このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/10/14

乳がん診療ガイドライン改訂版−放射線療法

乳房温存手術後の放射線照射回数を減らせるか?

 「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン」のうち、昨年、一足先に改訂された「薬物療法」以外の「外科療法」「放射線療法」「検診・診断」「疫学・予 防」が3年ぶりに改訂された。9月26日、27日に大阪で開催された日本乳癌学会では「乳癌診療ガイドライン2008年版改訂の説明」と題した特別報告があり、各ガイドラインの改訂に携わった委員から、改訂のポイントが説明された。ガイドライン改訂のポイントを項目ごとに紹介したい。2回目は、転移巣の治療に関して、より詳細な記載が加わった「放射線療法」の改訂ポイントを解説する。



 「乳癌診療ガイドライン(放射線療法)」の今回の改訂では、新たに温存療法後の放射線治療の新しい方法である寡分割照射、脳転移、骨転移への放射線治療に関する記載が追加された。

乳房温存手術後の放射線療法は照射回数を減らせるか?
 今回のガイドラインでは、乳房温存手術後に行われている放射線療法において、新しい項目が加わった。加わったのは寡分割照射。これは、標準的となっている約25回の分割照射の回数を約半数に減らし、1回の照射線量を増やすという照射法だ。ガイドラインでは、至適な線量・分割については、現在進行中の臨床試験の結果を待つ必要があるとしつつも、「遠隔地など通院が困難な状況では寡分割照射も許容し得る方法」となった。推奨グレードはCだ。

 現在、乳房温存手術後は、5〜6週間、平日は毎日放射線照射を受けることが一般的だ。そのため患者は毎日通院するか、通院可能な場所に放射線照射の施設がない場合には長期の入院が必要になる。今後、新たな臨床試験により、照射回数を減らしても乳房内再発率が上昇しないことが示されれば、患者の負担減にもつながると期待される。

術後の抗がん剤治療がない場合は8週以内に放射線治療を開始
 今回のガイドラインで新しく加わったもう1つの項目は、放射線治療のタイミングについてのものだ。「術後化学療法を行わない患者では、術後8週間以内の放射線治療開始が勧められる」(推奨グレードB)とされた。

 「抗がん剤治療を行わない場合には、術後できるだけ早く、放射線治療を行うという意味」と、今回の改訂作業に加わった、聖路加国際病院放射線科の関口建次氏は説明する。

 術後に抗がん剤治療が予定されている場合は、前回の内容同様、抗がん剤治療後の放射線療法が推奨された。

転移巣への放射線療法
 今回のガイドライン改訂では、転移巣(骨転移、脳転移)の治療に関する記載が増えた。骨転移による疼痛緩和に対する放射線治療として、分割照射、1回照射、Sr-89によるアイソトープ治療の使い分けが記載された。

 分割照射(20Gy/5回〜30Gy/10回)は、従来から行われている放射線治療だ。近年、8Gy/1回の単照射の有用性が示されてきている。単照射の場合、患者は通院の負担が少ないというメリットが大きい。ガイドラインでは、これまでの研究成果から、痛みの軽減効果に関しては分割照射と単照射に差は無いとした。しかし、同一部位への再照射が必要になる割合(単照射で21.5%、分割照射で7.4%)、病的骨折の割合(単照射で3.0%、分割照射で1.6%)が、単照射では高くなる傾向があるとした。そのため、単照射は選択肢としつつも、長期予後が期待できる場合には、分割照射が勧められるとしている。

 また、2007年秋に発売され話題となっている、がん骨転移疼痛緩和薬塩化ストロンチウム(Sr-89、商品名「メタストロン」)に関しても言及した。

 「通常の鎮痛剤や外照射で制御できない多発性骨転移に対して考慮され、疼痛部位と骨シンチグラフィ異常集積部位が一致しなければならない」とされた。加えて、抗がん剤と併用する場合にも慎重に投与すべきとなった。

 また、脳転移に対する放射線治療については、脳転移の数が1〜3個の場合、4個以上の場合に分けて、それぞれで治療法が推奨された。

 具体的には、1〜3個までの脳転移には、最初に定位放射線治療を行い、さらに全脳照射の併用が勧められた(推奨グレードB)。併用を推奨する理由として、定位放射線治療による積極的な治療により、生存期間の改善などが期待できるものの、全脳照射を省くと脳内再発が上がることが示されているという。

 4個以上の多発脳転移に対しては、「最初に全脳照射が勧められる」(推奨グレードB)が、「最初に定位放射線治療を行うことは勧められない」とされた。多発脳転移に対しては、一部の医療機関における定位放射線治療の乱用が問題となっており、今回のガイドラインが歯止めをかけることを期待したい。

(小板橋 律子)

この記事を友達に伝える印刷用ページ