このページの本文へ

がんナビ

がんナビについて

がん患者さんとその家族のために、がんの治療や患者さんの日々の生活をナビゲートします。

がん種から情報を探す

  • 乳がん
  • 肝がん
  • 大腸がん
  • 腎がん
  • 胃がん
  • 肺がん
  • 食道がん
  • 前立腺がん
  • 子宮頸がん
  • 膵がん
  • 卵巣がん
  • その他のがん

Report レポート

レポート一覧へ

新着一覧へ

レポート

2008/5/27

がんの見落としを減らせ!

子宮頸がん検診の大改革が進展中

 国内で行われている子宮頸がん検診の感度は60%から最高でも80%程度といわれている。すなわち、検診受診者の2割から4割は、検診を受けていてもがんが見逃される危険性があるのだ。実際、推奨される間隔で子宮頸がん検診を受けていたにも関わらず、進行した状態でがんが発見されることがある。日本の子宮頸がん検診がどのような問題点を抱えているのか、また、その問題解決のための新しい動きをレポートしたい。

 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が持続することで発症する。子宮頸がんの進行は一般的に遅いため、がん検診で早期発見できれば子宮を温存した治療も選択可能だ。そのため、子宮頸がん検診が広く推奨されている。

 しかし、毎年必ず子宮頸がん検診を受けていたにも関わらず、発見されたときにはがんが進行していた――という話は決して珍しくない。これは一体どうしてなのだろうか。

第1の問題点はサンプリングの方法
 検診の感度が6割から8割と幅があるのは、検診を行う医療機関に技術の差があるためだ。

 そのなかで改善しうる点として、「検診におけるサンプリングのやり方」を指摘するのは、子宮頸がん検診に詳しい自治医科大学附属さいたま医療センター婦人科准教授の今野良氏だ。

 子宮頸がん検診として普及しているのは、がんが発生する場所である子宮頸部を専用のブラシやヘラなどで擦り、採取した細胞の状態を観察する細胞診だ。しかし、「なかには、専用のブラシやヘラを用いずに、いわゆる“綿棒”を用いて細胞を採取している医療機関が少なくない」と、今野氏。

 「専用のブラシやヘラを用いない場合、検査を正確に行ううえで必要な数の細胞(標本)を採取できない、サンプリングエラーが生じやすくなる」と、今野氏は危惧する。

 今野氏は、「専用のブラシやヘラの値段は10円ぐらい。綿棒は1円程度なのでコスト削減を考えて綿棒を利用している医師もいるでしょう。また、ブラシやヘラを用いると検査後に出血する場合も少なくありません。被験者が出血を嫌がって、その後、検診を受けなくなることを危惧して、綿棒をあえて利用している医師もいる」とその背景を語る。

第2の問題点は不適切標本の取り扱い
 サンプリングエラーがあっても、エラーに対するチェック機能が働いていれば問題ないはずだ。しかし、現行の子宮頸がん検診システムには、エラーのチェック機能が弱い。ここに第2の問題点がある。

 医療機関で採取した子宮頸部の検体は、通常、検査会社に送られて異常の有無の判定を受ける。「検査会社は立場が弱く医師から悪く言われることを恐れている。そのため、不適切標本の場合でも何らかの判定をしなくてはならない状況にある」というのは、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授の青木大輔氏だ。

 本来、サンプリングエラーが生じている標本であれば、再度、標本を取り直す、すなわち検査をやり直す必要があるだろう。しかし、子宮頸がん検診では、不適切標本でも何らかの判定が無理矢理出されているのだ。

細胞診の方法を大々的に改定
 このような現状に対して、専門家はただ手をこまねいている訳ではない。実は、子宮頸がん健診の精度向上のための大きな改革が進行中だ。

 1つは、現行の細胞診の判定基準を大々的に改定するというもの。

 日本産婦人科医会がん対策委員会は、昨年10月、現行の細胞診の判定基準である「日母分類」を大々的に改定し、「新日母分類」とすることを決定した。改定により、これまで利用されていた細胞診のクラス分類(I、II、IIIa、IIIb、IV、Vの分類)を廃止し、国際的に広く利用されている「ベセスダシステム2001改定版」の判定基準を導入することになった。

 ベセスダシステムでは、標本の適・不適の判定基準を明確に定めている。そのため、サンプリングエラーが生じているにも関わらずなんらかの判定結果が出されている、従来のやり方は通用しなくなる。「立場の弱い検査会社でも、『ベセスダシステムに従って細胞数が足りないため判定不能です』という回答を出しやすくなり、不適正標本の減少につながることが期待される」(青木氏)のだ。

 また、新日母分類では、これまでのクラス分類が廃止され、記述式の判定が行われることになった。記述式の判定では、より詳細に細胞の状態が医師に告げられる。そのため、医師も結果に合わせて適切なフォローアップがしやすくなっている。

 「日母分類は改定されたばかりであるため、これまでの日母分類を利用している医療機関も、今のところは存在するだろう。しかし今後数年で、ほとんどの医療機関が新日母分類に移行するはず」と、日本産婦人科医会がん対策委員会の日母分類改定ワーキンググループ長を務めた癌研有明病院細胞診断部部長の平井康夫氏はいう。

 一方、厚生労働省は昨年6月に、地方自治体が主体で行う子宮頸がん検診において、これまで利用されていたクラス分類に加えて、ベセスダシステムの利用を認める方針を示し、地方自治体に通知している。この通知では、クラス分類を利用した場合にも、ベセスダシステムの判定基準に従って、標本の適・不適を明記することも指導している。

 今後、新日母分類が国内に広く普及することで、子宮頸がん検診の精度が向上することが期待される。

全く新しい手法の導入検討も進む
 細胞診の判定基準の改定により、サンプリングエラーがなくなれば、細胞診の感度は一律に上がり、8割程度に向上すると期待される。

 しかし、細胞検査士が顕微鏡を覗いて判別を行っている既存の細胞診では、ヒューマンエラーによる見落としの危険性が残っている。そのため、コンピューターを用いた画像解析装置を併用し、熟練した細胞検査士にさえも存在する見落としを改善させようという試みが進んでいる。コンピューター画像解析装置の併用は欧米では既に実用化され、細胞診の検出率の向上に貢献しているという。

 加えて、細胞診にHPV検査を併用することで、検診の精度を向上させようという検討も進んでいる。既に海外では、細胞診とHPV検査を併用することで、子宮頸がんの検診精度が高まるという研究が報告されており、HPV検査は子宮頸がん検診に導入され始めている。

 実際、日本においても、今野氏らのグループにより、細胞診にHPV検査を併用することで病変検出感度が非常に高まる、すなわち、見落としリスクがゼロに近づくことが示されている。

 これらのデータを受け、人間ドックとしては癌研有明病院が、地域の検診事業としては島根県が、細胞診とHPV検査を併用した子宮頸がん検診を既に開始している。今後、同様な試みが全国的に広まることを期待したい。(小板橋 律子)

子宮頸がんとは
 子宮の入り口(頸部)に発生するがん(子宮頸がん)をいう。子宮がんには、子宮頸がんと、子宮そのものに発生するがん(子宮体がん)の2種類があり、がん検診などで子宮がんと呼ばれるのは子宮頸がんだ。

この記事を友達に伝える印刷用ページ