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レポート

2008/9/16

再発予防にも役立つ

エビデンスに基づいたがん予防のための食事とは?

 がんの再発を予防し、がんと共存するために、どのような食事をすべきか――これは、がん経験者(サバイバー)にとって大きな関心事だ。一方で、“がんに効く”と称される食品やサプリメントも多数出回っている。9月8日から11日の4日間、“栄養士界のオリンピック”と称される国際栄養士会議が横浜市で開催された。この会議で、科学的エビデンスに立脚したがん予防に役立つ食事・運動の詳細が発表された。



 国際栄養士会議は、世界各国から約3000人の管理栄養士や栄養士が集う国際的な会議だ。今回、同会議で、「がんの予防と栄養・食品・運動」というシンポジウムが開催された。同シンポジウムには、世界がん研究基金/米国がん研究協会(WCRF/AICR)が2007年11月に発表した報告書「食品、栄養、運動とがんの予防:世界的展望」の作成に関わった研究者達が集まり、同報告書の詳細を報告した。

 同報告書は、世界から21人の研究者がパネリストとして参加し作成したもの。今回のシンポジウムは、WCRF/AICRのパネリストのうち、唯一日本から参加した九州大学医学部名誉教授の廣畑富雄氏が座長を務めた。また、同じパネリストであった英国Rowett前栄養研究所長でロンドン大学名誉教授のPhilip James氏と、米国ハワイがんセンター副所長のLaurence Kolonel氏も、今回のシンポジウムに参加した。

 廣畑氏によると、同報告書のなかで特に重要なのは、右の表に示すマトリックスだ。各項目に関連する多数の論文を拾い上げ、予防効果の有無を科学的に評価したうえで、色分けがなされているという。加えて、報告書の要約となる「がん予防に関する10カ条」(文末の囲み参照)も紹介された。

 同10カ条は、個人への推奨と、公衆衛生上のゴールに分かれている。「例えば、推奨4の部分で、野菜と果物の推奨摂取量が、個人への推奨では毎日400g以上であり、公衆衛生上のゴールの600g以上と異なる。これは、集団として目標はあくまで600g以上だが、個人レベルでは最低でも毎日400g以上を取って欲しいという意味」と廣畑氏は解説する。

 また、飲酒に関しては、男性と女性で上限量が異なる。これは、「女性では、飲酒による乳がんのリスクが高まるため」(廣畑氏)ということだ。多くのがん患者が使用経験を持つサプリメントに関しては、「サプリメントの利用が重要な場合もあるが、がん予防という観点からは、サプリメントに有用性は示されていない」と断言した。

 一方、Kolonel氏は、「膨大な論文のレビューの結果、植物性食品を中心とした食事により、口腔がん、咽頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、膵がん、結腸直腸がんのリスクが低下することが確実」と語った。また、植物性食品を中心とすることで、動物性食品の摂取量が減り、過体重や肥満の予防にもつながり、がんのみでなく、循環器系の疾患の予防にも有効とした。

 James氏は、肥満とがんに関する発表を行い、「これまでの体系的なレビューから、過剰体重が食道がん(腺がん)、膵がん、結腸直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮内膜がん、腎臓がんのリスクを高めることが明らかとなっている」と語った。加えて、「世界中で成人・小児とも過剰体重の割合が増加しており、この傾向になんとか歯止めをかける必要がある」とも力説した。

 James氏によると、1950年代の日本人は、脂肪の摂取量も少なく、過体重の割合も少ないという理想的な状態だった。しかし、現在、脂肪摂取量は増加し、過体重の人の割合も増加している。現在、日本ではメタボ検診の導入など、過体重・肥満への健康指導が充実してきている。適正体重の維持は、がん予防という観点からも重要といえそうだ。

(小板橋 律子)



