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レポート

2008/7/8

寄稿:2008ASCO体験記(その1)

患者・支援団体の参加を歓迎するASCO(上)

 通称ASCO(アスコ:American Society Clinical Oncology:米国臨床腫瘍学会)の年次総会が、2008年5月30日から6月3日までの5日間の日程で、米国シカゴで開催された。ASCOには、医師、研究者、製薬企業関係者のみでなく、患者・支援団体(Patients Advocates)も全世界から多数集結する。患者・支援団体の一員としてASCOに参加したので、患者側の視点から今年のASCOを紹介したい。(NPO法人キャンサーネットジャパン 事業戦略部門・事務局長 柳澤 昭浩)


 毎年、ASCOには全世界より3万人を超える参加者がある。その多くは、医療者・研究者だが、患者・支援団体(Patients Advocates)からの参加者が多いのもASCOの大きな特徴だ。

 ASCOでは、毎年、標準治療を塗り替えるような研究成果が発表される。この患者にとっても非常に重要なニュースを聞くために全世界から患者・支援団体が自発的に集結している結果、多くの患者・支援団体が参加しているともいえる。しかし、実はそれだけではない。ASCOが積極的に患者・支援団体の参加を支援し、歓迎していることも大きく影響しているだろう。

 ASCOがどのようなプログラムを用意し、患者・支援団体の参加を支援しているかをまず紹介したい。

患者向けの情報を提供する「Patients Information」
写真1:患者向けの情報を提供する「Patients Information」

 ASCOに参加するためには、正会員、準会員、研修医、非会員(一般)などの別で参加費が異なっている。そのなかで、患者・支援団体に所属している場合、各団体2人までディスカウントされた価格で、参加申込みが可能だ(ただし$250、日本円で3万円弱と決して安くはない)。筆者は、残念ながら事前にこの情報を得ておらず、その3倍以上もする一般枠で参加した。来年は是非この申込みを利用しようと考えている。

 またASCOは、学会への参加費用を助成するプログラム(助成金プログラム)も提供している。このプログラムの対象者は、旅費、宿泊費、学会への参加費の支援を受ける事ができる。

 今回日本からは、この助成金プログラムを利用して2人の患者会関係者が参加していた。乳がん患者会VOL-Netから大沢かおり氏と、日本すい臓がん患者会(パンキャン ジャパン)の眞島喜幸氏だ。

 恐らく来年2009年においても同様のプログラムが用意されると思われるので、興味のある方はASCO患者向けウェブサイト「Cancer.Net」を参照されたい。

患者専用の参加登録窓口やラウンジを用意
 そして、学会当日。3万人以上もの参加者が一同に会するこの学会では、セッションが集中する時間は、さながら朝の通勤ラシュの如き風景となる。
この期間中は、シカゴの街の至るところで、会場と主要ホテル間をバスが巡回していた。

 そんな巨大なASCOの学会展示場正面には、患者向けの情報を提供する「Patients Information」が設置されていた(写真1)。この窓口で、患者や患者支援団体などの関連者は、学会に関するあらゆる情報を入手できる。

「Patient Advocates」のリボン
写真2:「Patient Advocates」のリボン

 そして場内には、患者・支援団体用の専用ラウンジも用意されていた。このラウンジで、患者や患者支援団体などの関連者は、格安の料金で参加登録を行える。また、このラウンジでは、患者団体(患者支援団体)として参加しているという印「Patient Advocates」のリボン(写真2)も配布していた。このリボンを持っている参加者は、このラウンジを自由に利用することができる。

 ラウンジには、常にコーヒーその他の飲料や軽食が置かれている。加えて、複数のネット環境にあるPCが用意されており、これも自由に利用することができる。また、ASCOが用意する様々な患者向け資材も陳列されていた。患者の立場で参加する者にとっては大変快適で、また異なる団体の交流の場ともなっていた。筆者も毎日のようにここを利用した。

特別展示ブースも患者・支援団体向けに提供
 ASCOには、展示ブースが大小合わせて400以上設置されているが、展示ブースでも患者・支援団体は特別な待遇を受けていた。

 ASCOは、まず、基準を満たした20の団体に対して、展示場入り口近くの最もロケーションの良い場所を提供していた。ここでは、各団体がこの学会に参加する医療者へ、各団体が用意するサービスや資材を提供し、患者・支援団体と医療者のコミュニケーションの場となっている。

 この20団体から漏れた団体に対しても、ASCOは、通常の営利企業の展示者の10分の1以下の出展料でブース出展を認めていた。今年は、約40の患者・支援団体がブースを出展していた。全体のブース数に占める患者・支援団体のブース数は約1割程度ということだ。製薬企業や医療機器企業による製品の情報提供や資材の展示、加えて米国国立がん研究所(NCI)などの公的機関の展示のなかで、患者・支援団体の存在がアピールされていた。

がんサバイバーにはリボンで敬意を表明
 またASCOは、がんサバイバー(がん経験者)に対して、がんサバイバーリボンを配布し、敬意を払っている。M.D Anderson Cancer Centerで臨床腫瘍内科医として活躍する上野直人氏の胸元には、がんサバイバーリボンが付いた参加証が光っていた。上野氏は、昨年末にがんが発見され、今年頭に治療を受けたばかりのがんサバイバーだ。(関連記事:がん専門医が、がんになって -- 「患者への遠慮や配慮が、患者を傷つけることもある」)。

「臨床腫瘍内科医として、また患者として、がんサバイバーリボンをつけて、この学会に参加している事が多少恥ずかしい」と笑う上野氏
写真3:「臨床腫瘍内科医として、また患者として、がんサバイバーリボンをつけて、この学会に参加している事が多少恥ずかしい」と笑う上野氏

 「臨床腫瘍内科医として、また患者として、がんサバイバーリボンをつけて、この学会に参加している事が多少恥ずかしい」と笑う上野氏の笑顔が印象的であった(写真3)。

 昨年のASCOに参加した、NPO法人女性特有のがんのサポートグループであるオレンジティの河村裕美氏は、「患者に対して、尊敬の念を持って歓迎していることを感じた」と語っていた。実際、筆者も、今年のASCOに参加し、会場のいたるところで、患者や支援団体に対する歓迎を感じることができた。

 2009年の日本癌治療学会総会の会長となっている岩手医科大学医学部産婦人科教授の杉山徹氏は、今回のASCOで患者・支援団体用のラウンジなどを視察し、「是非、日本の学会でも取り入れたい」と語っていた。日本の学会で、学会正面入り口に患者用の参加登録窓口が設置される日は遠くないかもしれない。

【参考ウェブサイト】
米国臨床腫瘍学会(ASCO)
ASCO2008のWebサイト

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