経の有無によって乳がんとの関連に差があることが示された。

 また、緑茶や大豆、イソフラボン摂取による乳がんの発症予防効果については、『Limited-no conclusion(証拠不十分)』とされ、予防効果の有無は結論に至っておらず、更なる検討が必要とされた。

 発がんリスクに関して要約すると、乳がんの発症リスクを下げるために努力できることとしては、閉経後の肥満を避けることが最も重要そうだ。肥満を避けるために運動を積極的に行うことも勧められる。加えて、アルコールの過剰摂取も控えた方がよさそうだ。

発症予防のための治療は推奨グレードC
 海外では、乳がんの発症リスクが高い女性に対して、発症予防の目的でタモキシフェンやラロキシフェンなどの薬物投与が行われている。ただし、今回のガイドラインでは、「重篤な有害事象が起こることもあり、日本人における乳がん発症リスクがまだ明らかになっていないため、日常診療で勧めるだけの根拠が不十分」(推奨グレードC)となった。

 加えて、乳がん家族歴を有する女性に対して、自身の乳がん発症リスクを検査する目的で行われるBRCA1もしくはBRCA2の遺伝子変異検査も、「有効な予防法、検診法、治療法、カウンセリング制度が確立されていない日本の現状では、日常診療で勧めるだけの根拠が不十分」(推奨グレードC)とされた。

 また、BRCA1もしくはBRCA2遺伝子変異を有する女性に対して、未発症の段階で予防的に乳房を切除すること、また、乳がん発症リスクを軽減させる目的での予防的卵巣切除も、「日常診療で勧めるだけの根拠は不十分」(推奨グレードC)に留まった。

 ただし、発症リスクが高い女性に対する予防的な治療は、乳がんによって命を落とす危険から多くの女性を守る可能性を秘めている。そのため、今後、遺伝子検査を行うための体制の整備は、ガイドラインのなかでも“急務”と位置づけられた。

(小板橋 律子)


※推奨グレード
A:十分なエビデンスがあり、推奨内容を日常診療で積極的に実践するよう推奨する。
B:エビデンスがあり、推奨内容を日常診療で実践するよう推奨する。
C:エビデンスは十分とはいえないので、日常診療で実践する際は十分な注意を必要とする。
D:患者に害悪、不利益が及ぶ可能性があるというエビデンスがあるので、日常診療で実践しないよう推奨する。


この記事を友達に伝える印刷用ページ