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レポート

2008/6/10

がんサバイバーの本音

「自分が助からないと、お腹の子も助からない」

妊娠中に乳がんの手術と抗がん剤を体験

 妊娠前に乳腺線維腺腫と診断されていた"しこり"が、妊娠と同時に大きくなり、突然の乳がん告知。妊娠中に手術、抗がん剤治療を受けた後、無事、女児を出産した。「抗がん剤の副作用は想像していたほどひどくなかった。この子が守ってくれていたのかも」と当時を振り返る。妊娠中に乳がんの治療を受けた自分や子供が、今、元気に普通の生活を送っていることを、同じ境遇の女性や医療者に知って欲しいと思っている。

 妊娠前に自分でしこりに気付いたため、乳腺を専門とする医師の診察を受けました。その医師からは良性の乳腺線維腺腫との診断を受け、良性なのだと信じて疑わずにいました。その医師には妊娠についても相談しました。「妊娠することには、まったく問題ない」という回答を得たうえでの妊娠でした。34歳のときです。

 ところが、妊娠と同時にしこりが大きくなってきたのです。再度、医師の診察を受け、念のためにと、細胞診を受けました。しかし、細胞診の結果から乳がんという話は出ず、手術で取った方がいいかもしれないけど、うちの病院は改装するので対応できないから、どこかの病院に紹介するといわれました。

 次に紹介を受けた病院で、再度、生検を受け、このとき、突然、乳がんの告知を受けました。それまで、「絶対に良性」と言われ続けていたので、乳がんといわれたときは、本当にびっくりしました。

 乳がんの診断を受けたとき、妊娠は15週目。その医師は、妊娠中ということで、「僕には治療はできない」と正直に言われました。また、「5年前だったら中絶が当たり前だったと思うが、今は変わってきているようだ」ということで、妊娠中の乳がん治療の経験をもつという聖路加国際病院を紹介されました。

 中絶を勧める人は周囲にいませんでしたね。私もあきらめることは考えなかったです。ただ、近所で妊娠の経過を診てもらっていた医師からは、「子供の命を取るか、親の命を取るかを考えなくてはいけないときが来るかもしれない」と諭されました。最悪のときのために心構えを付けさせてくれたのかなと思っています。

治療は想像ほど辛くなかった、お腹の子が守ってくれていたのかも
 聖路加国際病院では、ブレストセンター長の中村清吾先生から、「(乳がんの治療を受けながら)出産している方もいるから、大丈夫」と言われました。ただ、安定期に入ったら直ぐに手術した方が良いということで、直ぐに手術の日程も決めてもらいました。

 私の乳がんはステージ1の早期ではあったのですが、3カ所に散らばっていて、先生から乳房を温存すると、取り残してしまう危険性があると。そのため、温存したかったのですが、全摘する手術となりました。実は、つい最近、再建手術を受け、そのとき、医師から温存して放射線治療を受けた場合には、皮膚が縮むから再建しづらくなるという話を伺いました。今は、全摘という選択をしてよかったと思えるようになりました。

 手術の前夜は緊張して眠れなかったです。ただ、手術後、産婦人科の医師が胎児の状態を超音波検査で診てくれて、「順調ですね」と。その言葉に安心した記憶があります。

 抗がん剤治療は、その後、4サイクル受けました。テレビなどで知っている抗がん剤治療のイメージは、吐き気が強くて、髪の毛が全部抜けてしまうというものですが、吐き気止めが効いたのか、私は一度も吐きませんでした。つわりの時の方が強い吐き気だったぐらいです。また、髪の毛はかなり抜けましたがカツラが必要なほどではありませんでした。

 なんだか、お腹の子供に守られているような気がしましたね。

 告知を受けたばかりの頃は、あれだけ良性だっていわれていたんだから、『ウソでしょ』という思いが強くて、どこかでやっぱり良性だって言って欲しかったです。でも、納得するしかないですよね。納得するまでには時間もかかりましたが、仕方がないけど、治療するしかない、治さないといけない、進むしかないと。

 だた、さすがに抗がん剤の点滴を開始する時には、立ち止まりました。本当に胎児に悪影響はないのか?大丈夫なのか?と不安で。再度、医師に確認せずにはいられませんでした。風邪薬だって妊娠中には飲んではいけないっていわれているのに、抗がん剤を点滴されちゃって本当に大丈夫なのかと、怖かったです。

 そのときだったか、医師から「親が助からないと子供も助からない」と言われ、最後の覚悟ができたように思います。

 ちなみに、聖路加病院に入院したのは手術のときだけで、抗がん剤は通院で受けました。妊娠の検査も同じ病院で受けていましたから、かなりの頻度で、自宅から1時間以上の病院に通っていました。正直たいへんでした。電車もいつも座れる訳ではありませんしね。ただ、通えない範囲ではないところに病院があったことは、ありがたいことです。

一緒に乳がんと闘った"お腹の子"は歌と踊りが大好きな女の子に成長
 出産は、ほぼ予定日に自然分娩でした。抗がん剤の投与を受けるということで、産婦人科の定期検診も聖路加病院で受け、出産も聖路加病院で行いました。聖路加の先生は、私の前にも乳がん治療を受けた妊婦さんの出産を経験している方だったので、安心感もありました。

 妊娠中の経過は、鉄分が少し足りないとか、ちょっと逆子になったりということはありましたけど、それって普通の妊娠でも起こりますから、異常ではないですよね。ただ、最後の頃に胎児の体重の増えが減り、羊水が少し少ないということで、医師からは家でできるだけ安静にしているようにと指示されていました。

 でも、上の子が、その頃は幼稚園に通っていたもので、送り迎えやお弁当の支度など、必要なことはやっていました。幼稚園の行事にも参加していましたね。ある意味、普通に生活していたのだと思います。

 実は、上の子には、私の病気のことを詳しく説明していなかったのですが、今回の取材をきっかけに話しました。「そうだったんだぁ」と聞いてくれました。夫や親のサポートはもちろんですが、上の子供にも守られていたと思っています。毎日、子供の面倒を見る必要があったからこそ、泣いている暇もなくて、メソメソせずに前向きになれたのだと思っています。

 今、(乳がん治療時に胎児であった)子供は2歳1カ月です。気が強くって、6歳上のお兄ちゃんを負かしちゃうぐらい元気です。歌も踊りも大好きでとても活発な子です。

 ちょっと体重が少ないため、保健所から何度か呼び出されたことはありました。治療の経緯もお話しして、「身長は平均値あるから大丈夫ね」ということで、今は、呼び出されることもなくなりました。

 子供がやせ気味な点は少し心配ではあります。ただ、身長は平均ぐらいあり、髪の毛もフサフサしているので、あまり小さく見られることがなくて助かっています。もしも、よその方に、「あら、小さいわね」なんて言われたり、何か健康に問題があったりしたら、『私のせいだ』と思ってしまうかもしれませんから。

 もちろん妊娠中に乳がんの治療を受けるというのは大変で、周りの大きなサポートも必要です。ただ、妊娠中に乳がんが見つかっても、出産できている先例があるということを、同じ境遇の方や医療者に知ってもらいたいですね。無事に出産し、私自身も、子供も両方元気でいるということを、励みにしてもらえたらありがたいです。

 また、良性という断言を受けていらっしゃる方には、できることなら生検を受けてしっかり確定診断してもらうことをお勧めしたいです。私の乳がんは、何人もの医師が良性と断言したものでしたが、結局、悪性でした。そんな先例もあることも知って欲しいです。(まとめ:小板橋 律子)

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