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2008/5/7

治療の影響で免疫力が低下しても

こんなに食べてもいい食品がある

 造血幹細胞移植や抗がん剤治療中には免疫力が非常に低下する。そのため、食中毒を予防する観点から、特に小児では食事制限が課せられている。しかし、食べて良いものとダメなものの区別は難しく、医療者と患者・家族間のトラブルにもつながりかねない。治療中、患者の免疫状態に合わせて、食中毒を起こさない食事内容を区別するという新しい試みが進行中だ。その内容は、治療中の患者への差し入れを選ぶ際の参考にもなりそうだ。


広島大学病院小児科の三木瑞香氏
広島大学病院小児科の三木瑞香氏

 「新しい制度を導入するまでは、病院で出す無菌食はとにかく安全性しか考慮していませんでした。そのため、患者さんの家族から、『病院で出される無菌食は不味くて食べられたものではない』と批判されました。また、『差し入れしようとする食品については、あれもダメ、これもダメといわれて、何を食べさせればいいのか分からない』という苦情も多く受け、トラブルも多かったのが実情です」と振り返るのは、広島大学病院小児科の三木瑞香氏。

 食品制限に関しては、国内では唯一、造血幹細胞移植学会の「造血細胞移植ガイドライン」が食事に関する記述を載せている。しかし、続々と登場する新製品にまで対応できるようになっていない。そのため、免疫低下時の食事の指導基準は、病院や医師によって差があるのが現状だ。食中毒を過度に恐れるあまり、食品の制限を非常に厳しくする医師もいるという。

 この問題点を解決するため、三木氏らは、分かりやすい食事管理基準を作成した。また、患者家族用のパンフレットも作成し、治療中の患者へ食品を差し入れする際のポイントを詳細に解説している。

 三木氏らが開発した食事管理基準は、免疫力の状態で患者を、<赤>、<黄>、<青>、<白>の4つに分類するというもの(下の表参照)。患者の分類は、好中球数や治療内容から、医師が決めることになっている。信号標識のようで子供でも覚えやすいことから、赤・黄・青と色で分類したという。

免疫力が低下したときの食事管理基準

 そして、それぞれの色ごとに、食べられる食品を分類した。食べられる食品の分類には、食品の殺菌レベル、保存方法を考慮している。また、この基準には、子供が大好きな菓子類の記載もあり、実用的だ。

 <赤>と分類されるのは、造血幹細胞移植直後など好中球100以下と免疫力がほとんどない場合や、重度の下痢や粘膜障害がある時期の患者だ。「この時期は、免疫力はほとんどない状態です。そのため、完全に菌を殺菌した無菌食が必要になります」と三木氏。しかも、この時期は、強力な治療を受けているため、患者自身の食欲がほとんどない。「この時期の食事は、少しでも楽しい時間を持つことが最大の目的。そのため、病院食は絵入りのメニュー表から患者さん自身に食べたいものを選択してもらうことにしています」と広島大学病院の現状を解説する。

 <赤>の段階で食べられる食品は、『加熱殺菌』『気密性容器に密封』『高圧加熱殺菌』『レトルトパウチ食品』の記載のある食品だ。また、缶詰、瓶詰、ブリックパックも完全無菌になっているため問題ない。買い物時に食品の解説文書を確認すれば、これらの記載があるかどうか、すなわち完全無菌食か否かはすぐに分かる。差し入れする食品を選ぶ際に、大いに参考になりそうだ。

 <黄>は、<赤>よりも免疫力は回復しているが、化学療法の影響などで好中球が500以下の状態だ。小児がん患者では、この段階が4〜5カ月程度続くことが一般的という。この時期に食べられる食品の識別法は、「常温で3カ月保存できるもの」と三木氏。「賞味期限を確認して購入して欲しい」という。

 また、フリーズドライ食品やカップ麺、具・中身のないパンや、チョコレートやクッキー、ケーキ、スナック菓子、密閉容器に入っているアイス、長期保存・常温保存可能な牛乳などもこの段階では問題なく摂取可能だ。

 ただし、「ナッツ類が入っている菓子類は、十分に加熱されていない可能性があるため、<青>になるまで待って欲しい」と三木氏。また、材料に生クリームや蜂蜜が入っている菓子・ケーキは<白>の段階、すなわち退院して常食可となるまでは控える必要がある。また、カップ麺を食べる際には、十分に沸騰したお湯を使う必要がある。ぬるま湯は雑菌で汚染されることがあるからだ。

 <青>は、好中球は500以上と免疫力もかなり回復した段階だ。ただし、治療中ということもあり、完全な普通食とはならない。治療中の外泊時、白血病の維持療法中の退院もこの段階に当てはまる。

 この段階では、ゼリーやプリン、ヨーグルト、個包装のマヨネーズ、ファーストフードやコンビニ弁当、干物、漬け物、サラミなどの燻製も問題がない。ただし、生の肉や魚、卵、納豆、蜂蜜などのシロップは食中毒の危険があるため、控える必要がある。カビを含まないチーズ(プロセスチーズなど)もこの段階で食べてよいとされている。

 「この段階の患者さんには、生の食品は控えるよう指示しているのですが、一時的な退院のお祝いということで、お寿司を食べて帰ってくる子供も少なくありません」と三木氏は苦笑する。「何事もなければよいのですが、なかには食中毒を起こしてしまう患者さんもいますので、注意していただければ」と語る。

 <赤>、<黄>、<青>とも、それぞれの条件に該当した場合でも注意点がある。それは、開封後2時間以内に食べること。それ以上時間が経つと、食品のなかに雑菌が繁殖してくる可能性があるためだ。

 そして<白>は、治療が終了し、普通の食事を食べてもよい段階。賞味期限切れや保存状態の悪い食品には注意して欲しいという。

 「この基準を導入するまでは、製品ごとに医師に食べさせてもよいかどうかの問い合わせがありました。答える医師もたいへんでしたし、患者さんのご家族も面倒だったと思います。この基準を元に、食品の表示を自分で確かめれば、医師に断らなくても食べさせられるため、医療者も患者・家族もストレスが減ったと思います」(三木氏)。同様の試みが全国に広がることを期待したい。

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