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レポート

2008/10/7

乳がん診療ガイドライン改訂版−外科療法

乳房再建術を初めて推奨

 「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン」のうち、昨年、一足先に改訂された「薬物療法」以外の「外科療法」「放射線療法」「検診・診断」「疫学・予防」が3年ぶりに改訂された。9月26日、27日に大阪で開催された日本乳癌学会では「乳癌診療ガイドライン2008年版改訂の説明」と題した特別報告があり、各ガイドラインの改訂に携わった委員から、改訂のポイントが説明された。ガイドライン改訂のポイントを項目ごとに紹介したい。1回目は、乳房再建術を初めて推奨した「外科療法」の改訂ポイントを解説する。



 「乳癌診療ガイドライン(外科療法)」の今回の改訂では、センチネルリンパ節生検やリンパ浮腫に対する治療、鏡視下手術やラジオ波熱凝固療法などの非切除治療、乳房再建術、進行・再発乳がんの外科治療などに関する項目が新たに加えられた。

乳房再建術を初めて推奨
 外科療法の改訂作業を率いた、愛知県がんセンター中央病院乳腺科部長の岩田広治氏が「今後、増えるだろう」と予想するのは、乳房再建術だ。

 今回のガイドラインでは、乳房再建術を勧める文章が初めて登場した。「早期乳がんの乳房切除後の乳房再建は再発診断の遅れにつながることはなく、安全性の面でもQOLからも勧められる」(推奨グレードB)となった。また、「再建後のQOL向上は明らかであり、本人が希望する患者には積極的に勧められる手技である」と結論された。

 初版の文面が「乳房再建(インプラント、自家組織)は再発診断の遅れにつながるだけの根拠に乏しい」という消極的な文面から大きな変化といえるだろう。今回の改訂を受け、患者に対して乳房再建の選択肢を呈示する医師が増えることを期待したい。

 ただし、放射線照射後の乳房再建では、合併症が生じやすいという問題がある。乳房温存術に続けて放射線照射を行った場合には、乳房再建という選択肢が難しくなることも周知される必要があるだろう。

非常に早期であればリンパ節生検も不要に
 マンモグラフィの普及により、非常に早期の乳がんである術前診断が非浸潤性乳管がん(DCIS)として発見される患者が増えている。基本的に、DCISはリンパ節転移を生じない。とはいえ、依然、リンパ節郭清を受けている患者は少なくない。

 今回の改訂では、DCISに対して、どのようにセンチネルリンパ節生検を利用したらよいかが示された。具体的には、DCISで、一部浸潤が疑われる場合には、推奨グレードBでセンチネルリンパ節生検が推奨された。ただし、詳細な病理診断により、浸潤が無いDCISと診断された患者に対しては、リンパ節転移の可能性は否定されるため、センチネルリンパ節生検を勧める根拠は乏しい(推奨グレードC)となった。

 すなわち、今回のガイドラインでは、微小な浸潤がない完全なDCISであればリンパ節生検は省略し得ることが示されたと言えよう。ただし、微小な浸潤までを完全に否定することは困難な場合も多く、そのような場合には、センチネルリンパ節生検が必要と理解できるだろう。

 この新しい項目の追加により、DCIS患者に対する、ある意味、過剰治療ともいえるリンパ節郭清が減少することを期待したい。

複合的治療がリンパ浮腫対策として推奨
 リンパ浮腫に対する治療の新項目では、「弾性着衣や弾性包帯による圧迫療法、リンパドレナージなどの複合的治療は勧められる」(推奨グレードB)となった。

 リンパ浮腫は、脇の下のリンパ節の切除や放射線照射により発生する後遺症だ。腕がむくみ(腫れ)、腕が上がらない、腕や肩が張る・痛むなどの症状からはじまり、重症化すると蜂窩織炎という感染症に罹りやすくなる。

 新規項目では、リンパ浮腫に対して、弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法やリンパドレナージ、スキンケアや運動療法などを組み合わせた治療の有効性が示されているとされた。

 一方、リンパ浮腫治療のために、試みられている外科的な治療(リンパ管吻合術:関連記事参照、リンパ管切断移植術や自家静脈移植片の挿入など)に関しては、エビデンスレベルの高い研究報告がないという理由から、日常診療で行う際には、その適応を含めて十分な注意が必要とされた(推奨グレードC)。

鏡視下手術や非切除治療は“まだ、未知数”の治療法
 乳房にキズをつけないために開発され、2002年から保険収載されている鏡視下手術(関連記事)に関しても、今回のガイドラインは初めて言及した。

 通常の手術と比較したランダム化比較試験などのエビデンスレベルの高い研究報告がないことから、「現時点で標準的な局所療法とはいえないので、行う際には十分な注意を要する」(推奨グレードC)となった。

 一方、集束超音波やラジオ波などを用い、手術を行わずに治療するという非切除治療(Non-surgical ablation)に関しても今回のガイドラインは初めて言及した。非切除治療は、「乳房温存手術と同等の局所治療効果を有するとの根拠はなく、実地臨床で行う治療とはいえない」(推奨グレードC)とされた。

 乳がんを対象とした非切除治療は、保険収載に至っておらず、研究段階の治療法だ。そのため、「実際の日常診療で行うことは時期尚早であり、臨床試験として実施すべきもの」と結論されている。

 岩田氏は、「どちらの治療法も、推奨グレードC。推奨グレードCとは、今後、研究が進むことで、推奨グレードBにも推奨グレードDにもなり得るものであることを、再度、ご認識いただきたい」と語り、今後のデータ集積が必要であり、将来、推奨される治療法になるか否かは、未知数であることを強調した。

進行・再発乳がんへの手術法
 「ここは、国際的にも非常にホットな話題」と岩田氏は、進行・再発の乳がん患者に対する原発巣の切除について解説した。

 転移のある乳がんは、全身病であり全身的な薬物療法が推奨されている。そのため、これまで、生存率の延長を目的とした外科切除は勧められていない。ただし、近年、いくつかの後ろ向きの研究から、外科切除による有効性が示され、外科切除の適応が見直される傾向があるためだ。

 とはいえ、これまでに発表された研究成果からでは、原発巣の切除による生存率が改善するか否かは、不明であり、今回のガイドラインでは、「術後の生活において切除による局所コントロールのベネフィットが十分に得られるような患者を選ぶことが望ましい」とされた。

 加えて、「肺・骨・肝転移巣に対し、生存延長を目的とした外科的切除は行うべきではない(推奨グレードD)とされた。これらの転移巣に対しては、痛みの緩和などQOLの改善を目指した手術は行われ得るが、治療効果を狙うことは勧められないとされた。

 一方、脳転移の外科的切除に関しては、脳転移が1個のみであれば考慮されるが、外科切除と定位放射線治療の治療成績に差はないと明記され、体への負担の大きい、脳転移の手術は、「積極的には勧められない」(推奨グレードC)となった。

(小板橋 律子)

※推奨グレード
A:十分なエビデンスがあり、推奨内容を日常診療で積極的に実践するよう推奨する。
B:エビデンスがあり、推奨内容を日常診療で実践するよう推奨する。
C:エビデンスは十分とはいえないので、日常診療で実践する際は十分な注意を必要とする。
D:患者に害悪、不利益が及ぶ可能性があるというエビデンスがあるので、日常診療で実践しないよう推奨する。


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