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レポート

2008/6/3

未承認薬は使いやすくなるのか?

高度医療評価会議の初会合が開催される

 今年4月から新設された高度医療評価制度。この制度は、薬事法の承認を得ていない医薬品や医療機器でも、一定の要件を満たした場合に保険診療との併用を認めるものだ。この制度により、未承認薬や適応外の医薬品は使いやすくなるのだろうか。5月28日に高度医療評価会議の初会合が開催され、高度医療評価の内容と、今後の運営方法が確認された。

 高度医療評価会議の初会合では、まず、会議の座長に慶應義塾大学名誉教授の猿田享男氏が、座長代理に癌研究会有明病院外科部長の山口俊晴氏が選出された。

 続けて事務局を務めている厚生労働省医政局研究開発振興課から、高度医療評価制度の内容確認や、運営方法などの説明が行われた。厚労省によると、「高度医療」は、「先進医療制度」の一類型と位置づけるという。既に薬事法の承認や何らかの適応がある医薬品や医療機器を対象とする場合は従来通り「先進医療」、これまでに何の承認や適応を得ていないものを対象とする場合には4月以降は「高度医療」の枠内で、保険診療との併用を認める。

 先進医療は、一定の条件を満たした医療機関であれば届出を行ったうえで実施できる届出制を取っている。その一方で、高度医療は臨床研究として個別に同会議の認可を取得しなければならない認可制だ。厚労省研究開発振興課長の新木一弘氏は、「同会議での審議は、申請を受けてからできれば3カ月程度で終わらせていただきたい」と委員に要請していた。

 今回の会議で申請技術として紹介されたのは、東京医科大学病院からのロボット支援手術、岩手医科大学附属病院からの腹腔鏡補助下肝切除術の2件であった。また、今会議では紹介されなかったものの、早期乳がんを対象としたセンチネルリンパ節生検(関連記事)も、日本乳癌学会が高度医療への申請を行うことが明らかになっている。学会が代表して申請を行うことで、各医療機関は、厚労省との事前相談を個別に行う必要がなくなり、申請書類の作成にかかる負担も軽減されている。

 座長代理となった山口氏は、「海外でたくさんのエビデンスが出されているにも関わらず、未承認のために利用できない医薬品や医療機器を国内で使えるようにするのが、この会議の存在意義」と同会議の目指すべき方向を明確に語った。

 ただし、高度医療として認められるためには、まず、各医療機関において臨床研究計画を作成し、機関内の倫理審査委員会で認められたうえで、高度医療評価会議でも承認を得なければならない。そのため、承認を得るまでには半年以上の期間が必要になるだろう。

 患者側からすると、高度医療として認められていない場合には、医師に要望して申請を出してもらったうえで、審査期間を待たなくてはならない。

 「未承認薬を利用したいという個々の患者の要望に応えるため、膨大な書類の作成に耐えられる医師はまずいないだろう。また、数カ月に及ぶ審査期間を許容できる患者もいないのでは?」。東京大学医科学研究所の探索医療ヒューマンネットワークシステム部門准教授の上昌広氏は同制度の運営方法に批判的だ。

 高度医療制度は、未承認薬や適応外の薬剤による診療と保険診療の併用を認めるものだ。そのため、未承認薬を必要とする患者にも有益な制度となることが期待された。しかし、今回の会合で呈示された運営方法からは、個々の患者ニーズをくみ上げようとする姿勢は示されなかった。

 今回示された運営方法の下、高度医療制度をうまく活用するためには、患者側も策を練らなければならないのだ。例えば、関連学会に要望を提出し、学会を介してできるだけ多くの医療機関が参加した形で申請を出してもらうというのはどうだろうか。センチネルリンパ節生検のような先例もある。

 今、患者側が意見を集結させ動かなければ、高度医療制度の運営は、未承認薬を必要とする患者を蚊帳の外に置いたまま進んでしまうだろう。(小板橋 律子)

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