●がん予防に関する10カ条(個人に対する推奨、公衆衛生上の目標)
推奨1)体重:できる限り正常体重を保つこと
★個人に対する推奨
子供から思春期を経て21歳になるまでは、将来過体重にならないように注意し、21歳以降は、正常BMIの値を維持する(より低い値が望ましい)。また、成人では、体重とウエスト周りの増加を避けること
◆公衆衛生上の目標
成人の平均BMIを21から23の間とする。過体重、肥満の割合を現状よりも増やさず、下げる。

推奨2)身体活動:日々の生活で、きちんと運動すること
★個人に対する推奨
毎日最低でも30分の中等度(早歩き換算)の運動をする。運動に慣れたら、毎日60分以上の中等度の運動、もしくは30分以上の精力的な運動を行う。
◆公衆衛生上の目標
身体活動量の少ない人の割合を10年ごとに半減させる。平均的な身体活動度(PALs)を1.6以上とする

推奨3)体重増に寄与する食物と飲料:高カロリーの食品を制限し、糖分の多い飲料を避けること
★個人に対する推奨
高カロリーの食品を控え、糖分の多い飲料を避ける。ファーストフードを控える。
◆公衆衛生上の目標
高カロリー食の平均カロリー数を、100gあたり125kcal以下とする。糖分の多い飲料を摂取する人の割合を10年ごとに半減させる。

推奨4)植物性食品:植物性食品を主体とした食事をすること
★個人に対する推奨
非でんぷん性の野菜や果物を平均して毎日400g以上食べること。精製度を抑えた穀物や豆類を毎食、食べること。精製度の高い穀物をあまり食べないようにし、でんぷん性の根菜類を主食とする場合、同時に非でんぷん性の野菜や果物、豆類を十分食べること
◆公衆衛生上の目標
非でんぷん性の野菜や果物を平均して毎日600g以上摂取すること。非でんぷん性のポリサッカライド(多糖類)25g以上を摂取できるよう、毎日、精製度を抑えた穀類や糖類、他の食物線維を含む食品を摂取すること

推奨5)動物性食品:赤肉類(牛肉、豚肉、羊肉など)の摂取を控えめにして、加工された肉はできるだけ食べないこと
★個人に対する推奨
赤肉を食べる場合、一週間に500g以下とし、加工肉はできるだけ食べないこと(ただし、鶏卵、鶏肉、魚介類の摂取制限はない)
◆公衆衛生上の目標
平均的な赤肉類の摂取量を週300g以下とし、加工肉は非常に少量に抑える

推奨6)アルコール:飲酒を控えること
★個人に対する推奨
もし飲酒をするのであれば、男性であれば毎日2合以内、女性であれば1合以内とする
◆公衆衛生上の目標
推奨される量を超えて飲酒する人の割合を10年ごとに3分の1にする

推奨7)保存、加工、調理:塩の摂取を制限し、カビで汚染された穀類や豆類の摂取を避ける
★個人に対する推奨
塩蔵品や塩辛い食品を避け、食品を保存する場合は塩を用いずに保存する。1日の塩の摂取は6g以下とする。カビの生えた食品を食べない
◆公衆衛生上の目標
1日の平均塩摂取量を5g以下とする。1日に6g以上の塩を摂取する人の割合を10年間で半減させる。カビ由来の毒素(アフラトキシン)への暴露を最低限にする。

推奨8)サプリメント:サプリメントを取らず、食事から栄養を満たすようにする
★個人に対する推奨
がん予防において、サプリメントは推奨されない
◆公衆衛生上の目標
サプリメントに頼らずに、食事で栄養を満たしている人の割合を極力高める

特別推奨1)授乳:生後6カ月までは母乳のみで育てることを目指し、6カ月以上でも母乳を続ける
◆公衆衛生上の目標
多くの母親が生後6カ月までは母乳のみで育てるようにする

特別推奨2)がんサバイバー:がん予防に関する推奨に従うこと
●がんサバイバーは、栄養に関する専門知識を持つものから指示を受けること。他の助言を受けていない限りは、この推奨に従うこと
※もちろん、喫煙を控え、受動喫煙も避ける

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